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こころあつめる(仮)~烏と不思議な少女の伝奇時代冒険譚~  作者: 葉月 心之助
第九話「こころあきらめる」
45/54

第四章『百鬼夜行の悪通り』

 うわ、もう六月の後半だよぉ。


 当初の予定だと今年の六月に第十一話をやる予定だったのに、二話分遅れるとかw


 マジすんませんm(__)m


 からのはじまり~はじまり~。

 土佐城・大広間。


「いやぁ、まさか来るとは思いませんでしたよ☆」


 イスパニア騎士団『カラトラス』団長のフェルナンドとその部下『マルティン』『エンリケ』の三人は、ついに宿敵『不知無 死刻』の前に立つ事が出来た。


「はは、ニニギさんから今この国がどんな危機に瀕しているのか聞いたはず、なのにまだ私の首を狙うか☆ それはなんだ? 自国の為か? 恨みか? 復讐か? それとも騎士の誇りか?」


「......ワタシも、ずっと考えていた。何故お前を追うのか、陛下の無念を晴らす事か? それとも、お前のせいで自国を追われた復讐心か? ......もう判らん」


「団長......」


「......」


「ではどうする? このまま引き返してニニギさんと共にこの国の危機に立ち向かうか? 私的にはそうなってくれた方がいい☆」


「なに?」


 そう言うと、死刻は懐から一振りの太刀を取り出した。


「天下五剣が一振り『童子切安綱』を元にした神器。私はこれで逢魔の落日の日に、神を捕獲しようと考えています☆」


「なんだと!?」


「「っ!?」」


「ええ、ええ、罰当たりも良いところでしょう。でもね、神々が扱えし技術、知識には目を見張るものがある。私はこの刀で神を捕獲し『捕食』して、その神の叡知を手にしたいのですよね☆」


 神を捕食。なんとも荒唐無稽な話、ではあるが、フェルナンドは死刻の『不死身の正体』を知っている以上、もしかしたら可能なのかもしれない。


 不知無 死刻が不死身な理由。それは、他者を捕食して、その他者が持つ生命を糧に自らの寿命を伸ばすと言うもの、しかもその際に捕食した相手が持つ知識、技術、記憶、それらを取り込んで我が物とすると言う、明らかに化け物じみた力である。


 元々は錬金術における不老不死の究極形だそうだが、何故そこまでして生き続けるのか? 何故知識だの技術などを追い求め続けるのか。それがどうしても理解出来ない。


「あはは☆ 分からないでしょぉ? 私が何故ここまでするのか? では特別に教えましょう☆ どうせ、誰一人生かして帰しませんし★」



 同時刻、陸奥。


 真魂山の麓の村。


「ふぬぅぅぅぅぅぅ!! いい加減にしてよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「嫌だぁぁぁぁぁ!!」


 うずめは何とか頑張って烏乃助を引っ張って麓の村まで到着した。


 が、村は大惨事になっていた。


『ひゃっほぉぉぉぉい!!』


『最高にいい気分だぜぇぇぇ!!』


 先程の極浄寺で見たような土くれ共が、なんか宴会みたいな事をして盛り上がっていた。


『酒! 酒くれよ酒!』


『うほぉ! えらいべっぴんさん発見!』


「いやぁ! 誰か助けてぇ!!」


 村の女性が土くれに襲われてる!


「烏乃助!」


「無理無理無理! 僕じゃなんも出来ないよぉ!!」


「......むかぁ」


「いだ!? いだい!? 分かったから蹴らないでぇ!」

 

