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洋館

最近ちょっと気になってる人がいる


世田谷の一軒家で開かれるお菓子教室の同じ作業台でお菓子作りをする樹さん

歳は私よりひとつ下の30歳


私の通っているお教室は、七十近い先生がご自宅で開催されている

今風の洋菓子というよりは昔ながのどっしりした洋菓子を作る


私はそのレシピよりも先生のお宅のお台所とダイニングの雰囲気が大好き


ロココ調のちょっと煤けた家具が縦のストライプと薔薇の花が組み合わさった壁紙とぴったりあっている

輸入物のアンティークのシャンデリアも



なにより月二回で二万二千円というお月謝のせいで貧乏人が入り込んで来ないのがいい


12畳ほどのダイニングでマホガニーのテーブル2つを作業台として二組に別れて作業する


マダムたちテーブルは四人


私達のテーブルは樹さんが入ってくるまでは三人だった


メンバーは私の中学からの友達の雪乃ちゃんとそのお友達の真帆子さん

雪乃ちゃんとは中学受験の説明会の時に知り合ったから、厳密に言えば小学生の時からの知り合い

中学学から大学までずーっと一緒だった


雪乃ちゃんは大学を出て○○航空のグランドスタッフをしていたんだけど4年前に会社を辞めた後、お兄さんの立ち上げたマタニティ用品のレンタルの会社の非常勤の役員をしている


真帆子さんは雪乃ちゃんの○○航空時代の一つ上の先輩で二年前からマナー教室や個人の英会話の先生をしている

甲状腺の病気にならなかったら今もCAを続けていただろう


私は生命保険会社に就職したんだけど、なんか合わなくて半年で辞めてその後はずっと家事手伝い


たまに短期留学なんかをして過ごしている

資格もいっぱいとった

ヨガのインストラクターとかインデリアコーディネーターとか


船舶の二級免許なんかも持っている

気象予報士は…挫折したけど


三人とも割と時間が自由になる


だから金曜の三時からという中途半端なこの時間帯のお教室に参加できる


私は雪乃ちゃんと真帆子さんと過ごしている時が一番素でいられる気がする

家族といる時よりも


二人とも美人だから見てて目の保養になるし、二人も私のことをそう言ってくれている


三人で黙々とお菓子を作るこの時間が幸せ


だから来月から男の人が入るって聞いた時、嫌だなーと思った

きっと私たち作業台のグループに入る


雪乃ちゃんをちょっと恨んだりした

先生がいいって言ってたのにこのお教室のホームページなんか作るから…




それにしても先生もよく受け入れたなあ

割とこのお教室に会わなそうな人はやんわり断っていたのに男の人を入れるなんて



私が初めて樹さんを見た時の印象は…


背が高くて顔が小さくて、姿勢がいい

なんとなく色気のある人

顔は…イケメンと言うよりはハンサムと言った方がいいかなぁ?


最初は芸能関係か水商売の人かと思った


だってこの時間に参加できるって…


でも普通のサラリーマンなんだって

半日有給使って通ってるんだって

たしかにスーツ着て通ってる


仕立のいい高級感のあるスーツ…


このお教室はやっぱりネットで見つけたらしい

ふとお菓子作に挑戦してみたくなったとかで教室探しているときに


少し朝比奈麗子お菓子教室に興味を持ってどこらへんかなと場所を下見に来た時、この家を見てすっかり気にいっちゃったんだって


先生が相続されたこのご実家本当に素敵だもの


敷地七十坪ほど


お家は多分五十坪くらいかな

この辺にしてはこじんまりしているけど昔の精一杯の洋風建築が情緒があって素敵


家の前のエントランスに鉄製のゲートがあってつる薔薇を絡ませてある

玄関に続くアプローチには古い煉瓦が敷かれている

隙間から生えているたんぽぽなんかがかわいい


ちょうど樹さんが家を見ているときに先生が玄関から出ていらっしゃって

少しお話をされたらしい


先生がこっそり教えてくださったけど、樹さん、先生が女学生時代に好きだった人に似てるんだって

都電でいつも見かけていた詰め襟の学生さん

片想いだったらしいけど


お電話で申し込まれていたらたら多分お断りしていたと思うわとお上品に笑ってらした


なるほど、そういう理由か



この人随分おしゃれだなと思ったのは持ち込んだスリッパを見た時


樹さん先生が用意してくださってある花柄のゴブラン織のスリッパ履くのに抵抗があるみたいで自分でスリッパを持ってきている


スーツに合わせて濃紺のスリッパ

無地だけどよく見ると織りで細いストライプになっている


ただこの人見かけが人に与える大人っぽい印象と人格がかけ離れている気がする…


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