010 ボクと魔術5
エレナさんは取り出したチョーカーを僕の首に巻き付ける。
黒いベルトに銀色の金具。
正面に位置する部分には少し大きめのチャームがゆらゆらと揺れていた。
「それじゃあリリィ、そのチョーカーに魔力を通してみて。」
待ちきれない、と言いたげな眼差しのエレナさんに気圧されつつ、チョーカーに魔力を通す。
一度魔力切れを起こしていたせいか、ゴッソリと魔力を吸い取られたような感覚があった。
でも今のボクにはそんな事がとても些細なことにしか思えなかった。
何故ならさっきまでボクの目線は背筋を伸ばしてもエレナさんの膝より少ししただったのに、今はエレナさんの胸辺りまで高くなっていた。
呆然と自分の手を目の前にやると、見慣れた人の手だ。
とは言っても前世に比べれば頼りなくほっそりとした華奢な指だった。
指先から目線を肘、腕を伝って肩まで来たところである事実に思い至る。
恐る恐る足元へ視線を動かすと
全 裸 だ っ た 。
「キャアアアアアアアアア!!」
思わず声を上げて蹲る。
動いた勢いでサラサラの髪の毛が顔にかかる。
毛並みと同じく薄く緑がかった銀色の髪。
テンパッていたボクはその時まだ気づいていなかった。
自分の口から出た悲鳴が猫のそれではなかったことに。
「やった!成功よ!
リリィ、やっぱりあなたは特別なのよ!」
「エレナさんそんな事より服!服を下さい!」
「リリィ、とってもカワイイ声!」
抱きついてきたエレナさんにそのまま押し倒される形で重なって倒れる。
「可愛い声!?ってボク人の言葉で喋ってる!?」
全裸の衝撃なんて吹っ飛んでしまった。
人の姿をして、人の言葉で喋ってる。
あれ?でもなんか腰の少し下あたりに違和感が…。
そっとのぞき込むと、そこには銀色の尻尾が所在無さげに揺れていた。
ハッとして頭に手をやると、髪の毛とは明らかに違う手触りがあった。
確かめるように全体を触ると、それは紛れもない猫耳だった。
お父さん、おかあさん。
あなた達の息子は十七歳にして猫耳の女の子になってしまいました。
ボクは現実を受け止められず呆然とエレナさんに抱き抱えられてなすがままになっていた。
次回更新はエレナさん視点になります。
1日最低でも1回の更新目指して頑張ります(震え声)
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