013 猫と私3(エレナ視点)
さて、普段なら庭の菜園と森で捕ってきた獲物で食事にするところだけど、怪我をした猫のために久しぶりの町に買い物だ。
魔術式を編み込んだ魔術衣に腰に杖を差すためのベルト、久しぶりに使う財布を持って家を出る。
森に慣れない者なら町まで半日近くかかるけど、森に慣れた上に移動用の魔術を使えば四刻(4時間)もあれば往復できる。
でも、猫って何食べるんだろう?
町ではあんまり人と関わりたくないけど、猫のためなら仕方ない。
傍目には分からないが、自分用に整えた道を速度上昇の魔術を使い移動する。
ふと今日目覚めた猫のことを思い出す。
不思議な目をしていた。
落ち着かせるため、とは言え、話しかけた自分の言葉を理解したようにも感じたが、気のせいだろうか?
まぁ猫が人の言葉を理解するなんて無いだろうから、声のトーンとかそんなので本能的に理解したんだろうと自分を納得させる。
道中、ウルフが追いかけてこようとしていたが、狼如きに追いつかれるようなスピードでは走っていないので問題ない。
町についたらとりあえずギルド辺りで猫が何を食べるか聞こう。
必要以上に絡んでくる輩が居れば蹴散らしてしまえばいい。
「そうだ、あの子の名前考えなきゃ…」
特に深い意味は無いけど、いつまでも名前が無いのはかわいそうだろうと思った。
あれこれと候補を考えていたら町が見えてきた。
町の入口に立っている衛兵にギルドカードを見せ、中に入る。
ギルドは基本的にメインの通りにあり、街の入口近くに構えていることが多い。
ここも例に漏れず、街の入口近くにある。
ギィギィ音を立てて開く扉をくぐれば見覚えのある男が数人。
職に溢れた者や荒くれ者の集まりが昼間から酒を飲んでいる。
入った瞬間数人が気づくが、私だと分かるとサッと目をそらす。
カウンターに向かい事務員に声を掛ける。
「ねぇ、ちょっとお聞きしたいんだけど、猫ってなに食べるか知らない?」
受付カウンターにいた職員がほうけた顔でこちらを見る。
「ねこ…ですか?」
「えぇ、ちょっと猫を拾ったんだけど、怪我をしてて、少し良くなったからご飯を、と思ったんだけど何食べるのか知らないのよ」
「多分基本的には何でも食べますよ、って言うかエレナさん森に住んでますよね?
どこで拾ったんですか?」
「あら、何でも食べるの?
それにしても、どこで拾うって森に決まってるじゃない。
町に出てきたのは久しぶりなのよ?」
「え…?あの森に猫ですか?
よく生きてましたね」
「そうなのよね。
ちょっと変わった猫ではあるけど」
「虎とかじゃないですよね?」
「貴女ね…いくら森だからって虎が怪我してても拾わないわよ?」
「そうですよね。アハハ…」
誤魔化すように笑っているが全くごまかせていない。
「まぁいいわ。ありがとうね。」
お礼を言ってからギルドを出る。
今日は面倒な奴らが居なくて助かった。
まぁ町中で会う可能性は残っているけど。
取り敢えず適当に買い物に行こうとしたらギルドの扉が開く。
「すいません!
言い忘れてましたけど、猫に人間の味付けはダメですよ!
薄めにしてあげてください!」
さっきの受付の職員が慌てた様子で教えてくれる。
「わざわざありがとう。」
何でもいいけど薄味、か。
鳥のお肉とか食べれるのかな?
取り敢えず市場に向かおう。
リリィが寝てる間と起きてからの買い物風景、名前が決まるまでのエレナさん視点がまだまだ続きます。
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