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魔拳、狂ひて  作者: 武田道志郎
第六話『魔拳参上』
59/310

魔拳参上 八

5

「・・・どうやら、また動き出したようね」

 双眼鏡を覗き込みながら、シェリーはそう呟く。

 彼女が見ているのは、とあるマンションの203号室。

 たった今、魔拳とその助手の妖怪達が、慌ただしく飛び出してきた部屋である。


 彼女は今、衛達が住んでいるマンションの向かいの、また別のマンションの屋上にいた。

 天気は雨であり、黒々とした雲が日の光を遮り、陰鬱とした空気を漂わせていた。

 当然、屋上には屋根などない。

 雨に打たれながらも、彼女はレインコートを身にまとい、魔拳の監視を続けていた。

(逃げられてしまった残りの妖怪を追うのかしら・・・?それとも、また別の仕事?)

 眉をひそめながら、シェリーが思案する。

(まぁ良いわ。どちらにせよ、私のやることは変わらない。彼を追いかけて、引き続き監視を───)


 その時。

「───!?」

 シェリーは、背後に何者かの気配が蠢くのを感じ取った。

 彼女は驚いていた。

 誰が来てもすぐに対応出来るよう、彼女は周囲への警戒を怠ってはいなかった。

 しかし───そんな彼女の背後に、突如、何者かが出現したのである。

「誰───!?」

 シェリーが叫びながら振り向く。

 同時に、腰のホルスターから拳銃を抜き、その人物に突き付けた。

 そこに立っていたのは───


「・・・・・」

 白いローブをまとった人物であった。

 中肉中背である。

 顔は分からない。

 ローブのフードをかぶっており、影になっていてよく見えない。

 見た所、人間のようであった。

 しかし、シェリーにははっきりとした確証が持てなかった。

 その人物の身体から、彼女が僅かに、妖気のようなものを感じ取った為である。

 人間なのか、妖怪なのか───どちらなのか、それは分からない。

 ただ一つ言えるのは、その人物が、彼女の味方ではないということだけであった。


「女───」

 その人物が、ゆっくりと口を開く。

 そして、フードに手をかけた。

「一緒に来てもらおう」

 そう言いながら、かぶっていたフードを下ろした。

 30代半ばほどの、短髪の男性であった。

 その人物の目は虚ろで───意思や感情が、全く感じられなかった。


 次は、木曜日の午前10時頃に投稿する予定です。

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