夢幻指弾 八
7
パーカーの男は、寂れた道を歩きながら、コンビニで買ったホットドッグを頬張っていた。
しっとりとしたパンと安っぽいソーセージの食感、刺激的なケチャップの味が口の中で混ざり合う。
くちゃくちゃと咀嚼し、左手のコーラに口をつけ、一息に喉の奥へと流し込む。
そのまま勢いに任せ、コーラを全て飲み干し、大きなゲップで炭酸を吐き出した。
──ひとまず、空腹は満たされた。
超能力を使うには、まずエネルギーの補給が第一である。
何より、腹が減っては戦は出来ぬということわざがある。戦は人を殺すもの。つまり、人を殺す前には、しっかりと腹ごしらえをしなければならない。男はそう考えていた。
今日までに殺した数は12人。
そろそろ、顔が割れてもいい頃だ。
ここからは、慎重に行動しなければならない。
ゴールに辿り着いたわけではない。まだ走り出した途中なのだ。
男は己にそう言い聞かせながら、道を歩き続けた。
(……さて、次は誰にするか?)
男は歩きながら、己が仕留めんとする新たな獲物について、想いを馳せ始めた。
(そういえばさっき、派手な格好をしたガキ共が歩いてやがったな)
ふと立ち止まり、つい先ほど見かけた、二人の少女のことを思い出した。
一人は金髪のドレス姿。もう一人は黒い髪の着物姿であった。
(次は、あいつらを狙ってみるかな)
男はそう決心すると、少女たちが向かおうとしていた場所へ再び歩き始めた。
──先方からのオーダーは、『サンプルを使用して、一人でも多く殺す』こと。
対象は誰でもいい。
だが、強いて言うならば、『民衆が知ったら怒り狂うようなことをしてほしい』らしい。
男は、そのオーダー通りに殺した。
女子供であろうと、容赦なく殺した。
結果、世間は犯人に対して激しい怒りを露にしている。
最高の仕事だ。
能力を思う様使うことが出来、しかもサンプルのおかげで強くしてもらえる。
その上、人を殺すだけで金がたんまりと貰える。
良いこと尽くしだ。これほどまでに楽な仕事はない。ストレス解消にももってこいだ。
──もっとだ。もっと狩らなければ。
この素晴らしい仕事を、もっと遂行しなければ。
男はそう思いながら、口の端を思い切り吊り上げて笑った。
「……せっかくだから、今回はダブルプレイにしてみるか」




