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魔拳、狂ひて  作者: 武田道志郎
第六話『魔拳参上』
56/310

魔拳参上 五

3

 寂れた教会の中に、1人の男が佇んでいる。

 白いローブ姿であった。

 首をもたげ、壁に掛けられた十字架を仰ぎ見ている。

 顔はローブのフードに隠れており、口から上は、影になって見えない。

 どんな顔をしているのか───そんなことは、全く分からなかった。

 一見すると、この教会の神父のようにも見えるかもしれない。

 だが、その男がまとう気配は、聖職者が放つそれとは真逆に位置するものであった。


「ササヤキ様───」

 背後から聞こえた声───己を呼ぶ声に、ローブの男が振り返る。

 その視線の先には───同じようなローブをまとった、2つの人影があった。

「只今、帰還致しました」

 片方の人影がそう告げ、恭しく跪く。

 もう片方の男も、同じく跪いた。


「ご苦労。どうでしたか・・・?」

 ササヤキ様と呼ばれた男が、初めて口を開く。

 静かな口調の中に、怪しげな気配が混じっていた。

「は。監視を続けておりましたが、リーダーの化け狸は、魔拳の手によって討伐されました」

「残る2匹は、現在も逃亡を続けておりますが、どちらも酷く負傷しています。魔拳に討たれるのも時間の問題でしょう」

 2つの人影は、ただ淡々と説明を行う。

 声には、感情が全くこもっていない。


「ク・・・クク・・・」

 2人の返答を聞き、ササヤキは、抑えたような笑い声を漏らす。

「素晴らしい・・・実に素晴らしい・・・。魔拳・・・噂に違わぬ、強い力を秘めた退魔師のようですね・・・」

 楽しげな調子で呟くササヤキ。

 その言葉を聞いても、2人は何の反応も示さない。

 相槌も打たず、同意もしない。

 機械のように、命じられたことのみを遂行する───傍から見れば、そんな印象を抱いてしまうような姿であった。


「残りの2匹は、今どこに?」

 再び、ササヤキが問い掛ける。

 それに対し、ようやく2人が口を開いた。

「現在、隠れる場所を求めて逃走を続けております」

「調べて見たところ、彼らが拠点としている森があるようです。おそらく、そこを目指しているのではないかと」

「ふむ、なるほど・・・」

 2人の答えを聞き、ササヤキが口元に手を当てる。


 しばらく考え込んだ後、ササヤキは再び、2人に命令を下した。

「では、彼らを迎えに行くとしましょう。お前達、付いて来なさい」

「は、ササヤキ様───」

「承知致しました───」

 僅かに頭を下げ、同じように立ち上がる。

 ロボットのような姿であった。


 その時、2人の背後の扉が、音を立てて開いた。 

 ササヤキが、そちらを見やる。

 教会の外には、3人と同じ、白いローブをまとった人物が、何人も佇んでいた。

 5人───10人───20人───否、もっといるかもしれない。

 それを見て、ササヤキの口元に微笑が浮かんだ。

 妖しい気配の漂う、不吉な笑みであった。


 次回の投稿日は未定です。目途がつき次第、後書きとツイッターで報告させていただきます。


【追記】

 次は、月曜日の午前10時頃に投稿する予定です。

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