魔拳参上 二十五
【これまでのあらすじ】
死の淵から甦り、凄まじい力を以て、遂に柳善を打ち倒した衛。
しかし、その直後、衛は再び倒れてしまう───
20
気が付くと衛は、光の中に佇んでいた。
何度も夢で見た、あの虚無の闇ではない。
暖かく、優しい光に満ちた空間であった。
目の前には女性がたたずんでいた。
相変わらず、胸元から上は光によってぼやけていたが―――彼女が最愛の女性であるということが衛には分かった。
(・・・あれから、何年経っただろうな)
衛は、僅かに目を伏せながら語り掛ける。
そうしながら、この数年間のことを振り返っていた。
(色んなことがあったよ。お前を助ける為に、その為の力を手に入れる為に、色んな仕事や闘いに身を投じて来た)
そこで衛は言葉を区切り、右拳を思い切り握り締めた。
(・・・だけど・・・俺はまだ、弱い。力も心も、まるで弱い。お前を助ける為には、もっと強い力が必要だ。・・・俺はまだ、そこまで達していない)
その時、衛の目が見開かれた。
その瞳には決意が―――強い覚悟が宿っていた。
(でも、俺は諦めない。お前を助ける為に、もっと強くなってみせる。そしていつか・・・お前を助けてみせる。『あの時』のような、無様な姿は晒さない。必ずお前を救い出す)
衛がそう言い終えると同時に、その女性を包む光が、更に強くなる。
その光の中へと、彼女の姿が消えていく。
それを見ても、衛が動揺することはなかった。
女性が消えていく光景を、顔を背けることなく見つめていた。
(だから、待っていてくれ)
衛が再び、言葉を紡ぐ。
彼女を安心させるように。
己の心に、一層刻み込むように。
(例え拳が砕けても、必ずお前を助け出す)
衛のその言葉に―――女性が静かに、微笑んだ気がした。
そして女性の姿は―――暖かな光の中へと融けていった。
やがて、衛を包む光も輝きを増していく。
光の柔らかい温もりを感じながら、衛の意識は、己が歩むべき世界へと戻っていった―――
次回で、このエピソードは完結です。
投稿する日程はまだ決まっておりませんが、目途が立ち次第、この後書きの欄に追記させていただきます。
【追記】
大変お待たせ致しました。
次は、金曜日の午前10時に投稿する予定です。
遅くなりまして申し訳ございません。




