第七章『時間逆行』
へっへーい! 殆ど殴り書きだよーん!
~前回のあらすじ~
烏乃助は時定丸に負けて、神通力の力で時間が巻き戻り、最初っからやり直しとなりました。
て、ことで江戸編再開。
……
………
……………………
ここは……どこだろう?
何かが大きく揺れる音、何かの激しい振動、何かの動物の荒い息。
何処かで聞いて、何処がで体験したような――。
「――い、」
……?
「あんたら、そろそ――」
誰かの声が聞こえる。聞き覚えのあるような。ないような。
「おやおや、二人仲良く熟睡かい? こりゃ、江戸に着いてから起こしてやるか~」
………………………ハッ!?
「おぉ!? お、起こしてしまったかい!?」
「え、あ……」
うずめが目を覚ますと、そこは 馬車の荷台の中であった。
何処の馬車だ?
うずめが周囲を見渡すと、目の前には、何処がで見た街道と、江戸に来る前に知り合い、江戸まで送ってくれた商人の男性が馬車を引いていた。
「……烏乃助?」
「くー、くー」
烏乃助が、うずめの膝の上で寝息を立てて眠っている。
……あ、そっか、自分達は今江戸に向かってるんだった。
……………それでも、既視感。そう既視感だ。
何度も、こんな光景を見たような気がする。
何回かはもう覚えていない。けど、この後の展開はもう分かってしまっている。ような気がする。
――筈だった。
「おんやぁ? あんな所にお侍さんが居るで?」
「え?」
商人の発言が気になったうずめが、商人と同じ方向に視線を送った場所には――
「し、『白羽 時さ――」
「ひゃぁああああああ!?」
そう、何度もこの展開を見た筈なのに、いつもと展開が違う。
――あれ? そもそも、なんで私は、いつもと展開が違うと思ったんだろ?
江戸に来るのはこれが初めての筈なのに……。
そして、『白羽 時定丸』の姿を見るのも、これが初めての筈なのに、なんであの侍が時定丸だと思ったんだろ?
全てが初めての経験の筈なのに、
と、うずめは混乱しながらも、烏乃助に抱えられながら、いつの間にか宙に浮いていた。
「おい! 何呆けてやがる!」
「ハッ!?」
烏乃助の声で我に帰ったうずめが下の方を見ると、自分達がさっきまで乗っていた馬車が真っ二つにされているのが見える。
そのまま烏乃助が着地をしたと同時に、斬られた馬車の中から、時定丸が、その雪のように白い刀を構えながらこちらに突貫してきた。
「九!?」
「やぁ八、久し振りだね。いい加減答えは見えたかな?」
突然の奇襲。烏乃助は、うずめを少々乱暴に放り投げながら抜刀して、時定丸と鍔迫り合いの形となった。
「うわっ!?」
「ぐ、おぉ!!」
「……また抜刀したよ。八、いい加減に気付いてよ」
「何!?」
時定丸が、鍔迫り合いから烏乃助の刀を打ち落として、そこから烏乃助の額を柄頭で思いっきり殴った。
「『雀』ッ!!」
「ぶっ!?」
烏乃助が大きく後退する。
そのまま攻め込めば、一気に時定丸が烏乃助を押し込める筈なのに、時定丸はそうはせず、その場で冷めた視線で溜め息をついていた。
「……ねぇ八。なんで、刀を抜いてるの?」
「あぁ?」
「二年前の仕切り直しのつもり? だとしたら言わせて貰うよ……いつまで過去に囚われてるのさ? 」
「ッ!!」
速い!? 時定丸は、一瞬にして烏乃助の背後へと回り、そこから、必殺の奥義を放とうとしていた。
「第六羽の奥義――」
「『温雌鳥』ッ!!」
時定丸が奥義を放つよりも先に、烏乃助は半転して、時定丸の攻撃範囲から逃れつつ、時定丸の脇腹に突きを繰り出す。
「シッ!」
だが、奥義を中断した時定丸は、烏乃助の刀のシノギの部分に左の肘を上から打ち下ろして、烏乃助の突きの威力を殺し、そのまま流れるように、烏乃助の胸ぐらを掴んで、烏乃助を逃がさないようにした後に腹部を突き刺そうとする。
「アァッ!!」
それでも烏乃助は、その時定丸の胸ぐらを掴んでいる手首を掴んで、大きく体を回転して時定丸を振り回し、その勢いで崩れた時定丸を投げた。
「ッ! ………やるね」
投げられながらも、受け身を取って、即座に刀を構える時定丸の左手首は、烏乃助によって投げられながらも関節を外されていた。
「……でもダメだ。八、今の君は、明らかに昔より弱くなっている。何故か分かる?」
「……もう長い間人を斬っていないから――」
「じゃないよ?」
「…………なんだと?」
「ねぇ、うずめちゃんなら知ってるんじゃない? 八が何度も何度も僕に負けてる理由が」
「え?」
急に話を振られて戸惑ううずめ。
何度も何度も烏乃助が負けてる理由?
