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こころあつめる(仮)~烏と不思議な少女の伝奇時代冒険譚~  作者: 葉月 心之助
第八話「こころはじらう」
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第四章『奇望の花』

 今回、烏乃助にとっては弱点克服回となります。しかも連戦で、新展開と、怒濤の薩摩編クライマックスッッッッッッ!!


 はじまり~はじまり~。

 推戴は焦っていた。


 九州全土の動植物達との意志疎通により、九州全ての動植物を味方に付けた筈の推戴が、たった一人の人間相手に苦戦し、焦っていた。


「お願いだから諦めてっ!!」


「無理っ!!」


 動物達の雪崩の如き猛攻が、死角、全方位、空中から、ありとあらゆる角度、方向から攻撃しているのに、全く攻撃が当たらない。


「なんなの......なんなのお兄ちゃんはっ!?」


「悪いが、お前に消えたくない理由があるように、俺にも諦めたくない理由があるんだよっ!!」


 一見すると、烏乃助の方が優勢に見えるが、実は推戴だけでなく烏乃助も実は焦っていた。

 それを顔に出さず、相手にそれを悟られないようにはしているが、烏乃助は焦っている。


 何に焦っているのか? それは『決着がつかないこと』。動物達は強烈な殺気を放っているからこそ、烏乃助は動物達の攻撃を事前に察知し、対応することが出来、更には、烏乃助に限らず、この時代の剣豪の殆どが現代スポーツのように『筋力』を使って体を動かしているわけではない。


 敢えて説明は省くが、現代人には無い身体操作である故に、この時代の武芸者達は三日三晩、戦い続ける事が出来たのだ。


 付け加えると、烏乃助程の剣の使い手にもなれば、三日三晩どころか、一週間以上戦い続ける事が可能であるので、体力の心配をする必要はないであろう。


 話は戻すが、推戴の戦法は、動物達を使っての攻撃、そして近くの木々や草むらの植物達があらゆる方向から烏乃助を観察し、そこで得た情報を推戴に知らせて、推戴は烏乃助の攻撃から逃げ続けている。


 これは簡単に言えば、この推戴自体には戦闘能力が無いことを意味する。


 もし、戦える力があれば、避けながら自分自身で烏乃助に反撃する筈。


 なので、烏乃助は確信した。一撃、もしくは素手で捕まえれば決着がつくと、だが当たらない。


 これでは先月に尾張で闘った『暁 黎命』の二の舞になってしまう。


 と、ここで烏乃助はあることに気付き、攻撃の手を止めて刀を腰に戻した。


「? なんのつもりかな? お兄ちゃん」


「......一時休戦!!」


「......は?」


 まさかの烏乃助の方から休戦を申し出た。

 これには、さすがに推戴自身、困惑してしまう。


「......五分、時間をくれ」


「さ、さっきから何の真似かな?」


「いや、ほら、このままじゃ決着つかないだろ? これは俺が『いつもと変わらない戦い方』をしているのが原因だと思うんだ」


「......ごめん、お兄ちゃんが何言ってるのか判んないや」


「判んなくてもいいから少し待て」


 そう言って、烏乃助はその場で腰を下ろして考え事を始めた。


「な!? わ、わけわかんない。いいの? わたち、その間に遠くに逃げちゃうよ? 本当にいいの?」


「......」


 烏乃助は相当深く考えてるらしく、推戴の呼び掛けには答えなかった。


「......じゃあね。お兄ちゃん、もう二度と会わない事を願うよ」


 そう言い残し、推戴は動物達を見張りとしてその場に残し、推戴は風のように去っていった。



 一方、烏乃助とはぐれた華申は、


「うぉおおおお!? 完っ全っに迷ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 今自分が何処に居るのか分からなくなった華申は、薄暗い森の中で(うな)垂れていた。


「うぉぉぉぉぉ......お、俺は、不甲斐ない、不甲斐なさ過ぎる! 一ヶ月前、目の前で推戴様を護れなかっただけでなく、もう一人の推戴様ですら護れないこの体たらく......くっ! 脇差しがあれば切腹していたものぉ......」


「......華申?」


「!?」


 地に顔を伏していた華申が顔を上げると、そこにはもう一人の方の推戴がそこに居た。


「す、推戴様!? よくぞご無事で!」


「うん、わたちの力でお兄ちゃんと華申が森に入った事ぐらい分かっていたけどね」


「で、では、何故自分達の前に、否、何故自分達の目の前から居なくなったのです?」


 華申の質問に対し、浮かない表情を浮かべながら、推戴は華申の質問に答えず、質問を質問で返す。


「ねぇ、華申に聞きたい事があるんだけど」


「はっ! なんなりと!」


「華申はさぁ、わたちと本物の推戴、どっちが好き?」


「それは勿論、どちらの推戴様も好きです! ......はっ!? い、いえいえ、これはその、主として大切なくらい、お二人のことが好きと言うか、なんと言うか......」