 何とも目が当てられない、本来の烏乃助なら、こんないかにも脆そうな土くれ相手でも余裕の筈なのに、今烏乃助に取り憑いている死霊は、なんとも情けない。


「ぐはははは! お困りのようだな村娘さん! とぉ!!」


 と、烏乃助が土くれと戦う前に、近くの民家の屋根から一人の男性が飛び降りたと同時に、土くれの一体に飛び蹴りをお見舞いする。


『あぁ!? 誰だお前は!!』


 土くれ共が動揺する中、うずめはその男性を見てハッ! となる。


「え? 六道坊さん?」


 その男性は、真魂山の中腹にある極浄寺の住職『六道坊』その人であったが、


「ちっがぁぁぁぁぁぁう! 儂こそがこやつの百年前の先祖『輪廻坊(りんねぼう)』その人じゃぁ!!」


 あ、人違い、いや、魂違いであった。普段温厚な六道坊に比べたら、何とも荒々しい人物だ。


『よぉよぉ坊さんよぉ? あんたも死者なら分かるよな?』


『今俺達はこうして再び体を手に出来たんだぜ? それなのに、生きてる連中の側に付くってのか?』


「知らん! 儂は生者の味方ではなく、美人の味方じゃ!」


「えぇ......」


 不純だ、坊さんの癖に不純だ。とても温厚で誠実な六道坊のご先祖とは思えない。


「しゃあ! 儂の拳法を喰らえぃ!」


『ぐぇ!?』


『ごわぁ!?』


「ははは! 脆い、脆すぎる!」


 強い、ただの正拳突きで次々と土くれを粉砕していく、が、


『げひゃー!』


『俺達は近くに『土』があり続ける限り何度でも甦るぜぇ!』


「ぬぅ、小癪な......」


 粉砕した土くれ共が元の姿に戻っていく、これではキリがない。


「ぬぅ、こうなったら、退散!」


 輪廻坊は村娘を担いで退却し始めた。


 ん? よく考えたら、これ凄くヤバい状況では?


『......なんだアイツ? ま、いいや』


『娘には逃げられたが、そこの白髪の童女に相手してもらおうか、へへへ』


「や、やややめないか、こんな小さな子に何する気、だ!?」


『うっせぇ! 邪魔だ!』


 烏乃助......と、言うのもおこがましい。今のこの烏乃助の事を『ダメ助』と呼ぶことにしよう。


 ダメ助は土くれに殴り飛ばされて気を失ってしまった。


 うわぁ、こんな姿見たくない......。


「次はわた、わたし達の番だ!」


「月に代わっておしおきだ!」


 今度は誰だ? ......!?


 また屋根の上に人が、あんたら低所恐怖症なの?


