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魔拳、狂ひて  作者: 武田道志郎
第七話『滅掌の延慶』
90/310

滅掌の延慶 十二

【これまでのあらすじ】

 衛は、延慶に対して不意打ちを仕掛ける。

 それを受けた延慶は、『この男ならば、自分を楽しませてくれるかもしれない』と、衛に対する認識を改めるのであった。

 その時―――衛はふと、風を感じた気がした。

 そして次の瞬間―――衛の目と鼻の先に、延慶の顔が出現したのである。

「―――っ!?」

 驚愕する間もなく、延慶の右拳が襲い掛かる。

(速い―――!?)

 衛は左手を使い、その突きを辛うじて受け流す。

 直後、左掌の強襲。

 真っ直ぐに飛んでくるそれを、衛は右手で防ごうとする。


 ―――が、突如、軌道が変わった。

(何―――!?)

 真っ直ぐに飛んでくる掌は、減速することなく、カーブを描くような軌道に。

 そして次の瞬間、衛の右頬の辺りを捉えていた。

「つッ―――!!」

 衝撃。

 凄まじい威力に、意識が飛びそうになる。

 それを何とか堪え―――


「!?」

 胸元に違和感。

 延慶が両手で、衛の胸ぐらを掴んでいた 。

「フンッ!!」

「ぐぅっ!?」

 延慶が下に思い切り引っ張る。

 凄い力であった。

 堪え切れず、衛の姿勢がやや前傾になる。

 同時に、延慶が衛の右腕を掴む。

 そして、背を向け、衛の懐に入り込んだ。


(背負う気か―――!?)

 そう思った瞬間、衛の体が浮かび上がりそうになる。

 予測通りである。

(させるかよ!)

 すぐさま、衛は自ら地面を蹴る。

 延慶を中心に、半円を描くように宙を舞う。

 そのまま、延慶の正面に着地をし―――


「ぐうっ―――!?」

 その時、右脇腹に衝撃。

 延慶の掌打が入っていた。

 更に、右頬に強烈な拳撃が叩き込まれる。

「があっ!」

 衛の体が、アクセル全開の乗用車にはねられたかの如く吹き飛ぶ。

 地面を数メートルほど転がり、両足でブレーキをかけ、何とか勢いを打ち消す。

 そして、ゆらりと立ち上がった。


「ほう、あれを受けてまだ立ち上がれるとは・・・。頑丈な奴よ・・・!」

 ニヤリと笑いながら、延慶が衛に言葉を掛ける。

 衛はそれを耳にしながら、ダメージがどれほどのものかを確認しようとする。

「・・・」

 口の奥が酷く痛む。

 鉄の味がする。

「・・・っ―――」

 舌の先で、右奥の歯茎に触れる。

 歯茎が裂け、砕けた親不知が中から飛び出してしていた。

「っく―――」

 衛はそれを吸い出す。

 一瞬、刺すような痛みが走る。

「ぶっ―――」

 それを堪えながら、地面に向かって、吸い出した歯を吐き捨てた。


「・・・やるじゃねえか。歯医者代が浮いたぜ」

 口の端を拭いながら、衛が軽口を叩く。

 その反応を見て、延慶は愉快そうな笑い声を挙げた。

「ムハハハハハ!そのような戯れ言を二度とほざけぬよう、歯を全てへし折ってやっても良いぞ?」

「その必要はねえよ。今度は俺の番だ」

 そう返しながら、衛は再び、静かに構え直した。

 次の投稿日は未定です。


【追記】

 次は、火曜日の午前10時に投稿する予定です。

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