 勢いで好きだと言ったことが恥ずかしかったのか、華申の顔は真っ赤になった。


「そ、じゃあさ、今からわたちと推戴と居子を連れてここから離れよ?」


「え?」


「実はわたちは━━」


 推戴は、烏乃助に打ち明けた自らの不安を華申にも打ち明けた。


 推戴は思った。『葉名心 推戴』がこの世に生まれた時から、常に推戴の側に居てくれた華申なら、自分の考えに共感し、自分の言うことを聞いてくれると期待したが、


「......すみません。その命令には従えません」


「っ!? なんで!? 華申までわたちを否定するって言うの!? わたちだって、華申が大切に思う『推戴』なのに! わたちが偽者だから!?」


「いいえ、貴女様は偽者ではございません。誰がなんと言おうと、貴女様は我が主『葉名心 推戴』様です」


「じゃあなんで!?」


「......まず、うずめ殿の心を返さなければ、再び推戴様が影隠のような輩に狙われる」


「それだったら大丈夫だよ! わたちの力が凄い事ぐらい知ってるでしょ? だったら......」


「無理です」


「んなぁ!?」


「何故なら......貴女は優しいからです」


「え?」


 そう言うと、華申はまるで赤子を抱くようなとても柔らかく、推戴の小さな体を包み込んだ。


「貴女は闘えません。争いから無縁の人です。現に一ヶ月前、『影隠 鵺』のような恐ろしい相手を殺さずに追い出したのが何よりもの証拠」


「え......う......わ、わたちは......」


「推戴様、貴女は消えません、断言します」


「な、なんで華申にそれが言えるの?」


「......だって、そうじゃないですか、貴女は意思を持つ無機物ではありません。一つの『生命(いのち)』です。経緯はどうであれ、この世に生まれた一つの命です。だから消えません、ご安心を」


「......う......う......うわぁぁぁぁぁぁぁん!! 華申、ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!」


 推戴は泣いた、泣きじゃくった、この一ヶ月で溜まりに溜まった感情が全て爆発したのだ。


 こうして見ると、この二人はまるで親子のように見えた。


 一見、これでこの騒動は終わりに思えたのだが......。


「華申、本当にごめんなさいぃ......わたち、嘘ついてたのぉ」


「嘘?」


「うん、実は推戴は、本物の推戴はもう...... 」


 何かを言いかけようとしたその時、丁度考え事を終えた烏乃助が推戴に追い付いた。


「......」


「う、うぅ、お兄ちゃん、さっきはごめ、ごめんなさい...... 」


「いいから、『あれ』を俺に使ってみてくれ」


「あ、あれ?」


「あぁ、影隠の連中を追い出した『精神の結合』、もしかしたら、そこに俺が求めていた答え、そしてお前を苦しめていた『元凶』に辿り着けるかもしれん」


「な、何を言っているのだ烏乃助殿?」


 どうも烏乃助の言ってる事が理解出来ず、華申は思わず声を上げる。


 それに答えるように、烏乃助は一つの疑問を二人に対して言った。


「ずっと引っ掛かっていたんだ、そいつは確かにもう一人の推戴だ。だが、精神年齢的には見た目通りの子供だと思う、そんな子供が、何故自分が消えるかもしれない、なんて不安に行き着いたんだ?」


「え......それは......」


 確かにそうである。この推戴は、恐らく推戴本人のずっと押し込んでいた感情の塊、それ故、一々自分を押し殺さなくてもいい、何も考えない、何も悩まない無垢な子供の人格が自然と形成され、それが肉体を得たのが、この推戴であろう。


 だとしたら、無垢な子供が自分が消えるかもしれないなんて、そんな考えに至ったのは何故か? 誰かにそそのかされたのか? それとも......。


「『影隠 鵺』、恐らく奴と精神を繋いだ事が原因かもしれん、だから俺がお前の心の中に入って諸悪の根源を叩きのめしてやる!」


 こう豪語した烏乃助の心意気に圧倒されたのか、推戴は軽く頷いた後に、恥木の奥義を烏乃助に向けて使用した。


「そう、じゃあ、行くよ? これで何が解決するか分からないけど、お兄ちゃんがそこまで言うなら......奥義『彷木攝恥(ほうきせっち)』!」



 烏乃助は、気が付くと菜の花畑に立っていた。


 地平線まで続いているのではないだろうかと思うくらい広大な花畑。空は夕焼けのような小麦色、しかし何故か空には太陽と月が同時に存在している奇妙な空。今、日中なのか、夕方なのか、夜中なのか、そもそもこの空間に時間の概念があるのかよく分からない不思議な場所。