 今度現れたのは『伏真 政至』とその双子の妹『伏姫』であった。


 おお! 烏乃助と互角に渡り合える政至の登場にうずめは安堵......出来るわけがなかった。


「とぉ!」


「やぁ! 」


 二人とも屋根から飛び降りるや否や、手に刀ではなく棒切れを持って土くれ共を次々と攻撃するが、効果は今一つのようだ。


「えい! やぁ! とぉ!」


「えぇい! この! この!」


『......がぉお!!』


「きゃあ!?」


「いやぁ!?」


 土くれが驚かすと、二人は驚いてうずめの背中に隠れてしまった。


「......」


「ええい! お、お前達なんて怖くなんか......ないもん!」


「ふぇぇぇ、お姉ちゃーん、やっぱりわたち達じゃ武士になれっこないよー!」


「そ、そんな事言うな! ふ、ふぇぇぇぇぇん!」


 なんじゃこりゃ、伏姫はともかく、あの政至がなよなよした女の子みたいになってしまっている。


 今、うずめは異次元に居る気分となっていた。


 烏乃助はダメ助に、六道坊はスケベぇ坊に、政至は『ナヨ至』に、彼等は死霊に取り憑かれているとはいえ、これは酷い、酷過ぎる。


「ふぉ~! 政至様~! 可愛らし過ぎます~!」


 今、まったく知らない女性の声が聞こえてきたが、気のせいであろう。


 だが、何とも危機的状況、この土くれ共は弱いとはいえ、ほぼ不死身。しかも、こちらにはダメ助とナヨ至とナヨ姫と言ったお荷物三人衆がいる状況では分が悪すぎる。


『けぇ! よくも邪魔してくれたなガキ共!』


『罰として、俺達の相手してくれよ、あぁ?』


「う、うわぁぁぁぁ! 土の中に逃げなきゃぁ!」


「きゃあ! 白髪のお姉ちゃん、怖いよー!」


「お姉ちゃーん!」


「......あんたら、五月蝿すぎ」


 また土くれ共を燃やすか? うずめがそう思った矢先、何かが風のようにうずめの横を通り抜けて、土くれ共を斬り裂いていった。


『な!?』


『ほげぇ!?』


「......あー、だっるぃな~」


 そこには、一人の......めっちゃやる気が無さそうな侍がそこにいた。


「『女郎蜘蛛』。貴女が付いていながらこの体たらく、何ですか? もぅ」


 そこに居たのは、睦月に政至と共に鴨居城に現れた政至の側近『伸杉』その人であった。


「仕方ないだろ~。政至様が可愛いのが悪い~」


「......否定できないのが辛いですね」


 伸杉が、何処かに隠れている謎の女と会話する中、また土くれ共が再生し始めた。


「......面倒だ。さっさと親玉を倒した方が良さそうですね。うずめさん」


「え? あ、はい」


「逃げますよ」


 伸杉に指示され、うずめはダメダメ三人衆と伸杉、そして姿が見えない『女郎蜘蛛』という女性と共にその場を離脱した。



 影隠の里。


 降神の間。


「.....っ!」


「どうした? こないのか?」


 鎌鼬だった男と『影隠 鵺』が対峙してから数分経過。未だにお互いに攻撃の手を出していなかった。


 それもその筈、鎌鼬は鵺の『忍法・千手菩殺(せんじゅぼさつ)』を警戒しているからである。


 忍法・千手菩殺。鵺は生まれつき、ありとあらゆる脅威から我が身を自動的に防衛するという驚異的な反射神経の持ち主。

 それ故、鵺はこの世に生まれてから一度も怪我を負った事がないのだ。


 怪我や痛みを欲しても、体がそれを拒絶してしまう、まさに神や菩薩の加護を受け継いだ肉体の持ち主である。


 だが、鵺本人はその菩薩の加護を嫌った。恵まれた肉体を持ちながらもそれを否定した鵺は、なんと、その驚異的な反射神経を『技』として昇華させてしまったのである。


 我が身を守ることに特化した菩薩の加護を、いかに暗殺の技に使えないかと試行錯誤した末に生まれた恐るべき秘技、それこそが『忍法・千手菩殺』。


 自動的に我が身を守れるなら、その逆の自らの意思とは反対に相手を自動的に攻撃できる筈。


 熟練した武術の達人にもなると、相手が初動を見せる前に発生する『気』を読んで、攻撃と防御の間合いを図るのだが、気とは意識、つまり無意識に相手を追撃できる鵺から気を読む事が不可能。達人であればあるほど、気が読めないことに混乱が転じて迷いとなり、こちらが気が付いた頃には暗殺されてしまう。


 相手が強ければ強いほど殺しやすくなる『忍法・千手菩薩』。


 一見、無敵そうな忍法に見えるが、この忍法にも穴が存在する。


 それが鵺の顔の傷だ。


 かつて、鎌鼬が『鎌鼬になる前』の無名の忍者だった頃に偶然付ける事が出来た傷。


 そこで初めて、鎌鼬は『影隠 鵺』は無敵の怪物ではないことを知った。


 つまり、『忍法・千手菩殺』の弱点とは......。


 ━━こちらも無意識の窮地に立つ事。奴の菩薩の加護も、結局は相手の気を肉体が自動的に読んで攻防しているに過ぎない。

 あの時の拙者は、薄れ行く意識の中に放った一撃が偶然奴の顔に当たったに過ぎない。

 つまりそれは拙者が一瞬、無意識の世界に立つ事が出来たからこその奇跡!

 今下手に手を出せば瞬殺される。あの時の無意識の窮地に立たねば、拙者はここで死ぬこととなってしまうッ!!


