016 ボクと人化の魔導2
休憩を終えて歩くこと3時間弱。
森を抜けたところで壁に囲まれた町が見えてきた。
「エレナさん、町ってどこも壁に囲まれてるんですか?」
「そうよ?モンスターや魔獣を防ぐ為でもあるし、出入口を制限することで人の出入りを確認できるからね。」
なるほど。
ここで戦争が例えに出ないってことは少なくともエレナさんが生きている間には戦争がなかったか、あっても小規模で終わったんだろう。
町は基準が無いのでよく分からないけど、結構大きいみたい。
出入口の門には衛兵も立っている。
通過待ちの列に並び順番を待つ。
馬車や大きな荷物を持った行商人のような人、冒険者と思われる数人組の人達。
物珍しくてキョロキョロしながら並んでいると、ボク達の番になる。
「はい、ギルドカード。
こっちの子はまだ作ってないから持ってないのよ。」
「それではこちらに手を置いて魔力を通して下さい。」
1枚のB4サイズくらいの石版のようなものを示される。
手を置いて言われた通り魔力を通すと、角に配置された石が青く光る。
「はい。結構です。
ではお通り下さい。」
特に問題もなく通れたけど、今ので何がわかるんだろ?
「今のはね、どこかの町で悪さしてないか調べるのよ。
町には世界の目と呼ばれる共通の術式結界が張られていて、ちゃんと門を通らずに出入りするとそれがわかるようになってるの。」
でもそれじゃ門を通らずに入って同じように出ればわからない気がする。
思っても言わないけどね。
「それじゃあ、さっきみたいなカードが無くても入れるんじゃないですか?」
「そうね。入ることは出来るけど、出る時にお金がかかるのよ。」
入場料ではなく退場料が必要らしいです。
「まぁ作っちゃうから必要ないんだけどね。」
こんな子供みたいな見た目で作らるんだろうか?
考えても仕方ないのでエレナさんに任せよう。
町は前世でプレイしたRPGのようなファンタジーその物だった。
木造で高くても三階建て、大きな建物は横に長く、地震なんか来たら一瞬でペタンコになりそうだった。
門から入ってすぐ脇にある大きめの建物がギルドらしい。
カードを作るために入る。
1人だったらテンプレな展開必至だろう。
「この子の登録をしたいんだけど。」
受付にまっすぐ向い座っていた職員に話しかける。
言われてボクを見た職員さんは一瞬驚いた顔をしたけど、何も言わず、
「では、こちらに必要事項の記入をお願いします。
その後魔力掌紋を登録します。」
「ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げる。
顔を上げると職員さんはボクを凝視していた。
何だろう、と思い首を傾げるとすごい勢いで目をそらした。
謎だ。
記入内容は
名前、年齢、パーティー構成時に参考にするスタイル、魔力掌紋で記載される適正属性、らしい。
他にも使用武器なんかもあるけど、ボクは武器を持っていないので素手と書く。
記入が終わり魔力掌紋を登録する。
「では、こちらの水晶に手を置いて魔力をと押してください。」
ちょっと顔が赤い職員さんに促され魔力を通すと、エレナさんの所で魔力適性を調べた時みたいな緑の輪っかと四つの光が浮かび上がる。
「四属性!?」
驚き声を上げる職員さん。
今まで後ろで特に興味も無さそうだった他の冒険者みたいな人のうち数人の耳に入ったようだ。
「四属性?故障してんじゃねえの?」
「マジかよ、どっちも女みたいだしうちのパーティーに来ねえ?」
「獣人だろ?適性があっても魔術なんて使えねぇって。」
などなど。
勉強して知ってたけど、獣人は適性があっても魔術は苦手な種族らしい。
体内で肉体強化には運用できるけど、魔術として別の形には出来ないらしい。
まぁそんなの関係ないんだけどね。
だって獣人じゃないし。
「では、こちらがカードになります。
等級は通常登録になるので十級からになります。」
出来上がったカードを見る。
名前 リリィ
二つ名 無し
種族 獣人
性別 女
職業 魔術師
主属性 風
副属性 水、闇、空間
使用武器 無し
ランク 十級
カードは名刺より少し大きいくらいで、全体は緑がかった金属っぽい材質だ。
「紛失の場合手数料がかかりますが、魔力掌紋が一致すれば再発行できます。
更新は随時申し出ていただければいつでも可能です。」
カードを見つめながら頷く。
「不明な点などはそちらのエレナさんから伺ってください。」
「はい。ありがとうございます」
ペコリと改めてお礼を頭を下げる。
「それじゃあ、お買い物行きましょうか。」
「はい、エレナさん」
手を引かれてギルドを後にする。
テンプレなイベントは発生しませんでした。
次回、エレナさんが暴走する…かも?
本編に関係ない人の視点を本編で書くか、シリーズの短編として書くか、悩みますよね_:( _ ́ω`):_
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