 烏乃助はこの不思議空間に多少驚きはしたものの、やがて花畑の中を歩き出した。


 まるで、既に目的地が分かっているかのように、


 どのぐらい歩いただろうか? そう思った時、花畑の向こうに一人の女性の姿を烏乃助は見付けた。


「......あんたが、本当の推戴か?」


 そこに居た推戴は、烏乃助とうずめが見た幼子としての推戴ではなく、成人男性程の長身の大人の女性であった。


 烏乃助の問い掛けに、その推戴は答えた。


「はい、初めまして『黒爪 烏乃助』さん」


「俺の事を知ってるのか?」


「ええ、外に居る『あの子』を通じて、あなたと、うずめさんの事は既にご承知の程でございます」


「そうか、だったら俺がここに来た理由は分かるな?」


「ええ。と、その前に」


「ん? あだ!?」


 推戴はゆっくりと烏乃助に歩み寄った後、烏乃助の脳天に手刀を 喰らわした後に激昂した。


「あなたは悪い人ではないことは判ります。ですが、あんな小さな子に刀を向けるとは何事ですかっ!! ずっと見てましたよっ!」


「あ......す、すまん?」


「疑問形で謝らないで下さい!」


 お互い初対面であるのだが、烏乃助は目の前の推戴に小一時間程、説教された。


「はぁ...... はぁ......はっ! す、すみません、私ったら、つい説教なんて偉そうな事を......」


「......い、いや、そこまで真剣に怒れるなんて、よっぽどあいつの事を大切に思っているんだな?」


「え、ええ、あの子は私にとっては妹のようなものですから。と、烏乃助さん、時間を取らせて申し訳ありません。では、行きましょう」


「行くって、何処にだ?」


「......あの子を苦しめる『心の病』を成敗しにです」



 一方、外では、烏乃助と推戴の精神は、肉体と分離し、現在は推戴の精神世界に居るため、ここにある二人の肉体は昏睡状態へとなっていた。


 完全に無防備となっている二人を守るように、残った華申は推戴と意思が繋がっている動物達と共に二人の身を守る為に周囲を警戒していた。


 と、その時であった。


「っ!? 何奴!」


 華申が木々の向こうから何者かの気配を感じ、戦闘態勢に入る。


 すると、その何者かは茂みを掻き分けて姿を表し、その姿を見て華申は血相を変えた。


「な、何故お前がここに......『影隠 がごぜ』!」


「ふー、ハー、その娘、どうヤら『生物』しカ操れナイみタいだな? おかゲでこの一ヶ月間、ずッと機会を伺ってイて正解だっタな」


 なんと、そこに居たのは、一ヶ月前に追い出した筈の影隠八鬼衆が一人『影隠 がごぜ』であった。


「ふゥ、しかシ、精神支配から逃れラれタものノ、少しデも身動きを取レば、すぐニその娘に気取らレてしまう、故にこの森の中で地蔵のヨウに不動体を貫いてやったワ」


 不動体、ようは本当に一ヶ月もの間、地蔵のように身動き一つ取らず、食事もせず、水すら飲まない状態を一ヶ月。


 普通の人間どころか、訓練を積んだ武芸者や修験者でも不可能な芸当、ここまで来ると目の前のがごぜは、文字通り人間を辞めてしまった存在なのだろうか?


「お、お前、何者だ? 『機械忍者(からくりにんじゃ)』とか言ったが、何処までが機械なんだ?」


「全テ、最早拙相の体に生物としテの『肉』は残っテおらン、でだ、悪いガお前も、そこの娘と剣士には消えテもらウ、どちらモ今後の脅威になりかネんからナ!」



 再び精神世界。


 烏乃助と推戴は菜の花畑を抜けると、そこには一つの集落があった。


 とても簡素な家屋が建ち並び、その中心に他とは少し違う屋敷が建っていた。


 と、ここで烏乃助はこの集落に着いてからあることに気が付いた。

 空は昼なのか夕方なのか夜なのか分からなかった空が、今は普通の曇り空となっており、後ろを振り返ると、先程まで自分達が歩いていた菜の花畑は嘘のように無くなり、そこには唯の高原が続いていた。


「ま、こんな可笑し空間でそんな事を気にしててもしょうがないか、で? この集落はなんだ?」


「......ここは私の故郷、私の家は奇術を生業としてきましたが、ですが、私の先々代に当たるお方が、戦乱の頃に奇術でとある武将に恥をかかせてしまい、このような場所に私達を追いやられたのです」


