012 猫と私2(エレナ視点)
昨日猫を保護してから薬草を調合し、応急処置は施したものの、傷が深い。
かなり出血していたようで、体力もかなり落ちている。
悠長に構えていては手遅れになるとだろう。
私は覚悟を決めて、回復魔術を使うことにした。
回復魔術は通常、回復する側が発動の魔力を請け負うものの、傷の修復自体には対象が魔力支払う。
魂の記憶を元に魔力を消費して損傷した肉体を修復する。
魔力量が多ければ問題なく回復するが、修復した結果、生命の維持に必要な魔力を下回れば当然命を落とす。
猫でも多少なりとも魔力はあるはずだ。
傷を塞ぎ、これ以上体力が低下しない程度までなら何とかなるかもしれない。
「癒しの光」
光属性の回復魔術を唱え、最低限の応急処置を行う。
良かった。この位の回復魔術になら耐えられるくらいの魔力はあったようた。
先程まで虫の息も当然だった弱々しい呼吸は、苦しそうではあるものの命の危機とまではいかない程度に回復したようだ。
これからは薬草を調合したものと回復魔術を合わせて治療をすれば2、3日で目を覚ますだろう。
しかし、世捨て人のような生活をしていた自分が猫1匹助けるためにこれ程必死になったのは自分のことながら意外だった。
「償いのつもりなのかしらね…」
誰に聞こえることもない自嘲気味の呟きは夜の闇に飲まれて消えた。
それから3日後、かなり傷の癒えた猫が目を覚ました。
傷の手当の合間にこの子が雌である事は確認していた。
まぁ、確認したからと言ってどうということはないけど。
「あら?目が覚めた?」
うっすらと開いた瞳は銀色の毛並みとは対照的な黄金色だった。
綺麗な色。
と、見つめていたら猫が慌てて起き上がろうとした。
「怪我してるんだから無理しちゃダメよ!?なんて言っても言葉は分からないか…」
思わず声をかけたものの、通じるはずがないのに、とため息をつく。
それでも何故か声をかけずにはいられなかった。
「落ち着いて、ここにはあなたを傷付けるような相手はいないわよ?」
一先ず治りきっていない傷に回復魔術を施す。
「癒しの光」
落ち着いた様子の猫を撫でながら話しかける。
「あなた、狼に襲われていたのよ?
怪我も酷いし、治るまで安静にしててね?」
落ち着いたらしい猫を撫でる。
危険が無いと分かって安心したのか、また眠ってしまった。
「可愛い寝顔。
本当に不思議な子ね。」
知らずにつぶやきが漏れていた。
一先ず、この子の怪我が治るまでは私が守ってあげる。
心の中で告げて久しぶりに近くの町にでも買い物に出かけようと準備をする。
思ったより早く書けたので投稿します。
次の更新は間に合えば今日中に投稿します(`・ω・´)キリッ
引き続きエレナさん視点になります。
ブックマーク下さった方々、ありがとうございます。
感想、ご意見などあれば是非ともお願いしますm(*_ _)m