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魔拳、狂ひて  作者: 武田道志郎
第十二話『妖花絢爛』
192/310

妖花絢爛 一

1

 ──闇の中に、一本の桜の木が立っている。

 ただの桜の木ではない。非常に大きい。高さは三十メートルを優に超えており、直径も八メートル以上はある。『大樹』と呼ぶに相応しい、巨大な木である。

 木の枝には、きらきらと輝く桃色の花が咲き、闇を照らしている。花の数は、一つではない。枝が見えぬほどに隙間なく咲き乱れている。満開であった。

 そんな巨大で煌びやかな桜が、闇に包まれた小さな丘の上で、壮麗に咲き誇っていた。


「……美しい……」

 その桜の根元に、一人の女が腰掛けていた。

 ──美女であった。肌は白く透き通っており、瞳と口からは、妖艶な雰囲気が漂っている。

 長い桃色の髪には艶があり、咲き誇る桜の花と同じ輝きを放っている。

 身にまとっているものは、桜の柄が描かれた着物だ。美しい女体によく似合う、これまた優美な着物であった。


「ああ……なんて美しいのかしら……。いつ見ても、本当に素晴らしいですわ……。この闇の中で咲き誇る、優雅にして華麗なる姿……。まさに、(わたくし)に相応しい桜……」

 美女は、桜を仰ぎ見ながら、そう呟いた。

 表情には、恍惚の笑みが浮かんでいた。


「……ですが……足りませんわ……」

 その時、女の口から、低い声が零れた。

 顔に浮かんでいるのは、変わらぬ笑み。しかし、その笑みに含まれているものは、先ほどまでのそれとは全く別のものであった。

「……まだ……まだ足りませんわ……。この桜は、未だ真なる美には達してはいない……。もっと……もっと美しく、優美にしなければ……。……そのためには……」


 女はそう呟くと、目を細めながら、足元を見下ろした。

「…………を……集めなければ……!」


 女の視線の先に広がっているのは、──妖しく輝く巨大な桜が根付いた、黒い地面。

 その上には──人間の首が、無数に突き立てられていた。


 

 お待たせして申し訳ありません。本日から再び、隔日で更新していきます。よろしくお願いします。

 次回は、明後日の20~21時頃に投稿する予定です。

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