 と、話していると、屋敷の中から二人の子どもと一人の男が現れた。


 一人は、外で一度見ているから判る、服装も髪型も違うが、あれは幼き頃の推戴。もう一人の子どもは......。


「華申です。華申はよく私の家に遊びに来てくれていました。私の唯一心を赦せる相手、もう......ひ......とり......は...............」


「? どうした?」


 推戴はその場で膝を付いて苦しそうに胸を押さえた。


 と同時に、烏乃助と推戴の目の前に居る幼き日の推戴と華申と男が話し始めた。


「うぅ、ご、ごめんなさいお父様、ま、また奇術が失敗しちゃって」


「ん~? いいんじゃないの? 失敗は成功の元となるんだし、軽い罰で赦してあげる」


「な、なぁ親父さん。もう、『(すい)』を赦してやってくれ」


「ん~? だぁめ」


 男は軽い罰と言っておきながら、幼い推戴を容赦なくひっぱたいた。


「お、親父さ、ぶっ!?」


「ん~ついでに君も殴っとこ」


 今度は幼い華申まで殴った。烏乃助はその男を一目見ただけで、屑だと理解した。

 頬を抑えて涙を流す推戴の髪を掴んで無理矢理顔を上げさせた。


「い、いやぁ! 痛い、痛いよ、お父様ぁ!」


「あのねぇ、翆。僕らはねぇ、人々に奇跡を見せてやるのが仕事なんだよ。奇跡ってのはねぇ。神様が起こしてくれるものじゃなくて自分達で起こさなきゃいけないものなんだよぉ、分かる? 奇跡一つすら起こせない、起こそうとしない奴は実の娘でも気に入らないんだよ」


 だからさぁ、翆、華申、それに、『そこ』で見ている二人に告げる、奇跡起こしたきゃ自分達で起こせ、他人に任せるな、運命に任せるな、そういう恥知らずは見てると吐き気がする。


「!? あいつ、俺達が見えるのか? これ過去の記憶的なアレじゃないのか?」


 男が自分達の存在に気付いている事に驚いていると、男は突然烏乃助に向かって突貫してきた。


「なっ!?」


 烏乃助は思わず腰の鞘刀を抜くと、男の手にはいつの間にか刀が握られていた。


「駄目だよぉ、君達ぃ、勝手に人の心の中を、思い出を覗き見するなよ、この恥知らずが」


「お前、何者だ!」


 そして、烏乃助と男の刃が衝突し、二人は鍔迫り合いの状態になる。


「我が名は奇術師『葉名心 推戴』。先代の下らん奇跡のせいで落ちぶれた哀れな男だよ!」


「推戴!? どういうことだ!?」


 と、急に推戴を名乗った男はその場で煙となって烏乃助の目の前から消えた。


「教えてあげるよ。『葉名心 推戴』の名は代々我が家の当主になった者が名乗ることを許される名だ。しかし、そこの苦しんでる僕の娘はハッキリ言って出来損ないだ、推戴を名乗るには程遠い」


「は......は.......う、烏乃助、さん。今の男が、私達を苦しめる心の病......これが、『影隠 鵺』の神通力『怨毒』の能力です」


「何?」


「おしゃべりしてる暇なんてあるのかな?」


「っ!?」


 再び推戴を名乗る男が目の前に現れ、烏乃助に再び斬りかかった。


 だが、烏乃助は男の太刀筋を見て理解した。この男は剣の素人だと。


 足運びも、目線も、肩も腰も、重心の位置も、何もかもが、烏乃助から見るとデタラメ極まりない動きであった。


 なので対した事はないと、その一瞬の(おご)りが烏乃助の判断を鈍らせた。


「は?」


 なんと、男は目の前で、今度は一匹の蝶に変身したのである。


「こっち、こっち」


「ぬぁ!?」


 男は烏乃助の真横から突然現れ、攻撃した。


  どうやら、蝶に変身したのではなく、蝶と入れ替わっただけのようだ、剣の腕は対した事ないが、奇術の腕事態はとんでもなく凄い相手だと理解した。


 そんな男の奇術に翻弄されていると、推戴が烏乃助に呼び掛けた。


「烏乃助、さん、それは怨毒によって作られた私の心の傷から漏れた毒、人は毒を持つ生き物です。それは、他の生物とは異なり、自らを苦しめる心の毒、怨毒は、そんな毒を増長させる恐ろしい神通力なんです!」


 心の毒、仏教では三毒と呼ばれ、人が克服しなければならない煩悩とされている。


 三毒とは、(とん)(じん)()の事で、怨毒はその瞋(憎しみ)を増大させる神の毒、故に治療法がない完全治癒が不可能な毒である。


 目の前の男も、推戴が持つ瞋が増大されて生み出された幻。


 この幻影が、外に居るもう一人の推戴をそそのかした元凶のようだ。


「烏乃助さん! 先程の段取りは覚えていますか!」


「たっりめぇ、だろ!」


 数分前。


「烏乃助さん。今から闘う相手は、いわば幻影、なので普通に倒す事は不可能でしょう」


「は? お前、成敗するとか言っておきながらそれかよ?」


「う、うぅ、あ、あんな事を言って、は、恥ずかしくなってきましたぁ...... お、恐らくですが、先程烏乃助さんが話してくれた烏乃助さんの弱点を克服すれば何とかなるかもしれません」


