魔拳参上 四
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その光景を、遠く離れた場所から見つめる者がいた。
そこは、25階建てのビルの屋上であった。
「あれが・・・魔拳の力・・・」
その人物が呟く。
夜の闇に煌めくブロンドの長髪。
レザースーツに身を包んだ、豊満な肉体。
女性であった。
高性能かつ多機能な双眼鏡を通して、衛とマリー、そして舞依を覗き込んでいる。
彼女はここ数日、衛達を遠くから監視していた。
時には変装をし、彼らに近い距離まで接近したこともあった。
彼らが、彼女が監視していることに気付いた様子はなかった。
当然だ───彼女はそう思っていた。
いかに彼らが凄腕の退魔師と言えど、彼女は潜入と尾行のプロフェッショナルである。
彼らに気付かれないよう、気配を消して近付くことなど造作もない───そう思っていた。
「・・・」
無言で双眼鏡を下ろす。
白く美しい顔が、その下から露わになった。
東洋人の顔立ちではない。
西洋人のそれであった。
「・・・・・青木、衛・・・・・」
その女性が───シェリー・タチバナが呟く。
彼女が漏らした言葉には、畏怖───そして、敬意の響きが込められていた。
ここ1ヶ月程、毎日投稿を続けておりましたが、ストックが少なくなってきた為、次回から不定期投稿に戻します。
次の投稿日が決まり次第、後書きに追記、もしくはツイッター上で報告していく予定です。
ご迷惑をおかけいたしますが、ご了承下さいます様、宜しくお願い致します。
【追記】
次回は、日曜日の午前10時頃に投稿する予定です。