「......分析は済んだか?」


「......」


「お前の考えてる事は分かっているぞ。いかに無意識の世界に行けるかどうかを考えていたな? だが、ハッキリ言って不可能。無意識とは、自らの自我からかけ離れた自身の深層心理。その窮地に至るだけで、どれだけの修験者が努力し、挫折していったか知っているのか?」


「......」


「それに、貴様がいかなる策を弄そうと、我にその拳は届かぬし、今は『この力』もあるしな」


「......ッ!? ぐっ!?」


 鎌鼬が脇腹に違和感を感じると、そこには、黒い霧から伸びる鵺の右腕であった。


 よく見ると、鵺本体の右腕がなくなっていて、右腕を体から分離させたようである。


「毒の神通力『怨毒』。便利なものだ、空間をも侵食し、体と体を分離することも可能とは」


「......ふ、ふ、ぐっ!」


 鎌鼬の脇腹から大量の血が流れ出る。かなり奥深くやられてしまったようだ。まったく止まる気配がない!


「呼吸が乱れたな? 『スキ』だらけだぞ?」


 鵺が黒い霧と共に鎌鼬との間合いを一気に詰める。詰んだ。


 が、鎌鼬はこれを狙っていた。


「なに!?」


「は......は......に、『忍法・風刃羅刹』」


 鵺は、背中に違和感を感じた。なんと、背中に二丁の鎌が突き刺さっていた。


「お、お前は、飛んでくる矢でさえ......その矢に攻撃の意思が宿っていれば......それすらも、払ってしまう......」


「ばかな!? では、何故我がお前の攻撃に......!?」


「ようは、攻撃の意思がその鎌に宿っていなければいいだけの事、その鎌に拙者の意識が向いていなければいい......別の所に拙者の意識を向けさせたのは誰でござるか?」


「き、貴様......っ!!」


 飛び道具を使っても、そこに『俺の攻撃当たれ!』と言う意識が少しでも宿っていると、鵺はそれを迎撃してしまう。


 ならば、そんな攻撃の意識が完全に消えてしまう程の強烈な激痛をともない、その痛みに、攻撃の意識が揉み消されてしまうほどの痛みに意識が向いてしまったその時、ようやく鵺に刃が届くのだ!


「さ、更に......その鎌には麻酔薬が塗ってある......あらゆる毒の抗体を持つお前でも......体の自由を奪う事ができる大陸の秘薬......中々に、効くだろ?」


「ぬぐぅ!?」


 いくら神憑り的な反射神経があろうと、麻酔で体の自由が奪われていようが、最早無意味!


「トドメでござるッ! 最終奥義ッッ!! 『鬼神蹴来(きじんしゅうらい)烈風電(れっぷうでん)』!!」


 鎌鼬はその場で脇腹から流れ出る血が下ではなく上に向かって舞い上がる程の高速回転を何度もした後に、直撃すれば即死確定な強烈な後ろ蹴りを放つ。


 形勢逆転! そう確信した鎌鼬の必殺の蹴りが、身動き一つ取れない鵺の鳩尾にめり込んだ瞬間、


 















































 ・・・・・・・・・・

 鎌鼬の敗北は確定した。


「......決戦奥義」


       禍

        

   靂       津

       殺

   霹       終


       天

 


