第二章『血染め酒』
疲ッ! 鋭い疲れが、ゆっくりやって来る...う、うおああああああああはじまりいいいいいいいいはじまりいいいいいいいいいい!!?
「......皆よ、集まったか」
ここは、影隠の里にある『妖怪屋敷』の大広間。
そこは、日中でも関係なしに薄暗い部屋で、部屋の灯りは数本の蝋燭のみと、かなり視界が悪い広間であった。
その上座に座るが、影隠妖魔忍軍総大将『影隠 鵺』。
その隣に影隠妖魔忍軍八鬼衆がまとめ役『影隠 紅葉』。
そして、その二人の前方に四人の人影が座していた。
「んっだよぉ、俺っちょ達を集めてなんかあったのか? 鵺の大将」
四人の内先に口を開いたのは、袖を切り落とした忍び装束に、両腕には肩から指先にかけて包帯が巻かれており、目には黒眼鏡、左右のこめかみから、旋毛にかけて剃り込みが入った奇妙な髪型をした男が居た。
影隠妖魔忍軍八鬼衆が一人『影隠 夜叉』である。
「夜叉っち 少しは口を 慎めよ」
次に口を開いたのは、上は袖が長い忍び装束、下は前後の垂れ布、顔には蛇と書かれた面沙。
影隠妖魔忍軍八鬼衆が一人『影隠 濡女』。
「はぁん? べっつにいいじゃねぇかよぉ、な? 初花」
「ふんふんふ~ん♪ また皆さんとこうして顔を合わせられるだけで小生、感激の極みであります♪」
こちらは、とてもこの暗い広間に似つかわしくない程の笑顔を浮かべた、忍び装束を身に纏う年頃の少女。
影隠妖魔忍軍八鬼衆が一人『影隠 初花』。
「......人の話ぐらい聞けよな、俺っちょ先輩だぜ? それに皆さんつっても、まだ俺っちょ達だけじゃねぇかぁ」
「確かニ、『うわん』『女郎蜘蛛』『牛鬼』ガ見当たリませヌな」
こちらは、僧侶の服装を無理矢理忍び装束に改造したような格好をし、頭には編み笠、口には口枷をした男。
影隠妖魔忍軍八鬼衆が一人『影隠 がごぜ』
「はっ! た、確かに居ないであります! あ、あわわわわわ、ろくに確認しなかった小生は悪い子でありますぅぅぅぅぅぅ......」
「そんなこと 無問題だよ よしよしぃ」
濡女は泣きそうになっていた初花の頭を撫でた。
「う、うぅ......えへへ~」
「おぃおぃ、これじゃぁ話が進まねぇぜぇ」
「まッたクだ」
「......むぅ」
「もぉ、しょうがない子達ね~、代わりに私がここに居ない三人の事を話すわ~」
なかなか、場が収まらないので影隠のまとめ役である紅葉が場を仕切る事にした。
「まず『女郎蜘蛛』ちゃんは、『あの御方』の護衛に付いて行ったわ~」
「あぁ? あー確かあの御方は二週間前に出羽の鴨居の所に行ったんだっけぇ? あれか? 一度暗殺に失敗したぁ相手をぉ今度は自らの手で、奴かぁ?」
「いヤ、それハないだロう、まダあの御方と我等が裏デ繋がってイることは外部に漏れてイナイだろうシ、出羽で散っタ『鎌鼬』もそのような下手ハ打つマイ、今鴨居を直接殺害しタラ大事になル」
「鎌鼬殿ぉ......」
「次に~『牛鬼』ちゃんは里帰りしたわ~、なんでも今の時期は冷えるからね~『母親』が心配になったそうだから、帰ってくるのは来月ね~」
「......く、母親ねぇ」
牛鬼が里帰りした事を聞いて夜叉は小さく笑った。
「『あれ』を親と呼ぶとはぁ、奴も物好きだねぇ」
「夜叉っち 牛鬼んをわ るく言うな」
「ゲヒヒャヒャヒャヒャ! 五七五もろくに出来ないくせにそんなしゃべり方すんなよぉ!」
「..... ....... ...あ?」
一瞬、濡女と夜叉との間に一触即発の雰囲気があったが、彼等は忍であるため、すぐに冷静になった。
「で、『うわん』の野郎はどうしたんでぇすかぁい? 姐さぁん」
「死んだわよ~」
あまりにも衝撃的な事をさらりと発言した紅葉。その言葉を聞いてこの場に居る四人の八鬼衆は戸惑いを隠せなかった。
「あぁ? 死んだ? おいおいおいおいおいぃ、あいつは正体が分からないのが取り柄だったろぉ? まさか、あいつの正体を見破れた奴がぁいるってのかぁい?」
「ありえない そんなのいたら 不人間」
「.......まタ鬼が一匹散ったカ、これハ例の『逢魔の落日』の前触レか?」
「う......そ........で.......あります......も、紅葉様ったら~また小生達をからかって......!?」
うわんが死んだ事実を受け入れられない初花の前で、紅葉は手のひらに乗せた、バラバラとなった木片を他の八鬼衆の面々にも見せた。
「これ、うわんちゃんの『怪名札』よ~」
「「「「!!!?」」」」
怪名札、それは影隠の秘術によって作られた木札で、八鬼衆全員の体内に同じ札が埋め込まれており、札が埋め込まれた者の生命活動が停止すると、術者が所有する同じ木札が弾け飛ぶという物。