 烏乃助の弱点、それは今年の睦月(むつき)に出羽で鴨居に指摘された『殺意なき攻撃は対応できない』の、事を言っているのであろう。


「つっても、殺意も敵意もない攻撃にどう対応するのか、イマイチ判ってないんだよなぁ......」


「あ、それなら簡単ですよ烏乃助さん。殺意も敵意もない人の攻撃を理解するには━━」


 そして、時は戻る。


「......こいつは幻、故に殺意も敵意もない、丁度いい練習相手だな」


「ん~? そうかな?  確かに殺意はないけど、君の心に『傷』を付けて、僕のような心の毒を君の心の中に流し込むことだって出来るんだよ?」


 そう言うと、いつの間にか、烏乃助の全方向から無数の包丁が飛んできた。これでは避ける事は不可能であろう。


 だが、烏乃助は目を閉じ、腰を落として、両足に体重が均等に乗るようにし、体の中心軸だけで回転して生み出した強力な薙ぎ払いによって生じた風圧で、包丁全てを吹き飛ばした。


「第五羽の奥義『大鷲』!!」


()った!」


 大技を使って、ほんの一瞬、硬直した烏乃助の背後から男が刀で斬りに掛かるが━━。


「ぶぎゃ!?」


 烏乃助はほんのわずか横に避けたと同時に男の顔面に肘を喰らわし、男は大きく吹き飛んだ。


「くっ! だがまだま、だっ!?」


 男はすぐさま反撃しようとするが、途端に動きが止まった。


「......相手を倒そう倒そうとするから、殺意なき者の『心』を理解することが出来ない。なんだ、簡単だった」


「き、貴様、何を......」


「ようは、俺も人を倒すのを止めれば良かっただけの事だったのか」


 男は、すぐに理解した。右に動けば胴を打たれ、左に動けば袈裟、姿勢を低くして突進すれば、踏み潰されてから突かれる、その他にも、色々な場所に、方向に移動すれば、攻撃すれば、確実に烏乃助の刀の餌食になることが判ってしまった。


「そういや、あのクソ親父が言ってたか『場を制する』だったか? こう言うの」


 場を制する、剣術において気(意識)の読み合いはとても重要視されている。そんな気を読む、つまり気の攻防において、相手の全てのありとあらゆる攻撃手段を気だけで制する技を『場を制する』と言う。


 烏乃助は今まで殺意ある者にしかこの場を制するを使えなかったが、今烏乃助の心は殺意なき者と同じ心境に立っている。


 勝とう勝とう、倒そう倒そう、それは負けてる時の台詞だ。つまり殺気がないとはつまり。


「勝って当然の状態を作る。勝って当然だから、相手を殺そうとも倒そうとも思う必要もない」


「ぐ、ぐぅ......!」


 男は動けない、動いたら烏乃助にやられる、この男自体は推戴が生み出した幻影、その幻影を打ち払うには、この心の毒以上の強い心で挑むしかない。


 が、男は動いた。苦悶の表情を浮かべながらも、自身の勝利を確信したかのような確信に満ちた足取りで。


「くはぁ! さすがに全ての攻撃手段を制する事は不可能だったみたいだね! 一つだけ隙が生じたぞ!」


「あ、それ俺が意図的に作った隙だから」


「へぇ?」


「態々(わざわざ) ご足労頂きご苦労さん。逝っていいぞ」


 まるで仕掛けであるエサに飛び付いた虫を網で捕まえるような感じで、烏乃助は男に向けて最終奥義の構えをとる。


「ま、待て待て! お、おい翆! 父がとんでもない危機に陥ってるぞ! は、早く助けろっ!」


「......いいえ、あなたは父様ではありません。それにあなたは言っていたじゃないですか」


「あぁ!?」


 さっきまで苦しんでいた推戴は、とても力強い眼差しで、父の幻影に向けて言い放った。


「奇跡起こしたきゃ自分で起こして下さい、この恥知らず」


「く、くそがぁあああああああああああああああああああああああああ!!」


「第最終羽の奥義『黒刀赤烏』・百連!!」



「さぁ、死にたくナケればそこヲ退け、と言ってモ殺スがナ」


「断る!」


 華申とがごぜは対峙してはいるが、まだ戦闘は始まっていなかった。


 実はと言うと、精神世界にいる烏乃助と推戴は既に一刻程の時間が経過しているが、実は現実時間では精神世界の一刻が、ほんの十五分しか経っていないのであった。


「やむオえン、では貴様も、こコの動物達にモ死んで......っっ!?」


 と、その時であった。場の空気が突如変わったのである。


「な、何ダ?」


「?......あ!? 烏乃助殿!?」


 意識が無かった筈の烏乃助が、たった今精神世界から帰還し、状況をすぐに理解し、体を起こして鞘刀を構えていた。


「見ない顔だな? その格好、影隠か?」


「......お初にお目にカかルな、拙僧がボっ!?」


 まだ相手が名乗ってる最中なのに烏乃助はがごぜの脳天に正面打ちを叩き付けた。


「この手応え、お前が華申が言ってた機械忍者か?」


「き、気を付けろ烏乃助殿! そやつの体は全て機械......」


「あっそ、じゃあ再び第最終羽の奥義『黒刀赤烏』・百連!」


 黒刀赤烏・百連、ようは八つの奥義をほぼ同時に叩き込む奥義を百回繰り返すだけの慈悲も希望もない非道い技である。


 そして、ものの数秒後。


 がごぜは反撃する間もなく、自身の内部に内蔵していた銃火器を全て破壊された挙げ句、全身をぼろ雑巾のようになるまで完膚なきまでに叩き込まれてしまい、最早そこにあるのはただの鉄の塊であった。