「………………………………………………………………………………………………うっ!?」
思い出してしまった。ここでやっと、うずめは霞がかっていた自身の記憶がやっと鮮明に明るみを帯びたのであった。
そうだ。烏乃助は負けてる。もう何度も何度も、同じ時間の中で烏乃助は負けている。
そして、負ける度に、時定丸は神通力『愛無』の力で持って、時間を巻き戻してるんだ!!
「………………」
「あ、やっと思い出してくれた? 良かった良かった」
「おい、何の話だ?」
「八、今の君に用は無いから黙っててよ」
「……偉そうな」
「ちょ、ちょっと待って!」
と、うずめは二人の間に割って入って、二人の対決を止めるのであった。何となくだが、このままでは烏乃助が死んじゃうと思ったからだ。
「うずめ!? 邪魔だ! 退け!」
「ダメ! このままだと烏乃助は負けちゃう!」
「何訳わかんない事を言ってんだ!!」
「ダメったらダメッ!!」
「退けッ!!」
「わっ!?」
突き飛ばされた。うずめは、烏乃助に突き飛ばされながら、烏乃助の最期を看取ってしまう|のであった。
「ご、ぶっ!?」
「…………君は、後何回死ねば己の愚かさに気付けるの?」
「う、烏乃助ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
■
夕刻、あれからどれだけの時が経っただろうか?
烏乃助は喉を突き刺されて死んでから、どれだけ経っただろうか?
たしか、自分達が江戸に来た時は、まだ昼間だったような気がする。
なのに、もう既に日が沈みかかっていた。
「……うずめちゃん。少しは落ち着いた?」
ずっと黙ってこちらを見ていた時定丸が、こちらに話し掛けてくる。
「……ねぇ、烏乃助は、貴方に何回負けたの?」
「……さぁ? さすがに覚える気にはなれないよ。この八が、まだ昔の『八』として僕に挑み続ける限り、僕が時間を巻き戻しても、何度も何度も同じ結果を招くだろう」
「………………烏乃助には、何が足りないの?」
「それを一番知ってるのは君の筈だけどなぁ……いいよ」
「?」
と、時定丸は、うずめの雪のような白い髪の頭に手を置くと、胸に『愛』の一文字を浮かべるのであった。
「何故、君との旅で『不殺』を貫いた八が、何故、僕と対峙した際に限って不殺を捨てて真剣を握るのか、その答えは僕達の過去にある。だからうずめちゃん」
「……………」
「君が八を『救って欲しい』」
「救……う?」
「そう、君にしか出来ない事だ。今から君を過去に飛ばす。それもかなりの昔、そこから八を救いだして欲しい」
――何を言ってるんだ?
「……なんで、貴方がそんな事を……」
と、時定丸は、胸の『愛』を指差して答えた。
「『愛無』。これはね、ある出来事を『無かったことにする』神通力なんだよ。だからうずめちゃん、君が八の『心的外傷』を無かったことにしてほしい。今から君を過去に送るから。全ての始まりへ――」
急な展開に戸惑いながらも、うずめは時定丸に疑問を抱くのであった。
神通力の力があるとは言え、烏乃助を何度も殺しておきながら、今時定丸は烏乃助を救おうとしている?
そもそも、何から救ってほしいと言ってるんだ?
「……どうして、そこまでするの?」
「……『家族』だから。じゃあ、よろしくね」
「ちょっ!?」
うずめの承諾も無しに、時定丸は、うずめを過去に強制的に送るのであった。
――奥義『愛然無聖』。
■
……………………………………………………………ん?
「……あれ? ここは? て、なんで私の体透けてるの?」
うずめが目を覚ますと、そこは江戸の城下町であった。しかも、何故かうずめだけが幽霊みたいに体が透けた状態で城下町の路上に立っていたのであった。
そして、人々が賑わいを見せる中から、編み笠を被った一人の侍が、とても薄汚い着物を着た小さな子供と手を繋いで歩いているのが視界に入った。
「……あ」
その侍は『高見魂』であった。一度尾張で見た、あの烏乃助と時定丸の育ての親。でも、少し若い気がする?
じゃあ、あの子供は誰なんだ? どこか見覚えがあるような……。
「くっくっくぅ、どうだ江戸は? 中々喧しくも面白そうな所だろ? 『八』」
「…………八?」
「……………………………………」
第八章『無垢な烏達』に続く。
【愛無】
所有者の『無くしたいもの』を『無かったもの』にしてくれる神通力。
例えば、怪我をしたら『怪我をしたことを無かったことにしてくれる』みたいな。
この力で時間を巻き戻したと言うより『烏乃助達が出羽から江戸までの時間を無かった事にした』だけである。つまり、巻き戻しは出来るけど、無くしたものを再び『有ったもの』にすることは出来ない少し不便な神通力。
こんな設定の神通力で、時定丸はどうやってうずめを過去に送ったかは、後で解説するので、今回はここまで、なんか急ぎ足で殴り書きした為、変な部分があると思うけど、気にするな!
ではでは、次回をお楽しみに~…………………………色々と設定がめんどくさくなってきたのは内緒。