これで紅葉は常に八鬼衆全員の生死を確認する事が出来ると言うことである。
「......う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、あ、ぁぁ!!」
バラバラとなった木札を見せられて初花は隣に座っていた濡女に泣き付いた。
「......皆に集まって貰ったのはその事だ」
ここでようやく、さっきから黙っていた鵺が口を開いた。
「......うわんが死んだのは......我の責任でもある」
「あぁ? どぉいうことだ大将?」
「うわんの報告にもあった例の『西洋仮面』の事が気になったものでな、うわんにその調査を任せたのだ......けっしてその西洋人と接触するな、と命じたのだが......」
「やはり、そうなると~うわんちゃんから仕掛けたわけではなく~その西洋人がうわんちゃんの存在に気付いた......ふふ、その者、只者では御座いませんね~ふふ、ふふふふ」
うわんが死亡して、皆が重い空気になっているのにも関わらず紅葉は一人愉しそうに笑っていた。
「......更にその西洋人、あの『不知無 死刻』を追って日本に来たらしい」
「......ん? ちょいっと、待ってくれぇ、それヤバくね?」
「確かに、あの化け物ガどうなロうガ知ったことでハないが、去年の神無月に飛騨の地で奴に渡しタ例の『書物』。あれガ外部に漏れるノは......まずイな」
例の書物、去年の神無月に信濃で死刻に薬付けにされて誘拐された人々と交換する形でがごぜが手渡した書物の事を言っているようである。
「......そう、あの怪物の手にある間は問題ないと思っていたが......うわんの正体に気付けた程の相手となると油断できぬな......なにせあの書物の中には、我等が百七十年間守り続けていた『この歴史の真実』が記されておる!」
そう言うと、鵺はその場から立ち上がり宣言した。
「我等は歴史の影に隠れる魔に堕ちし者! 常にこの歴史を影で守り通してきた! その結果他の忍衆からは忌み嫌われる存在にまでなってしまったがこれは致し方なし! もうじき『逢魔の落日』を迎えるが、それまでには我等の職務を真っ当するのみ」
「ゲヒヒャヒャヒャヒャ! だろうな、だったら大将、その西洋人は俺っちょに任せてくれないかぁ?」
ディアルの討伐に名乗りを上げたのは夜叉であった。
「......よかろう。だが夜叉よ、念のために言っておく」
「あん?」
「......やるからにはとことん殺れ、逆にお前が殺されたとしても必ずや一矢報いるのだ!」
「ゲヒヒャヒャヒャヒャ! あいよぉ、そいつの腕前はよく分からんが、俺っちょの『十本流』の前じゃ手も足も出ないだろうぜぇ!」
そう言うと夜叉は一瞬でその場から居なくなった。
「敗北の お決まり台詞 きましたね」
「こレ、夜叉が嫌いダからと言っテ、そのようナ事を言ウな」
「う、ううう、ひぐ、そ、そうでありますよぉぉぉ
、夜叉殿はちゃんとうわん殿の仇を取って戻ってきますよぉぉぉぉ、うえーん」
「では~若様~私達もそろそろ~」
「......うむ、では解散ッ!」
その言葉と同時に、広間の明かりであった数本の蝋燭が同時に全ての火が消え、広間は完全に闇に覆われた。
■
「く~久々の一人だ~」
烏乃助とうずめが出羽に帰還してからの翌日。
昨日は鴨居が二人の無事を祝って宴を開き、夜遅くまで飲み明かした。
現在烏乃助以外は鴨居城の宴会の間にて、熟睡しているのであった。
烏乃助は半年振りに一人になれたので一人、出羽の城下町を歩いていた。
「あ、そうだ。久し振りにあいつの店に寄るか」
そう言った烏乃助が向かった先は、百貨屋『大己屋』であった。
大己屋とは、去年の葉月、烏乃助が出羽に到着する少し前に知り合った行商人の『大己屋 少彦左衛門』が経営する百貨屋である。
※忘れてしまった方は第一話第一章を参照。
「旅に出る前に旅の必需品を色々と揃えてくれたからな、あん時の礼とまた旅に必要な物を揃えて貰おうかな」
しかし、烏乃助が向かった先には大己屋はなく、そこは空き家となっていた。
「......あれ? あいつどうしたんだ?」
「あら、烏乃助さんじゃないかい」
烏乃助に声を掛けたのは、大己屋だった建物の隣にある茶屋の娘さんであった。
「よぉ、大己屋の奴どうしたんだ?」
「ええ、実は三ヶ月前に突然店を畳んでしまってねぇ、急用が出来たとかなんとかで、出羽から離れてしまったよ」
「急用?」
三ヶ月前と言えば、烏乃助とうずめが若狭に居た頃だろうか。
再び大己屋の世話になろうと思っていたのに、大己屋はどこに行ってしまったのだろうか?