「が......ピ.......ぽ.......パ......」


「.........っ」


 これにはさすがの華申も呆然としており、空いた口が塞がらなくなっていた。

 それもその筈、一ヶ月前、自分が倒せなかった相手をこうもあっさり倒されてしまうとこうなってしまうだろう。


 そして、まだ頭部の原型が残っているがごぜを踏みつけて、烏乃助はがごぜに無理矢理情報を吐かせようとする。


「よぉ、お前らが神通力の事を知っていたのは何でだ? 正直に答えろ」


「が、そ、ソの前に、こ、コノ『口枷』を外しテくれナいか? そしたらお前ノ欲しイ情報をヤろう」


 そう言われて烏乃助は、何の迷いもなく鞘刀で口枷を外す、すると。


「くはハはハハは!! かかったナ! この口枷は自爆装置ヲ作動させるもノだっタのだ! 貴様ら全員道連......レ?」


 がごぜが自爆しようとすると、空から大量の水の塊と降ってきて、烏乃助とがごぜの全身を濡らした。


「......お前、何も俺を巻き込む事はないだろ?」


「いやぁ、ごめんね烏乃助、というかそもそも、そんなところに居る烏乃助が悪いんだけどね」


 茂みから現れたのは、火照村で待機していた筈のうずめと、居子(こじ)で あった。


 今の水は、うずめの神通力『哀水』によるものらしく、自爆しようとしていたがごぜの爆発は、火薬が湿気ってしまって不発に終わってしまう。


「な、ななナな、な、なんト言ウ恥さラしだ!? こ、これデは影隠の皆ニ顔向ケ出来ぬ!!」


 そうがごぜが嘆いていると、木々の向こうから何かが飛んできて、がごぜの頭部を一瞬にして破壊してしまう。


「何!?」


「が、パ!?」


 しかも、その飛んできた物に、烏乃助は見覚えがあった。苦無のような突起物が付いた鍵鎖。


 この武器を使う相手は一人しか思い付かなかった。


「『影隠 濡女』! 口封じの為に仲間を殺しやがったな!」


 烏乃助がそう叫ぶが、鍵鎖の向こうの暗闇の中にいるであろう濡女は何も答えず、鍵鎖を巻き戻して、その場を離れた。


 『影隠 がごぜ』死亡。


 影隠妖魔忍軍八鬼衆、残り四人。



 そして、一行は未だに意識不明のもう一人の推戴を華申が抱えながら推戴が眠る火照村に帰還する。


 しかし、推戴が入っている筈の花のつぼみが、いつの間にか開花していた。


「す、推戴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ちょ、華申さん! 落ち着くっすよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 すぐに花の中身を確認しようと、華申が走り出し、その後を居子が追い掛けた。


「たく、忙しない連中だな」


「ふふ、でも、あの人達の事、結構好きだよ私」


「へぇ、俺よりもか?」


 と、烏乃助はからかい気味にうずめにそう言うと、うずめは花のような笑顔で答える。


「ふふ、さーて、どうだろうねぇ」


「け、そうかよ」


 二人が話していると、推戴が居る方から華申の叫び声が聞こえてきた。


「う、おおおおお!? な、なんだこれは??」


「えーん、えーん!」


「あーもう、華申さん五月蝿すぎっすよぉ、ほぉら怖くなーい、怖くなーい」


 つぼみの中に居たのは、なんと推戴ではなく、赤ん坊が入っていたのである。


「え? どういう事?」


 うずめが首を傾げると、烏乃助が横合いからあることを告げる。


「精神世界で出会った推戴が言っていたんだ、自分の体の欠損が酷すぎて、完全に以前の推戴として生き返る事は不可能だと、それに気付いたあのもう一人の推戴は、俺達に心配させまいと、隠しながら推戴を生き返らせようとしていたそうだ」


