祖父の現影 四十一
「……!」
明日香は、頭を思い切り殴り付けられたような感覚を味わった。
──何となく、予感はしていた。
ここに何故、死んだはずの祖父がいるのか。
その理由を、明日香は心のどこかで、既に悟っていた。
悟ってはいたが──
「……そん……な……」
──それでも、明日香はショックを受けていた。
心の動揺を、明日香は抑えかねていた。
しかし、そんな明日香の様子とは違い、廉太郎は冷静であった。
『……落ち着きなさい、明日香』
廉太郎は、表情を変えることなく、静かにそう言った。
『今私は、自分はつどいむしゃの一部だと言ったが、私の意識は、まだこうして残っている。まだ完全につどいむしゃになった訳ではないんだ。……それに、こうしてつどいむしゃに取り込まれたことを、私は結果的に良かったと思っているんだ』
「……えっ?」
明日香は、きょとんとした顔になった。
「どういうこと?おじいちゃん──」
祖父が何を言おうとしているのか分からず、明日香は自然にそう尋ねていた。
『……確かに私も、つどいむしゃに取り込まれた直後、絶望した。このままつどいむしゃと完全に一つになり、明日香を辛い目に遭わせてしまうのか……そう思った。だが、同時にこうも考えたんだ──つどいむしゃの一部となった今なら、つどいむしゃの謎について、何か解るかもしれない。そしてそこから憑依したつどいむしゃを引き剥がす方法や、つどいむしゃを倒す方法を見つけることができるかもしれない……とな』
「え……!?」
明日香は思わず、目を丸くする。
そんなことが、本当に出来るのか──そう思っていた。
『それから私は、すぐに行動を始めた。つどいむしゃの意識の海を漂いながら、こそこそと奴の霊魂の中の情報を探り続けた。休眠状態となっているつどいむしゃに気付かれぬよう、私の意識が完全に吸収されたように欺きながらな。……そうしている内に、一年近く時が流れていた』
「……方法は……見つかったの……?」
不安げに尋ねる明日香。
そんな彼女と向き合っている廉太郎は、まっすぐな眼差しで孫を見ていた。
そして、ゆっくりと──
『……何とか、な』
──力強く頷いた。
「……!本当!?」
『ああ。全ての謎は、つどいむしゃが霊魂を吸収する仕組みと、乗っ取る仕組みに隠されていたんだ』
そう言うと廉太郎は、一呼吸間を空けた後、まだ目を見開いたままの孫に説明を続けた。
次の投稿日は未定です。
今回は本文が短くなってしまい申し訳ありません。
次回は少々内容が長いかもしれません。




