015 ボクと人化の魔導具1
人の姿になったはいいものの、エレナさんが持っている服ではサイズが合わなかったが、いつまでも裸で居るわけにもいかないので、ブカブカの服を借りる。
人化したボクは身長が130cm位、髪は毛並みと同じ薄く緑が混じった銀髪、顔は目つきがちょっと鋭いものの、女の子らしい猫顔だった。
「エレナさん、改めて助けてくれてありがとうございます。」
「私こそ、リリィが来てから何だかんだ楽しいからいいのよ。
でも、服はちょっと問題ね。明日にでも買いに行きましょう。」
「お世話になりっぱなしですいません」
「その代わり服は私に選ばせてね?」
嫌な予感しかしないけど、断れる立場じゃないよね…これ。
「…お任せします」
「大丈夫よ。そんなに変なのは選ばないから。
それにしても、いない間にかなり勉強してたみたいね。
知識ゼロから始めて魔術式を自分で考えるなんて、普通なら学園に通ってもなかなか出来ないのよ?
それに、猫が人の言葉を喋る、なんてイメージ出来るものじゃない。
リリィ、貴女本当に猫なの?」
どうしよう、ここで素直に前世の記憶がある事を言うべきか、適当に誤魔化すべきか…。
助けてくれた恩人に嘘はつきたくない。
だけど信じてもらえるような内容でもない。
思案していると、
「今はいいわ。今のは忘れて。
言いたくなったらその時に教えてね?」
「すいません…。
どう説明すればいいのかボクにもよく分からなくて。
ただエレナさんにお礼が言いたい一心だったんです。」
「それじゃあ、今日はもう遅いし寝ましょうか。」
「はい。
それで、エレナさんこれってどうやって元に戻るんですか?」
「え?外せば戻れるけど戻らなくてもいいんじゃないかな。
猫の姿だと色々不便でしょ?」
確かにそうなんだけど、問題はこの小さな家にベッドが一つしかないことなんです。
何度も言いますが、中身は思春期の男子高校生なんです。
綺麗な女性と一つのベッドなんて難易度が高すぎですよ!
「ちょっと狭いかもしれないけど、リリィは小さいから一緒に寝ても大丈夫よ?」
どうやら逃げ道はないようです。
猫の姿の時も確かに一緒に寝てましたけど…。
「それじゃあ、もう限界だから寝ましょう」
エレナさんは眠気が限界のようなので素直に従う。
ベッドに入ると当たり前のようにエレナさんが抱きついてくる。
「ちょ…エレナさん?」
「リリィ暖かい。
それじゃあ、おやすみ。」
のび太くんも真っ青なくらいの速さでエレナさんは寝息をたてる。
後ろから抱きつくような形で寝ているから、背中に柔らかいものが…。
気になって眠れそうになかったけど、動けば起こしてしまいそうなので大人しく抱き枕になる。
時々頭の上の猫耳にエレナさんの吐息がかかってくすぐったかったけど、暖かいエレナさんに包まれていつの間にか寝ていた。
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朝起きてからご飯を食べ、買い物のために町に向かって家を出る。
「今日は町で一泊してから帰りましょう。」
「1日で往復できる距離じゃないんですか?」
「私1人なら往復出来るけどね」
ボクに合わせると往復出来ないようだ。
お世話になりっぱなしなのに申しわけなくなった。
「それに町のご飯も食べてみたいでしょ?」
「エレナさんのご飯美味しいですよ」
手を繋いで歩くエレナさんの顔を見ると、楽しそうに微笑んでいる。
ふと耳に獣の足音が聞こえた。
「エレナさん、なにか来ます…」
狼に襲われた時の恐怖を思い出し、エレナさんの手を強く握る。
「あぁ、ウルフね。
大丈夫よ。」
何が大丈夫なのかは分からなかったけど、突然足音が消えた。
不思議に思って見回すと、ボクとエレナさんを中心に魔力が広がっているのが見えた。
「エレナさん、コレって」
「やっぱり見えるのね。
今使ってるのは私の魔術結界よ。
範囲内に入れば補足も簡単に出来るし対処もすぐ出来るのよ。」
「結界って入るのを防いだり、ではないんですね。」
「そう言うのもあるけど、それだと維持するのは無駄に魔力使うからね」
ふむ。同じ結界でも色々あるらしい。
それにしても、町まで遠い…。
朝早くに家を出てもうすぐお昼を過ぎるくらいだろう。
グゥ~…。
ボクのお腹が鳴る。
「あら、お腹減った?
そろそろお昼だし、ちょっと休憩しましょうか。」
恥ずかしくて俯きながら頷く。
適当に気の幹に腰を下ろし、エレナさんが持ってきていたサンドイッチを食べる。
手ぶらで家を出たのにどこに持っていたのかと思ったら、家で見たアイテムバックっぽいポーチから取り出していた。
「今で大体3分の2くらいね。
この調子なら暗くなる前には余裕で着くわね。」
思ったより進んでたみたいです。
こっちの世界でエレナさん以外の人を初めて見ることになる。
ちょっとだけワクワクしてるボクがいた。
初めてのお出かけ。
エレナさんは身長が170位で長身です。
次回は初めてのお買い物です。
書けたらまた投稿します。
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