「え? つまり、あの赤ちゃんは推戴本人なの?」


「ああ、以前の推戴は不可能だったが、今一度、赤子からやり直す形でなら、推戴を生き返らせる事が可能だったらしいぜ」


「......な、なんか、複雑な気分」


 そして、とうとう推戴本人から『恥木』を取り出す瞬間が訪れた。


「それじゃ、行くよ?」


「あぁ、頼む」


「......推戴様」


 華申は気を失ったままのもう一人の推戴を抱き抱えながら、その様子を見届ける。


 もう一人の推戴には、絶対消えたりしないと言ったものの、これでもし消えてしまったら、自分は一生自分を赦せなくなるであろうと、華申はそう思い詰めていた。


 その隣で居子が華申の腕に掴まりながら、この推戴が消えない事を願いながら、神妙な面持ちで見届ける。


「えーん、えーん!」


 赤ん坊となった推戴の胸に浮かび上がる『恥』の一文字に触れると、推戴の中から不思議な光が現れ、その光は本来あるべき場所へと戻っていった。


 それを見届けた後、すぐにその場に居る全員がもう一人の推戴の方に目をやる。


「......う、うーん、あれ? み、みんなどうしたの?」


「......」


「......」


「......」


「......や、やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うわぁ!?」


 もう一人の推戴は消える事はなかった。その事に安堵したのか、華申はその場で推戴を高く掲げて涙を流す。


「やったぁ! やったっすよ!」


「ばんざーい! ばんざーい!」


「ちょぉ、華申、下ろして~」



 その三日後、とうとう烏乃助とうずめは、推戴一行との別れの時が訪れた。


「おい、華申。お前、本当に大丈夫か?」


「ははは! 何を言うか烏乃助殿! 結果はどうであれ、どちらの推戴様もこうして生きておられたのだ! 俺はそれだけで万々歳よ!」


「よく言うっすよ、この三日間。めっちゃくっちゃ泣きまくってたくせに」


「う、うううう、五月蝿いぞ居子!」


「えーん、えーん」


「うわ!? もう、華申も居子も五月蝿いよぉ、『翆』ちゃんが泣いちゃったじゃないさぁ」


 もう一人の推戴は、赤子の方の推戴をあやしていた。


 まるでお姉さんのようである。


 ちなみに、翆は『葉名心 推戴』の幼名で、自分と赤子の推戴を区別するために、推戴がこの赤ん坊に名付けたのである。


「お前達はこれからどうするんだ?」


「......取り合えず我等は一旦居子の故郷でもある『封魔の里』に向かうとする。そこで暫く隠居生活をするやもしれん」


「確かにそうっすねぇ、翆ちゃんを旅に連れていくわけにも行かないし、そもそも推戴様不在の状態での旅に意味ないっすから。自分達の旅は一旦幕を下ろすことにするっす!」


「そっか、じゃあな」


「また会おうねー」


「またねー! お兄ちゃん、お姉ちゃん!」


 こうして、推戴一行は『封魔の里』を目指して薩摩の港から船に乗って薩摩を後にした。


 烏乃助達も船に乗ろうとしたが、烏乃助はそろそろ『彼』が来ると予想し、この港に残ったのである。


 すると、案の定『彼』が現れた。


「よぉ、そろそろ来る頃だと思ったぜ『郷見(さとみ)』」


「......へぇ? 烏乃助殿ったらぁ、何を言ってるでござるか?」


 そこに居たのは郷見ではなく、『影隠 鎌鼬』だった男であった。


「......あ、あれ? 珍しいな、まさかお前が来るとは」


「ん、久しぶり~」


「うひゃあぉ!! うずめ殿に会いたくてしょうがなかったでござるよぉぉぉぉ!! ぐひ、ぐひひひ!」


「......うわぁ」


 これにはさすがのうずめもドン引きしてしまい、烏乃助の背後へと隠れた。


「それで? なんでお前なんだ? 郷見はどうした?」


「あ、ああ、郷見殿は急用があるとかで、拙者が代理で来たでござるよ」


「急用?」


「そうでござる。それに、次なる心の所有者は、かなり厄介な所に居るでござる」


「.....もう厄介事には慣れてるけどな、で? 場所は?」


「......奥州・陸奥(宮城県)『真魂山(しんごんやま)』でござる」


「ん? 陸奥? 陸奥って言うと......」


「烏乃助、睦月(一月)に出羽に現れたあの人が治めてる場所だよ?」


「.......うぇ、アイツが居る所かよ。い、行きたくねぇ、会いたくねぇ」


 アイツとは、睦月に出羽の鴨居城に現れた奥州・陸奥の仙台藩藩主『伏真 政至』の事である。


 烏乃助が唯一勝てなかった相手でもあり、烏乃助が一番会いたくない相手でもある。


「......し、しかも『真魂山』だと? そこには確か......」


「はい、そうでござるよ! そこには『彼女』が居るでござる! その彼女こそが、実は『諦土』の所有者だったのでござるよ!」


「おぇぇぇぇぇぇ.......」


「う、烏乃助!? そ、その人には吐く程会いたくないの?」


「当たり前だろ......またあの頭おかしい女と関わると思うと.......おぇぇぇぇぇぇ」


 こうして、烏乃助とうずめの次なる目的地が決まった。


 次なる心の所有者は、烏乃助の顔見知りのようだが、果たしてその『彼女』とは何者なのだろうか?


