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魔拳、狂ひて  作者: 武田道志郎
第八話『ハイパーターボアクセルババア』
118/310

ハイパーターボアクセルババア 二十

13

『ぎ・・・っひぃぃ・・・!』

 タエは混乱していた。

 訳が解らなかった。

 白い空間の中で、悟とかけっこをして遊んでいて、突然、辺りが夜の高速道路へと変わっていて。

 何故か、黒いスポーツカーと、それと同じくらいの速さで走る若者とかけっこをすることになって。

 何故か自分の目から凄まじい光が出たり、若者やスポーツカーと体をぶつけ合って。

 そして今は、それらから必死に逃走を図っている。

 もう、何が何だか解らなかった。

 何故、自分はこんなことをしているのか。

 何故自分が、こんなに恐ろしい目に遭わなければならないのか。

 出来ることなら、誰かに説明してほしい───背後から迫る悪人面の若者から逃げながら、タエはそう考えていた。

 しかし、何度そう思っても、タエに明確な答えを示してくれる者など、現れなかった。


 しかし、ただ一つ、解ることがあった。

 それは、彼女が今体験していることが、決して夢ではないということである。

 夜の空気。

 走る時の感覚。

 体に走る痛みと衝撃。

 そして、心の底から湧き上がる感情。

 それら全てが、自身が置かれている今のこの状況が、夢ではないことを───現実であることを証明していた。


 では───もし本当に、これが現実なのであれば───

『はァ・・・!はァ・・・!』

 ───これまで自分が走っていた白い空間は、一体何だったのか。

 今まで、夢の中を走り回っていたとでもいうのか。

 だとしたら、自分の孫と息子夫婦は、一体どうしたというのか。

 彼らは一体、どこにいるというのか───


『ぐッ・・・はぁ・・・!・・・ッ・・・ハァ・・・!!』

 苦しい。

 頭が痛い。

 腕も足も痛い。

 腹も喉も、肺も痛い。

 全身の至るところが痛い。

 もう立ち止まりたかった。

 全身をコンクリートの上へと投げ出し、全身を休めたかった。

 

 しかし───出来なかった。

 ここで立ち止まってはならない───タエの心が、彼女自身にそう告げていた。

 何故なら───ここで立ち止まってしまえば、もう家族に会えない気がしたから。

『っ・・・グ・・・!さ・・・とる・・・!悟・・・!!』


 タエの意識は───真実という名の終着点へと辿り着こうとしていた。

 次の投稿日は未定です。

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