 真魂山、山頂の霊園。


 『槌蛍 このか』の肉体を乗っ取った、元若狭の大名『武田 小兵』は、座禅を組んで難しい顔をしていた。


「『......なるほど、この力、まさしく『黄泉の使徒』のそれか、アタシ達が封じた神の使徒の力を使うなんて、妙な気分だが、今は有効利用させてもらうよ」』


 瞑想で閉じてい目を見開き、武田は安堵の表情を浮かべる。


「『良かった。『あいつら』は全員生きていたか、この力、遠くに離れている人間の安否も確認できるなんて、随分便利じゃないか......」』


 再び武田は瞑想に入ると、胸に『諦』の一文字が現れる。


「『なら、あいつらの魂を一時的に呼んで伝える事だけは出来る筈! 奥義『懴諦土観(さんたいどかん)』!!」』


 武田が奥義を唱えると、空から四つの魂が舞い降り、武田の目の前に降り立つと、それぞれが人の形となった。


『おお!? なんじゃいこれは!?』


 出羽の大名『鴨居 義明』。うずめの保護者にして、心集めの旅の立案者。


『あぁ? なんじゃい、ワレ、儂の飯時に何処の誰じゃ!』


 天狗の格好をした大柄な男性。この男は烏乃助は会った事ないが、うずめは信濃で『鈴鳴(すずなり) 源国(もとくに)』の記憶を見た際に、その姿を視認することができた、鈴鳴の槍の師『大天坊仙海(だいてんぼうせんかい)』その人である。


『くっくっくぅ、久し振りだな武田、随分若返ったじゃねぇかぁ』


 こちらは、烏乃助の育ての親であり、江戸幕府の暗部を担う男『高見魂(たかみたま)』。


『はぁ、等々この日が来たか』


 最後に、かつて日本各地に現れた神の使徒を封印して回った『山陽院(さんよういん) ニニギ』。


 以上の四人の魂を呼び寄せた武田は、単刀直入にあることを伝えた。


「『みんな、聞いてくれ、時間がないから伝えるだけの事は伝える」』


『あー悪い、ちょっと待ってくれ』


 高見魂が武田の発言を制止すると同時に、うずめ達が山頂に到着したのであった。


『あいつらにも話していいだろぉ? もう隠す必要なんてないんだし』


「え? 何この状況」


『おお! うずめに烏乃助! 久し振りじゃな!』


 鴨居が二人の姿を見て喜んでいると、ダメ助が急に喚き散らした。


「ひゃあああああ!! お、お化けぇ!!」


『う、烏乃助......だよね?』


『くっくっくぅ、なんか面白い事になってるな『八』の奴』


「......うちのダメ助がなんかすみません」


 なんとなく頭を下げるうずめであった。



 土佐城。


 では、語ってやろう★ 特に大した話じゃないから聞いた耳の反対の耳から私の言葉を吐き出して構いませんよ★


 『私達』は、言わば『知識の宝物庫』を担う錬金術の歴史の最古に誕生した人造人間(ホムンクルス)なんですよね★


 私達に与えられた役割は、人類が発見し、編み出した知識、技術を蓄え続ける事、それを人類がこの世から消滅するまで再現なく繰り返される★


 ええ、ええ、そんなことして何の意味があるんだと思いますよね? あるんだなぁ、これが、私の創造主はこう予言しました。数千年後、人類は確実に滅び、別の生命体が人間に代わってこの世界を支配するとね★


 私達は、人類に代わる生命体、今は仮称として『新人類』とでも呼びましょうか★ 彼等に旧人類が編み出した知識と言う名の財宝を受け渡す『方舟』役をやるのが私達の任なのです★


 だから私達は貴殿方に殺される筋合いはないのです★ 私がやっていることは、次の人類に我々がこの地上に居た事を証明させる事でもあるのですよ★ それを妨害する権利が貴殿方にありますか? ないですね★ 一時の私情で旧人類の財産でもある私達を殺す事は、それ即ち、我々旧人類の存在を新人類に伝える手立てを失うことになるのですよ?


 そんなことしていいんですか?