 烏乃助は出すものを出し切った後に、うずめと鎌鼬だった男の三人と共に船に乗り込み、薩摩を離れ、陸奥・真魂山を目指すのであった。


「え? なんでお前も付いてくるの?」


「いや失礼、実は個人的にも拙者は陸奥に用があるのでござるので、現地に着き次第、我々は別行動を取るでござるよ」


「そ、そうか」


「それまでの間、うずめ殿とキャッキャウフフをするでござるよぉ、ひゃぁおおおおお!!」


「や、変な事する人にはお仕置き。『陰陽五行撃』!」


「ぐぁあああああああ!? ありがとうございますっ!!」



 一方、時間は遡り大和・奇魂村(くしみたまむら)


「くっ! まさか罠を既に張り巡らしていたとは.......」


 ディアル一行は『影隠 初花』との戦闘に敗北したのであった。


 初花は影隠一、即席で罠を張り巡らせる忍法の使い手であった。

 

「な、名付けて『忍法・躄之仇討(いざりのあだうち)』。小生、どうあがいても正面切っての戦闘は弱いでありますからね。こ、こここ小細工を労させてもらったであります」


 ちなみに、どんな罠を使ったかは内緒。


「くっ! しかし、立てない......」


「と、言うか、体が.....重い」


「い、いやはや、どうしましょうかね、これ」


 三人ともそこまで対した怪我をしてないようだが、どうやら立つことが出来ないらしい。


 そして、勝ち誇ったかのように初花は三人に止めを刺そうとする。


「う、うぅ、殺したくないでありますが、致し方なしでもりますよぉ」


 が、ディアルは地に伏した状態で重々しく顔を上げて、初花に問い掛けた。


「......一つ聞くが、影隠は我らに標的を絞っているのか?」


「? そ、そうでありますが、何か?」


「いや、結果はどうであれ......『囮役』は成功したらしいな」


「......は?」


 と、同時にディアルは初花の視界から消え、一瞬で背後へと回ったのである。


「え? は!?」


「動くな。他の二人にお前の忍法が通用しても、私には通用せん」


 ディアルは背後から初花の首に腕を回し、こめかみに短筒の銃口を押し当てた。


「ひぇぇ!? ま、まさかやられた振りをしてたでありますかぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「ああそうだ。だが、安心しろ、お前は殺さん。変わりにお前達の親玉の元に案内しろ、そして、この『毒』を力づくでも取り除いてもらう!」



 一方、土佐の港。


「無事、着きましたね団長」


「団長はよせ、この国では私は司教だ」


「は、失礼しました。」


 その港に、宣教師の一団が上陸していた。


 一人は司教と思しき中年男性と、三人の若い宣教師の一団。全員日本人ではなく西洋人のようである。


「同士ディアル、同士フェリスは上手く囮になってくれたようですね。お陰で道中何者にも襲われずに済みました。いやぁ、にしても、日本人の女性は中々良かったなぁ、また抱きたいです」


「ま、その変わりに他の日本人達からは好奇な目で見られたがな、がっはっはっは!」


「おいおい、マルティン、エンリケ、ここは奴の潜伏場所だぞ? もっと気を引き締めろ」


「......いや、これでいいペドロ、変に緊張するよりは気を緩ませておいた方がいい」


 三人の宣教師の名は、それぞれ『マルティン・ペレネス』『エンリケ・デ・レオン』『ペドロ・サーニェス』。


 そして、その三人を束ねるのは、かつてイスパニアの第一騎士団『カラトラス』の団長でもあった『ドン・フェルナンド』。


 実は、ディアル一行に宿敵『不知無 死刻』の討伐に向かわせたのは、死刻の刺客達の目をディアル達に向けさせる為でもあった。


 ディアル達が刺客達と闘っている間に、フェルナンド一行は遅れて越中を離れ、少し遠回りをしてから、死刻にばれないように、隠密で行動しながら、無事に死刻が居る四国・土佐に上陸できたのである。


「では行くぞ諸君! 我々の闘いに終止符を打つのだ!!」


「「「はっ!」」」


 彼らは決戦に向けて土佐の城下町を目指す。


 だがそこで、彼らはこの国の隠された真実を目の当たりにする事となるのであった。



 ━━『恥木(はじき)』蒐集完了。


 第九話「こころあきらめる」に続く。 

【奇跡】


 常識では起こるとは考えられないような、不思議な出来事。


 最近の奇跡と言えば、社会人から学生になった事ですかね。


 これはもう私自身が起こした奇跡と言うより、私がキッカケとなる引き金を引いて、周りの皆さんの手助けがあったお陰で私は今の奇跡を手にする事が出来たんだと思います。

 あのまま社畜として一生を過ごしていたら、私は確実に腐っていたかもしれません。

 なので、私はこの奇跡を無駄にしたくないですね。


 やっとこさ薩摩編が終った終った。


 なんか今回は第二、第三の『葉名心 推戴』が出てきて読んでる皆様を混乱させてしまったかもしれませんが、御了承下さい。


 そして、遂に第九話でイスパニア側と死刻の最終決戦で、ディアル一行は初花と共に『影隠 鵺』の元に、果たしてどうなることやら。


 それでは次回をお楽しみに~............しろよな。まったく、この『葉名心 推戴』である僕がなんであんな目に......ぶつぶつ。

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