娘さんに礼を言った後に烏乃助が次に向かった先は。
「......これ、まだ残ってたのか」
今烏乃助の目の前にあるのは、道を隔てる巨大な氷の壁であった。
これは、烏乃助がうずめと出会う二ヶ月前に、現在泰平の世を震撼させる人斬り『曉 黎命』が所有する神通力『勇氷』によって作られたもの。
あれから大分経つのに、まったく溶ける気配がない。
これが勇氷の力なのだろうか? 一度氷付いたら決して溶けず、あらゆる分子活動、生命活動を瞬時に停止させる絶望の氷。
ある意味、この氷に挑むにはそれ相応の『勇気』が必要なのかもしれない。
「絶対に溶けない氷。それに加え『人斬り』か。いずれ闘り合うんだろうが......いったい何時になったら足取りが掴めるんだ?」
今のところ『曉 黎命』に関する情報は何もない
。
もう半年以上前から『郷見』率いる隠密部隊が調査しているはずだが一向に手掛かりなしである。
......正直失礼かもしれないが、もしかして捜索が怠慢になっていたりしてないだろうか?
「おぉぉぉぉ! 何やこれぇぇぇ! 冬の風物詩か何かかいなぁぁぁぁぁ!」
そんな事を考えていると背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「......深鮫か。なんだ、まだ居たのか」
「て、おぃぃぃぃ!! 何サラッと俺様をはれ物みたいな扱いしとんねぇぇぇぇぇぇん!」
烏乃助の背後に居たのは、越中に帰ったと思っていた『深鮫 挟樂』であった。
それにしても、今深鮫はこの氷の壁を冬の風物詩と言った......半年前にも似たような事を言ったなぁと、染々思う烏乃助であった。
「こいつは後で説明するとして、なんでまだ帰らないんだ?」
「......なんや兄ちゃん、剣の腕前は凄いのに常識が欠けとるのぉ、そんなすぐ帰れるわけなかろうにぃぃぃぃぃぃ、帰りに必要な物資やろぉ? 後は昨日から入港手続きとかなんとかで、そぉぉぉんなすぐ帰れんわぁ!」
ふと、烏乃助は深鮫の格好を見て疑問に思ってしまった。
「そういや、お前......寒くないのか? その格好」
「んぁあ? 全然」
深鮫の格好は、越中の時からまったく変わっておらず、上は帯を巻いていない漁師の着物、帯が無いため、その鍛え上げあれた腹筋と胸にある巨大な刀傷を露出させ、下は裾がボロボロの股引き......今の時期を考えると相当寒そうな格好だが、深鮫はまったく寒そうに見えなかった。
「んー、俺様もよー分からんがぁぁぁぁぁ、俺様どうも寒さに強いみたいなんやぁぁぁぁ、やっぱ日本人やないからかなぁぁぁぁ?」
「さぁな、で、帰りの準備に忙しい筈のお前がなんでここに......あ」
「シャーシャシャシャ! 今兄ちゃんが思っとる通りやぁぁぁぁぁ!」
「......」
つまりこう言うことである。深鮫は、帰りの準備を部下達に任せて一人、出羽の城下町を漫遊していたのである。
「ま、ある程度楽しめたしのぉぉぉぉ、折角出羽に来たんや、ちょっくら鴨居の旦那に挨拶でもするかのぉ」
「おぉ、そうかそうか、その心掛けは感心じゃな」
今度は、深鮫の背後から鴨居本人まで現れた。
「......ん? あんた確か、朝一番から溜まった公務が忙しいんじゃ......あ」
「わっははははは! 御主の想像通りじゃ!」
「......」
つまり......もう説明するのがめんどくさい、今ここに鴨居が居るのは深鮫と同じ理由である。
「それでよく一国一城の主が務まるな」
「はははは! よいではないか、よいでは! おぉそうじゃ深鮫よ! 今宵宴を開こうと思っとるんじゃがどうじゃ?」
「宴ぇ? ......シシシシィ、ええでええでぇぇぇぇぇぇ! やっぱ鴨居の旦那とは気が合いそうやぁぁぁぁぁ!」
「は? ......昨日あんだけ飲んだのにまだやるのか?」
「あったりまえじゃ! 昨日なんか今日の前座に過ぎぬわい! お楽しみはこれからじゃわい!」
「シャーシャシャシャ! だったらよぉぉ旦那ぁ! 夜まで時間があるしぃぃぃ、今から遊郭にいかへんかぁぁぁ? 出羽の女を一人か二人紹介してくれやぁぁぁぁ」
「はははは! よいぞぉ! たっぷり楽しもうではないか! で? 烏乃助、御主はどうする?」
「あ?」
急に話を振られて怪訝そうな顔になる烏乃助。
「あー、やめとけやぁぁ旦那ぁ、兄ちゃんには......な?」
「な? じゃねぇよ! 何想像してんだ!」
「えぇ? だって兄ちゃんの本命は、あの嬢ちゃんやろぉ?」
嬢ちゃんとは、きっとうずめの事を言っているのだろう。