「......」


「......」


「......」


 沈黙、フェルナンド含む三人は沈黙するしかなかった。目の前の死刻の正体を知った三人は、何も言うことは出来ずに居た。


「はーい☆ ご理解頂けた? それとも本当に反対の耳から吐き出しましたか? どっちにしろ、もう貴殿方の出る幕はないんですよ☆ さっき生かして帰さないとか言いましたが、あれは無しの方向で☆ 分かったらさっさと回れ右をしてニニギさんと神様との戦争でもして遊んでてください☆」


 そう言って死刻が三人に背を向けると、背後から剣を抜く音が聞こえたので振り返ると、フェルナンドが抜剣していた。


「はぁ?」


 なんで剣を抜いてるのか理解できず首を傾げる死刻に対して、フェルナンドは語る。


「......自分でもなんで剣を抜いたのか判らぬ。確かにお前は人類史の財産、それを遥か未来の人類に残す、確かに素晴らしいことだ。しかし、それは『今の人類はどうでもいい』と言っているようなものではないのか?」


「おやおや、歳ですかなフェルナンド殿★ 私は旧人類の功績を新人類に伝える役目が......」


「その為にお前は何人もの人を犠牲にしてきた? お前が知識を蓄える為に何人を糧にしてきた?」


「......あのですねぇ、何かをするには何かしらの犠牲が必要なんですよ★ 常識でしょ?」


「確かに犠牲は付き物だ。だが、それはお前個人の事、何も知らない人々を犠牲にしてまで成し遂げる程の事ではないであろう!」


「......」


「知識を蓄えるだけなら、他者を陥れる必要が何処にある! それでは理不尽な戦争と同じだ! お前が本当に我々の財産を謳うなら、今の人類を尊重しろ! 今の人類を踏み台にするな!」


「......」


「今ようやく分かった、私が剣を抜いた理由。それは、国に仕え、人々を守護する騎士としての誇り、いくら素晴らしい言葉を並び立てようと、お前のやってる事は『暴力』となんら変わり映えはしない! ならば我々はその邪悪を騎士として断つ! それだけだ!」


 その一喝と共に、フェルナンドの後ろに居た二人の騎士も剣を抜いた。


「よく言った団長ッ!」


「このまま引き返すと思って冷や冷やしましたよッ!」


 そんな三人を見て、死刻は、怒っているのか判らないが、死刻の仮面に亀裂が入り、戦闘体勢を取る。


「.....『老剣』風情が、しゃしゃり出やがって、我々の役目を妨げる気か? ならば、オマエタチモ『ワタシタチ』ノ糧ニシテヤロウ★」


 いつもふざけている死刻が、真の知識の怪物としての本性をさらけ出す。


 人類最古の人造人間。その蓄えに蓄えた知識量は一個人を遥かに凌駕する量であろう。その上、完全なる不死身ではないにしろ、死刻は数千年先の新人類に遭遇する為に必要な寿命も蓄えており、その数千年生きられる生命力を削るには、ハッキリ言って不可能だ。


「まさに、勝目零ですね。こんな事ならもっと女を抱くべきだった」


「ペドロの奴、一人だけディアルの元に向かいやがって、自分がディアル達の元に行きたかったよ」


「今さら嘆いても仕方ない、それに二人とも、昔絵本で読んだ事あるだろ?」


 フェルナンドと後の二人は死刻に突貫する。


 己が信念と誇りを一本の剣に乗せて!


「最後に勝つのはいつだって化け物ではなく『人間』だとな!!」



 陸奥・真魂山山頂。


「『では、改めて、去年の神無月にワタシは影隠に殺された。それは、ワタシがある『神』の存在を知ってしまった事が原因なんだ」』


「ある神?」


 武田は、今この場に居る鴨居、仙海、高見魂、ニニギの四人の魂。そして、うずめ、ダメ助、ナヨ至、ナヨ姫、伸杉、何故か姿を見せない『影隠 女郎蜘蛛』。全員に自分の身に起こった事と、事の真相を話す。


「『その神こそは、逢魔の落日に神々をこの地上に送り込む手立てを企ている『神の密偵』とも呼ぶべき存在。それがすでに、日本の何処かに潜伏しているのよ 」』


『ふぅむ、神々がこの世界に来れるようにするための手引きしとる神が居ると申すか?』


『ががががが! だったら儂らでそやつをぶっ殺せば良かろうに!』


「『そう上手くいくなら苦労しないわよ。影隠ってのは、本当はその神に仕える忍び衆なんだけど、多分、鵺と紅葉は、自分達より下の者達には知らせてないでしょうね。そうでしょ? 女郎蜘蛛」』


「......た~し~か~に~、牛鬼も濡女も、きっと何も知らずに~、貴女を暗殺した事でしょうよ~武田 小兵~」


 何ともおどろおどろしい声だ。普通に喋れないのだろうか?


