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魔拳、狂ひて  作者: 武田道志郎
第十二話『妖花絢爛』
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妖花絢爛 二十四

「……!」

 衛は右手を素早く動かし、迫り来る蔦の鞭を掴み取る。

 そして、掴んだ蔦を、両手で思い切り引っ張った。


『!』

 枯人の体が宙に浮き、引き寄せられる。

 衛は、その胸部を目掛け──

「せいッ!!」

 ──踏み込みつつ、渾身の右足刀蹴り。

 飛来していた枯人の胸部が砕け、五体が周囲に飛び散った。


 直後、衛は二体目の枯人へ迫る。

 一息で間合いを詰め──

「シッ──!」

 ──素早く左直拳(ストレート)

 更に、強烈な右フックをぶち込む。


『!』

 枯人は、防御の姿勢すらとれず、首を引き千切られて絶命。

 体のみが残り、ふらふらと揺れながら、その場に立ち尽くす。


「せやッ!!」

 次の瞬間、衛は背後に向かって、左の後ろ蹴りを放った。

『!』

 三体目の枯人に命中。

 後方へ弾け飛び、後続していた枯人の群れに衝突。数体が将棋倒しとなった。

 同時に、首をもがれた二体目の枯人が、乾いた音を立てながら、ようやく地面に崩れ落ちた。

 その時点で衛は、他の枯人を標的に定め、殴りかかっているところであった。


「でえィッ!!」

 ──その頃雄矢は、眼前の枯人の頭部に向かって、手刀を降り下ろすところであった。

『!』

 枯人の頭部がぱっくりと割れ、そして砕け散る。

 中に詰まっていた、干からびた綿のようなものが舞い、地面に散乱した。


 雄矢が倒したのは、これで三体目。

 前の二体は、頭部を砕かれ、地面の上に転がっていた。

 三体とも、一撃必殺であった。


『!』

 四体目が、雄矢に蔦の鞭を浴びせかける。

「フンッ!!」

 雄矢はそれを、左の上段受けで勢いよく弾き飛ばす。

 直後、勢いよく間合いを詰め──

「おおッ!!」

『!』

 ──強烈な右の逆突きを叩き込む。

 砲弾のような正拳を喰らった枯人は、衝撃で全身を木屑へと変えられ、宙を舞った。


 直後、雄矢は素早く反転。

 顔を向けた先には、背後から雄矢を狙おうとしていた枯人の姿が。

『!』

 その枯人は、雄矢の脚部を狙って蔦を伸ばした。


 しかし、そこには既に、雄矢の姿はない。

 蔦が伸びる直前に、雄矢は枯人に向かって跳躍していた。

「せいやァッ!!」

『!!』

 猛々しい咆哮と共に放たれる跳び足刀蹴り。

 それを鼻面にぶち込まれた枯人の頭部は、不揃いの木片と化し、周囲に四散した。


「そっちよ、舞依!」

「よし!」

 雄矢が五体目を仕留めた直後、マリーと舞依の声が響いた。

「ぬぅん……っ!」

 呻くような声と共に、マリーが妖気を操る。

 同時に、周囲に転がっていた無数の小石が、ゆっくりと浮かび上がった。


「ゆけィッ!!」

 舞依の鋭い掛け声。

 それと共に、浮遊していた小石が急加速。

 前方から迫るの三体の枯人を、小規模の流星群が撃ち貫いた。


「よし、命中! これならひとたまりも──」

「いや、まだじゃ!」

「え? ……あっ」


 ──流星群を受けた枯人のうち、一体は頭部を破壊され、その場に崩れ落ちた。

 しかし、他の二体は、まだ立っていた。体を貫かれてはいたが、まだ肉体の原形は留めていた。

 直撃させた石が小さすぎたため、深刻なダメージを与えられなかったようだ。


「舞依、直接枯人に念力をかけて! それを奴らに投げつけるか、地面に叩きつけるのよ!」

「そ、そうか! よし、やってやるわい!」


 シェリーの指示を受け、舞依が妖気を練り始める。

 そして、生き残っている二体の枯人に向かって、両手を掲げ、妖気を注ぎ込んだ。

「ふん……ッ!!」

 舞依が歯を食い縛り、集中する。

 直後、二体の枯人が、宙にふわりと浮かび上がった。


 ──二メートル。

 三メートル。

 四メートル。

 両手を上へ挙げる舞依の仕草に従い、枯人たちは念力によって、ゆっくりと上昇していく。


 そして、五メートルに到達し──

「どっ……せいッ!!」

 ──舞依が両手を降り下ろした瞬間、枯人は急加速をつけながら落下。

 大地へ向かう隕石の如く、地面に勢いよく叩きつけられ、バラバラに砕け散った。


「よっしゃ、やったぁ! ……って、ギャーッ! 舞依、後ろ後ろ!」

「何!?」

 マリーが叫び、舞依の背後を青ざめた顔で指差す。

 舞依が振り向くと──更に二体の枯人の姿が。

「しまっ──」


「おおおっ──!!」

 枯人が手を振り上げたその時、舞い散る花びらを弾き飛ばしながら、怒号と共に何かが飛来した。

 ──衛だ。

 凄まじい速度で加速をつけ、舞依を襲おうとする枯人に跳び膝蹴りを叩き込み、頭部をスイカのようにに打ち砕いた。


「はァッ──!」

 同時に、もう一つの人影が、埋められた人々の頭部を避けながら突撃してきた。

 ──雄矢だ。

 もう一体の枯人の顔面に、左の順突き。

 そして──

「チェストォォッ!!」

 ──がら空きの胴体に、渾身の逆突き。

 強力無比な一撃により、枯人の肉体は粉々に砕け、吹き飛ばされた。


「よ、よかったぁ……!」

「助かったぁ……!」

「油断するな、まだ敵はいるぞ!」

 へたり込むマリーと舞依に、衛は構えながらそう告げた。

 そして、鋭い眼光で、周囲を見回した。

 

 鋭い目の中には──こちらに向かってわらわらと近寄って来る、枯人の群れが映っていた。

 残りの枯人の数は、およそ三十体以上。

 更に、その後には桜花も控えている。

 決して安堵できるような状況ではなかった。


「クソ……半分近く削ったけど、まだまだ道は長ェな……!」

 衛と背中合わせになっている雄矢は、顔をしかめ、構え直しながら言った。

「ああ。けど、確実に敵を減らしてるのだけは確かだ。こっちが消耗し切る前に、殲滅させるぞ……!!」

「おう!!」

 両者は叫び、それぞれが反対の方向へ向かって突撃していく。

 そのまま、強く拳を握り締め、眼前の朽木の顔面を打ち抜いた。


「うおおッ──!!」

「でやァッ──!!」

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