それに対して烏乃助は真顔でこう答えた。
「......ありえねえし、そもそも俺があいつと旅してんのは、かつての自分と重なっただけだし、そもそもあんなガキに欲情するわけないだろ?」
「う、わぁ冷たぁぁぁ、どう思う旦那ぁ?」
「あれじゃよ、照れて......」
「ねぇから」
「......だったらのぉ烏乃助。うずめに気が無いなら共に行かぬか? 遊郭」
「......はぁ、分かったよ。行けばいいんだろ行きゃ」
おっさん二人がうっとおしくなった烏乃助は、渋々おっさん二人と昼間から遊郭に向かった。
■
ここは、陸奥と出羽を繋ぐ街道、そこを一頭の馬が駆けていた。
その馬上には男が一人......と、思いきや男の前に小柄な男が居た。
「あのぉ、政至様。正直前に座られると邪魔なんですがぁ......」
「ふははははは! よいではないか! 後数刻で出羽に着くのじゃ! そぉ堅っ苦しい事を言うな!」
馬を操る男は、一見真面目そうだが、その表情にはやる気がなく、その男の前に座る小柄な男は、少女と見間違える程の美青年であった。
前回登場した時は全裸であったが、今はちゃんと衣服を着用しており、武士としての格好に加え、家紋が入った灰色の羽織りを着ていた。
「ふはは、やはり久方振りの遠出は爽快じゃのぉ伸杉!」
「......はぁ、お忍びで出羽に向かうとか......まじ勘弁してほしいですよ政至様......ん?」
伸杉は、手に持っていた手綱を引いて、急に馬を止めた。
止めた理由は、ここら辺を縄張りにしている数名の山賊が道を遮っていたのである、
「これ、伸杉! 何故馬を止めるのじゃ!」
「......え? 見て分かりません? あの人達が邪魔で......」
「......安心せい、あやつらは人ではないから存分に馬で蹴り飛ばせい!」
「ふざけんな! 俺達はちゃんと人間だ!」
人間扱いされなかったことに対して反発した山賊達を尻目に、政至と呼ばれた男は伸杉と共に馬を降りた。
「へぇ、あんたが『伏真 政至』か、確かに女みてぇな面構えだな......あ、ごめん、本当に男かあんた?」
「ふは、ふははははは! いやはや、余を女子と見間違えるのも無理もない、それだけ余が美しいと言うことなのだからな!」
「......うわぁお、自分自身を自画自賛して恥ずかしくないんですねぇ」
政至の自画自賛っぷりに呆れ果てる伸杉。そして、政至は足首まで伸びる自身の髪を髪止めで纏め上げ始めた。
その所作だけ見ると、男なのに女性のような色気まで感じ始めた。
そんな政至の姿を見て山賊の頭と思われる男が口走った。
「へ、へへへ、あんた、そんなに可愛いのに趣味が『山賊狩り』なんだよな? 昔あんたに殺られた仲間の仇......取ろうと思ったけど......な、なんか、あんたが男でもいいや、て思えてきた」
「むぅ?」
急に山賊の眼差しが敵意からいやらしい目付きになった。
「なんじゃ? 御主、相手が可愛ければ男でも良いと申すか?」
「......(なんでここら辺には変態しか居ないんだろうかぁ、はぁ、帰りたい)」
正確に言うと、多少下品かもしれないが、彼等は長い間女性と関わっていないため、性に飢えていたのである。
己の性欲を満たせるなら、もう男でもいいや、と言う完全に冷静な判断が出来なくなっていた。
「く、くくく、あんたに殺された仲間の仇が取れる上に、あんたを徹底的に可愛がれるとは、正に一石二鳥よぉ!」
同性にこんなことを言われたら普通身の毛がよだつものだが、政至はその山賊に対して不敵な笑みを浮かべた。
「そうかそうか、余を愛でたいか、しかし残念よな」
「な、なにがだ?」
「ん? だって御主、御主は単に余のこの可憐で美しい肉体を使って自が欲求を満たしたいだけであろう? つまり、余の肉体を支配したいだけであって、余自身を愛でたり支配したいわけではないわけだ」
「え? んん?」
突然、謎の口上を述べ始めた政至。それに対して山賊達は戸惑っていた。
そんなのお構い無しに、政至の口上は続く。
「真の支配とは! 他者の肉体を使って自が欲求をぶつけ支配するものでもなければ! 他者の行動を制限し、自分の思い通りに他者を操るものではない!」
「え、えーと......」
「......兄貴が変な事口走るから、なんか変な事を語り出しましたぜぇ?」
山賊達の戸惑いを意に介さずに口上を続ける政至を見て、政至の臣下である伸杉は、然程興味もないらしく、政至の背後で馬の頭を撫でていた。
「真の支配......それはッ!」
「......ごくり」