 そして、次にニニギが口を開いた。


『うむ、実は自分も、その事は知っていた。故に『神殺しの魔剣』をある男に作らせて、現在とある人物に私の友人が届けに行ってる最中だ』


 何やら大事な話のようだが、うずめは、そんな話より『山陽院 ニニギ』の方を凝視していた。


 この人、昔何処かで会ったような、自分にとって大切な存在だったような気がする。


 だが思い出せない。


 と、今度は高見魂が口を開く。


『くっくっくぅ、俺もそれを予感していたさ。だから俺はそいつに対抗する為に『最強』を生み出そうとしたのよ』


「『......あれが、貴方が言う最強なの?」』


 あれ、と指摘されて武田が指差した方向に居るダメ助は必死に穴を掘っていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! お化け怖い! お化け怖い!」


『ぷっ! あっひゃっひゃっひゃ! こいつはいい! けっどっよぉ武田、あれはお前のせいだろ?』


「『すまない、どうもこの力は制御しきれなくてな、なんか変な土くれを生み出してしまうし、それに......」』


 武田が山頂から麓の様子を見ると、万単位の土くれが意気揚々としながら大行進をしていた。


「『どうもあいつらは戦乱の頃に死んだ亡者共らしくてな、死ぬ前に果たせなかった娯楽と悪行を行いたくてしょうがない連中のようだ」』


『まさに百鬼夜行のようじゃのぉ。でだ、武田、お主がうずめに神通力を返却すれば、あの亡者共は再び土に還るのであろう? なら早くせい、お主の伝えたいことは分かったしの』


 と、催促する鴨居、しかし武田は首を横に振った。


「『まだ、その神が何処に潜んでいるか話してないし。それに、鴉、もとい高見魂が作ったとされる最強が如何なるものなのか試してみたい」』


「ほえ?」


 急にこちらに話題が来た事に対して、何とも気が抜ける返事をするダメ助。


「ち、ちょっと待って! ダメ助はまだ元の烏乃助に戻ってないんだよ!?」


「『いや、そんないかにも女々しい死霊からの呪縛すら祓えないようでは話にならん。高見魂、悪いがお前の弟子を試させて貰うぞ?」』


『くっくっくぅ、構わないぜ? もうじき八は九との決戦が控えてるからな。今どれだけ強くなったのか確認しておきたい』


『ハッハッハ! ではワシも見ていこうかの』


「ちょ、ちょっとぉ......」


 鴨居と高見魂がダメ助と武田の対戦を了承する中、仙海だけが興味なさそうであった。


『あー、んな事より儂はさっさと家に帰りたいんだがー』


『おおそうじゃ仙海、お主の弟子の『鈴鳴 源国』を倒したのは、あの烏乃助じゃぞ?』


『な、な、なんじゃとぉ!? 儂が手塩かけて鍛えてやった源国を!? よぉし、小僧! うちのバカ弟子を倒したってんなら、武田の阿呆なんぞさっさと倒してしまえや!』


「『......仙海、後で覚えておきなさい」』


 こうして、ダメ助・対・武田の試合が決まったものの、果たしてどうなる事やら。




 第五章『夢の導き』に続く


 けー! 結局四章で収まりきらなかった!


 終盤に近付くと、なんか今まで以上に書くことが多くて多くて(汗)


 次回でようやく第九話のラストです。


 このシリーズ初の五章目突入ですが、多目に見てくだせぇ。今後も、もしかしたら一話で六章やら七章使うかもしれません。


 それでは、次回をお楽しみに~..........鴨居『いやー、ワシら最終話まで出番ないと思っとったわ(笑)』


仙海『まったくだ!』

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