山賊の皆さんは思わず固唾を飲み、政至の口上を聞いていた。
「他者の『心』を支配することじゃ。自分に付いてくる者、自分に信頼を寄せる者、自分に敬愛する者、その者達の心を我が物とする事こそが真の支配者よ! しかし、人の心は移ろい行くもの、ならばどう支配すれば良いと思う?」
と、急に山賊に質問した。
「え、えぇと......」
一応、答えようとするが、山賊の答えも待たずに政至は口上の続きを述べた。
「人それぞれやり方は異なるが、余の場合は『無償の愛』でもって接する」
「あ、愛?」
「左様、無償の愛を与えてやれば、自ら進んで、自身の心を余に献上し、余の為に心から尽力してくれるようになる。逆に無理矢理従わせておればそんなの、いずれ謀反を起こされて没落するのが目に見えておる! よって、折角だし、御主らを余の寵愛でもって支配してやろうか?」
「え?」
「正確に言えば余の軍門に降らぬか? こんな山賊稼業より我が仙台藩、しいて言えば陸奥国に仕えてみぬか?」
「い、いや、しかし......」
「まぁ、無理もない、御主らのような賊が侍どころか、武士にすらなれないであろうな。しかし、余の口添えがあればそれも叶うが......」
「......」
口上の次は交渉を持ち掛けてきた。さっきから何を考えているのかよく分からない男ではあるが、山賊稼業でしか生きていけない彼等にとっては、とても魅力
的な話ではあるが、今自分達の目の前にいる小柄な男は、過去に自分達の仲間を散々殺めてきた残忍な男。
果たしてこの話、乗るべきだろうか? その事で悩んでいると、政至は相手の返答も待たずにこう答えた。
「いやいや、やはり今の話は無しにしよう。ただ言ってみたかっただけじゃし、仲間の仇の下に付くなんぞ願い下げであろう?」
「......え? じ、じゃあ、さっきから何がしたいんだお前?」
「......なぁに、御主らを試したのじゃ、この程度の交渉に迷いが生じるようでは、御主らに武士は向いておらぬな、と思ったのじゃ」
すると、政至は腰に差していた刀を抜いた。
その刀の大きさは通常の刀と同じ三尺(約90cm)ではあるが、政至本人が少女のような体躯であるためか、三尺の刀が若干大きく見えてしまう。
抜刀した刀を肩に担ぐと、政至はさっきから浮かべていた不敵な笑みから一転、とても悪そうな笑みへと変わった。
「くは、くはははは! 結局のところ、武士と言うものは斬るか斬られるかの世界。そんな世界で一々こんな簡単な決断すら決められぬなら斬られて当然! ならばいっそ余がここで御主らを斬り捨ててやった方が御主らの為になるであろう!」
「なっ!?」
突然、理不尽な事を言われて動揺してしまったが、すぐさま手に持っていた刀を構える山賊達。
「けっ! さっきからわけわからない事ほざいている思っていたら、結局こうなるじゃねぇか! だったらお前の話なんか聞かず最初っから殺っときゃ良かったんだ!」
「くははははははは! おい、伸杉! 決して余の邪魔をするなよぉ!」
「あーい」
ずっと政至の後ろに居た伸杉はとてもやる気がない返事をした。ちなみに今の彼は、横たわる馬の腹を枕変わりにして、その場で寝そべっていた。
......とても武士にあるまじき行為である。
「さてさて、どこからでもかかって良いぞ? 折角こんなに大勢いるのじゃ。存分に余を愉しませた上で、余の『贄』となるがよい!」
「う、うおおおおおおお!!」
一斉にかからず、まずは、三人の山賊が前方から政至に向かって突貫し、刀でその小さな体躯を切り刻もうとする、が。
「うげっ!?」「んぉ!?」「ぐぅぎ!?」
突然三人の山賊は政至の間合いに入った途端、政至の眼前で跪いた。
そして、三人の首が飛んだ。
「え!?......な......ん......」
「くははははは! 何が起こったか分からぬか? だったらもっと近う寄れ、好きなだけ見せてやろうぞ」
本当に何が起こったか分からないが、端から見るとまるで三人が自ら自身の首を政至に差し出したかのようにも見えた。
無論、政至の配下でもない彼等がそのような事をするはずがないことはこの場にいる誰もが分かっていた。
「......ふっ、お、お前の剣技の正体は分からんが、お前が化け物じみた剣の腕前である事は以前お前に殺された仲間の生き残りから聞いている......」
「む? おお、そうかそうか、ならば何かしらの対策はしてくれておるのであろう?」
政至は語りながら自身の刀に付着した山賊の血を舌で絡め取り、そのまま口の中へと運んだ後、口内でその血を味わってから飲み込んだ。
「......ふぅ、美味じゃ」
「う、き、気味が悪いが......だが、いくら強くても所詮剣士よ!」
そう豪語すると、山賊の頭と思われる男の背後から弓を構えた山賊が六人、そして近くの岩影に潜んでいた山賊も岩影から姿を表し弓を構えた。
「はっはぁ! これだけ弓に囲まれていればいくら剣豪と言えどかわしようがあるまい!」
「むぅ、確かにのぉ......しかし、残念じゃ。これでは余を仕止めることは叶わぬ」
「ほざいたな......弓隊! 射てぇ!」
その号令と共に政至を取り囲む矢が一斉に射出された。
一見不利な状況に見えるが、政至は先程斬り落とした山賊の頭を岩影から現れた山賊目掛けて蹴り飛ばし、矢が空中で生首に直撃し、そのまま地面に落下した。
岩影からの矢は防いだが、まだ前方からは十数本の矢が一斉に向かってきていた。
すると、政至は今度は自身の足下に転がる首がない山賊の死体を刀で突き刺したかと思うと、その死体を片手で軽々と持ち上げ盾代わりにした。
「ふぇ!?」
これには山賊の頭も驚きを隠せなかった。あんな女子のような細腕で男性の死体を持ち上げること自体信じられなかった。
実は、政至は腕力で持ち上げているのでわなく、本来なら腕に掛かる筈の重みを腕や肩ではなく、腹で受け止め、更に腹で受け止めた重みを足下の地面に流していたのである。
まるで、重みと言う水を政至と言う管を伝って地面に流している、そう言った感じである。
ちなみに、政至は全ての矢を防ぎきれず、一本だけ自身の背後で馬と暢気に寝ている伸杉に向かって飛んできたが、伸杉は寝惚けながらその矢を素手で叩き落とした。
「ぬぅぅぅぅぅぅ、せい!」
「ぬぅおぁ!?」
今度は、死体が刀に刺さったままだというのに、まるで剣術の稽古でやるような素振りをその場で行い、そのまま投石のような感じで死体を山賊達に投げた。
「な、え、あ!?」
死体が飛んできて慌てふためく山賊達の懐に、いつの間にか政至が潜り込んでいた。
「う、うわぁ!」「何してる! は、早く殺れ!!」「あ、あぁ!?」「ばっか! 早く弓を捨てろ!」
「ふは、戦略も統率もあったものではないな。こうもあっさり混乱してしまうとは、やはり武士に向いておらぬな。罰として散るがよいわ、『朱雀』!!」
混乱し、しかも大勢の男が密集していたため、まともに動ける者は居なかった。
しかし、背の低い政至にとっては、密集した相手だろうが、彼等の足下を自在に動き回ることができた。
そこから、混乱する山賊を一人一人正確に下段から相手の喉を貫いた。
「げっ!?」「ぐっぴ!?」「ぱぁう!?」
「ふははは! 中々に良いぞ!」
次々と山賊の喉から血の噴水が上がり、山賊達はまるで血の噴水を上げながら踊り狂っているようであった。
「あ......う......あ......」
先程の岩影付近に居た山賊は仲間を助けようと弓を構えるが、仲間の山賊達、そして血の噴水が邪魔で政至に狙いを定める事が出来なかった。
「く、くそぉ......あ?」
狙いを定められず戸惑っていると、腹部に何かしらの違和感を覚えた。
よく見ると自分の腹に刀が刺さっていた。
「う、う、ああぁあ!?」
「く、では御主を最後として、此度の血の宴はお開きとするかのぅ」
どうやら、自分以外はもう生きている仲間が居ないことに気付き、そして自分もまた、後数秒後に仲間の後を追うのであろうと思った......が。
「ぐ、あ、い、痛い......た、すけ、て」
「......ん? 御主よく見ると随分若いのぅ、その若さで山賊とは......それに顔も悪くない......よし! 気に入った! では.....」
い た だ き ま す じゃ
「あ━━━━━━━━━!!」
■
「ふぁ~、あ、政至様ぁ、茶番はもう終わりましたかぁ?」
「おお、伸杉か、やっと起きたか......ん? 御主今茶番と言わなかったか?」
主である政至が山賊と戦っている中、馬と一緒に寝ていた伸杉が目を覚ましたようである。
「だってそうじゃないですかぁ、支配だの無償の愛だの謳ってたくせに結局皆殺しじゃぁないですかぁ」
寝起きの伸杉の視界に映り込んだものは、とても良いものとは言えなかった。
いくら山賊とは言え、十数人の人間によって形勢された死体の山と血の海はなんとも呼べないおぞましさがあった。
「あ......え.............」
山賊は政至によって全滅されたかと思っていたが、政至の足下には、若い山賊が腹と首から血を流しながら放心状態となっていた。
いったい、政至に何をされたのだろうか?
すると、悪そうな笑みを浮かべながら政至は伸杉に近付いてきた。
「くははは! そんなことより、ほれ伸杉! 御主も飲め!」
と、何やら赤い液体が入った盃を伸杉に突き出した。
「......なんですこれ?」
「うむ! 余が造った『血酒』じゃ! 中々に格別であるぞ!」
「......要らないですよ、そんな気色悪いの」
確かに気色悪いが、伸杉はよく自分の主に対してここまではっきりと自分の意思を表明できるものであると、逆に感心してしまう。
本当に何故今まで切腹にならずに済んでいるのか謎である。
「むぅ、そうか? 折角余が陸奥の酒と賊の血で拵えた一品だと言うに......」
文句を垂れながら、政至は手に持っていた盃を飲み干した。
「ところで伸杉よ。折り入って相談があるのじゃが......」
「駄目です」
「よいであろう! て、まだ何も言うておらぬぞ?」
「駄目です。どうせあそこで放心してる賊の少年を城で『飼いたい』とか言うのでしょう? あれで何人目ですか?」
「うーん......五十六人目?」
「そのほとんどをまったく世話をしないではありませんかぁ、代わりに世話をするわたくし達の身にもなってもらいたいですなぁ」
「よ、よいであろう! 確かに世話は疎かにしておるが、十分に愛でているであろうに!」
二人の会話を聞く限り、まるで人を犬や猫みたいな扱いで飼いたいと言っているようにも聞こえる。
いや、実際そうなのであろう。
「駄目です。そんなことよりさっさと出羽に向かいましょう。このままだと日が暮れますよ?」
「むぐぅ、この石頭めぇ......あ! あれはなんじゃ!?」
「ん?」
政至が急に伸杉の背後を指差し、伸杉は自身の背後を確認するために振り返った。
すると、政至は何やら小声でぼそぼそと、呟き出した。
「......今じゃ『蜘蛛』よ。城まで送ったらすぐさま戻ってくるのじゃ 」
「.......御......意」
政至が小声でそう呟くと、どこからともなく女性の小さな声が聞こえたかと思うと、未だ放心状態が続いている山賊の少年が岩影の中に吸い込まれ、見えなくなってしまった。
「......何もないじゃないですかぁ」
「お、おや? 見間違いじゃったかな?」
視線を政至に戻した伸杉は、政至の変化にいち早く気付いた。
何故なら、こちらに目を合わせようとしないからである。政至の事をよく知っている伸杉の経験上、これは何かを隠しているな、と思ったが敢えて見て見ぬ振りをした。
「......ふぅ、なら、さっさと馬に乗ってくださいませ」
「う、うむ! では、 行くか!」
今の政至は、先程まで山賊達に見せた凶悪さは薄れ、逆に犬猫を飼いたいけど親の許可を得られず、仕方なく隠れて飼っている子供のような状態であった。
そして、二人は起きたばかりの馬に乗り、再び出羽へと向かった。
「......ところで、一緒に居た筈の『女郎蜘蛛』は何処に行ったのですか? 彼女の気配がまったく感じませんが.....」
「ぎくぅ! な、なんじゃ御主、あの蜘蛛の気配を感ずる事が出来たのかや!?」
「え? 出来ませんよ? 適当に言っただけなのに......本当に居ないんですか?」
「......お、御主.....」
二人は山賊達の死体をその場に放置し、目的地である出羽へと急ぐのであった。
凶宴開幕まで後四刻(八時間)。
■
同時刻。
江戸近辺の海道。
そこには、江戸へと向かう一台の馬車が走っていた。
「いんやぁ、おめぇさんのお陰で無事、将軍様に献上する刀が完成したっぺよぉ」
「へへ、なぁに、元々俺も江戸に用があったからな、お安い御用よ!」
馬車を走らせる男性と話すのは、修験装束を身に纏い、額には特徴的な赤い布が巻かれた少年。
去年の長月(9月)、信濃の地で烏乃助とうずめが出会った少年でもあり、火の神通力『怒火』の元所有者『鈴鳴 源国』であった。
どうやら、鈴鳴は現在、馬車の荷台に乗って江戸に向かっているようであった。
「やれやれ、『鈴にぃ』はすぐ調子に乗るなぁ、そんなんだといつか足元掬われるぜ?」
どうやら、荷台には鈴鳴以外にもう一人居たらしく、その相手は鈴鳴の向かいに座っていた。
その相手は、鈴鳴より年下っぽい少年で、鍛冶屋のような格好で、頭にはそのボサボサの髪を覆い隠すように布が巻かれ、上は着物の上に襷が巻かれ、襟から覗かせる胸には晒が巻かれ、下は動きやすいように裾を上げ、その細い足を露出させており、何より特徴的なのがそのつり目である。
「なっははは! 足元掬われる? 上等! そう言った挫折を味わえば味わうほど俺は強くなれるんでなぁ、別にそれでもいいぜ! なっはははは!」
「......はぁ、まじ鈴にぃ能天気だなぁ」
「ははは! そう言うなよ『いおり』」
「いいや、言うね。鈴にぃは世間知らずだから言えるんだ、今からオレ達江戸に行くんだよ? 都会だよ? 都会の連中は平気で人を騙す奴等が多いと聞くぜ? 嘗められたら足元も金も根こそぎ取られちまう」
「おいおい、いおり。噂や先入観に囚われるな、て口酸っぱく言ってるだろぉ? それに鈴鳴の坊っちゃんも案外しっかりしてるし、そうそうに騙されるこたぁねぇっぺよ」
と、今度は馬車を走らせる男性が二人の会話に入ってきた。
この男性の名は『国虎』。
相模国(神奈川県)のとある集落に住む刀工で、鈴鳴の父親『鈴鳴 鉄国』とは修業時代の同期で、江戸に向かっていたが道に迷って路頭に迷っていた鈴鳴を拾い、彼を相模の集落に招いたのが三ヶ月前。
しかし、ちょうどその頃、国虎はその腕前を買われ、幕府将軍に献上する名刀の製作に真っ最中だったのだが、それを聞き付けた他所の山賊衆がそれを強奪しようと襲撃してきたが、鈴鳴と集落の住人達が協力し、三ヶ月もの間、山賊衆との攻防を繰り広げていたのである。
そして、先月末。刀の製作が完了するのと同時に鈴鳴は山賊衆の頭目を単身で倒す事に成功し、山賊衆を撃退することが出来たのである。
山賊衆との攻防を終え、鈴鳴は国虎とその息子『いおり』と共に、命懸けで製作した名刀を幕府に献上する為に現在、三人は江戸へと向かっていた。
「ところでさぁ、鈴にぃは本当にあの『白羽 時定丸』に会うのか? てか会えるの?」
「そういやそうだっぺなぁ、時定丸は結構有名なお侍さんだで? そうそうに会えるかねぇ」
「......確かに会えるか分からねぇ......でも何がなんでも会わなきゃいけないんだ。......約束したからな」
そう、鈴鳴は信濃で出会った烏乃助に頼まれたのである。
『そうだな......じゃあこう伝えてくれ『近いうちに決着をつけよう』てな』
そして、真の最強を知るためにも、彼は何としても時定丸に会わなければいけないのである。
そしてもう一つ━━。
「いんやぁ、にっしてもぉ鉄っちゃんが生涯最後に造ったその『鉄の真相』とか言う槍。それが何なのか知らねぇが、そう言うのに詳しい知り合いが江戸に居るからそいつに聞いてみるといいだぁ」
「あぁ、悪いな国虎さん」
鉄の真相、鈴鳴の父と祖父が幕府に焼き払われた村の中で命尽きるその瞬間まで打った一振りの槍。
鈴鳴の父『鉄国』が死に際に言った一言が何なのか知るためにも、鈴鳴は江戸に向かうのであった。
『こ...この槍は......鍛冶屋の『希望』が秘められている...だ......だが...その希望は...人には過ぎた物...だ......だから...たの......む......』
「......」
「あれ? どうしたんだ鈴にぃ、ガラにもなく神妙な顔しやがって」
「......ああ、実はな......小便がしたい......んだ」
「は?」
「い、いやほら! さっき茶を飲み過ぎちまってよぉ! まじヤバイんだ! わ、悪いが国虎さん! 馬止めてくれ馬! やっべー漏れるぅぅぅ!」
「......い、今から江戸に向かうのに締まらね~」
「はっはっは! 慌てる事なかぁ、ほれ、そこでゆっくりしてきなぁ」
「わ、悪いね。はは......」
本当は嘘である。場を茶化してしまったが、本当は鈴鳴は今複雑な心境となっていた。
なんせ今から親の仇でもある幕府の懐に入るわけだからである。
「......あ、まじで出したくなった.......ふぅ~」
「ところでぇいおり、おめぇはしなくていいのか?」
「バ、バッキャロー! 父ちゃん鈴にぃの前で何を......ごにょごにょ」
いおりは、何やら男なのに女の子のような恥ずかしがる仕草をした。
そして、鈴鳴は馬車に戻り再び江戸へ向かうのであった。
その後、鈴鳴一行は無事江戸に着き、そして、鈴鳴はそこで自身が知りたい事の全て、更にそれ以上の事を知ることとなるのだが、その結果、
鈴鳴は二度と江戸から出ることが出来なくなってしまうのであった。
第六話「こころきずつく」第三章『最凶たる悪鬼』に続く。
うへぇ、今月中に六話終わらせたかったぁ......。
ちなみに第六話から登場した『伏真 政至』様の肩書きは次回明かされます。
ちなみに、政至様が山賊の少年にアッー♂んな事をしちゃいましたがぁ、今後この人が登場する度にエロい事、もしくはグロい事が起こる可能性があるため、カットを多用すると可能性がありますが、ご了承下さい。
それでは次回をお楽しみに~............く、では此度の演目はこれにて閉幕とするかのぅ......ん? おい伸杉や、幕を下ろす紐はどこじゃ?




