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魔拳、狂ひて  作者: 武田道志郎
第八話『ハイパーターボアクセルババア』
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ハイパーターボアクセルババア 十六

【これまでのあらすじ】

 某県高速道路に、午前三時に出没する化け物───ハイパーターボアクセルババア。

 彼女の正体は、数年前、この高速道路で起こった事故の犠牲者であった。

 何とかして彼女を救わねば───そう決意した衛は、とある作戦を思い付く。

9

 そして───翌日の午前三時。

 件の高速道路の様子は、昨夜と何も変わらなかった。

 走行車両の少なさも、夜風の冷たさも。

 妙に静まり返った空気と、底知れぬ闇でさえも。


 そんな闇の中に溶け込むように、カウボーイが疾駆していた。

 車内に乗り込んでいるのは当然、二人の退魔師と、二人の妖怪である。

 左運転席にシェリー、右助手席に衛。

 そして後部座席には、マリーと舞依が座っている。

 座席の位置も、昨晩と全く変わっていない。

 まるで、昨晩の様子を録画し、そのまま再生したような───そんな光景であった。

 しかし、車内の空気は、昨晩とは大違いであった。

 満ちている闘気の質が、昨晩以上に濃厚であった。


「・・・本当に、やるのね?」

「ああ、やる。やってみせる」

 シェリーの問い掛けに、衛が頷く。

 凄まじい形相で前方を睨み付ける彼の体からは、はち切れんばかりの熱いものが生まれていた。

 それこそが、この車内を満たしている闘気の正体であった。

「ねえ衛・・・本当に大丈夫なの?」

「正直なところ、わしらはぬしの作戦を聞いた時、不安で堪らなかったんじゃ・・・。確かぬしは、成功率は低いと言っておったが・・・」

 マリーと舞依が、衛に訊ねる。

 表情は真剣そのものであったが、その顔からは、僅かに不安げな様子が漂っていた。

 しかし───その問い掛けを受けても、衛の顔に宿る決意は揺らぐことはなかった。

「まあな。だけど、もう方法はこれしかない。どんなに成功率が低くても、方法がないのならやるしかないさ」

 そう呟き、窓の外の景色に目を向ける。

 黒いスポーツカーは既に、アクセルババアが出没する区間を走っている。

 老婆の化け物がいつ現れてもおかしくない状況である。

 一同の発する空気に、僅かに緊迫感が混じり始めた───その時であった。


「・・・!」

 衛の瞼がぴくりと動く。

 妖気。

 後方から感じ取った。

「・・・来たぞ」

 サイドミラーを一瞥し、衛が呟く。

 そこには───

『げひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!』

 笑いながら疾走する老婆の姿が。

 アクセルババアである。

 昨晩、初めて遭遇した時と何も変わらない姿である。

 発狂状態になった時の、頭部からの激しい流血は見られなかった。

 やはり、まだ夢の中で孫とかけっこに興じているつもりのようであった。


『うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!』

 追い越し車線のアクセルババアと、走行車線のカウボーイの距離が徐々に縮まっていく。

 しばらくして、一体の化け物と一台のスポーツカーが横に並ぶ形となる。

『げぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ』

 アクセルババアは、隣を走るスポーツカーに向かって笑い掛けるが───

「「「「・・・・・」」」」

 車内の四人は、何の反応も示さない。

 昨晩、手を振って見せたマリーですらも、何も行動を起こさない。

 真剣な表情で、前を見つめていた。

 やがて、アクセルババアは正面へと顔を向け直す。

 そして、カウボーイを追い抜こうと、そのまま加速を続けていく。


「ここまで来たら、もうやるしかないわね・・・頼んだわよ・・・!」

 アクセルババアに追い抜かれた直後、気を更に引き締めながら、シェリーは呟く。

 それよりも更に気を引き締めた表情で、衛は頷く。

「ああ。・・・じゃあ、やるぜ」

 そして、助手席側の窓の開閉ボタンに、静かに手をかけた。

 今度こそ、アクセルババアを解放してみせる───そう強く思いながら、衛は力強く、そのボタンを押した。

 次の投稿日は未定です。目途が立ち次第、後書きに追記させていただきます。

 また、今日で魔拳の投稿を始めて1年が経ちました。

 ここまで続けることができたのも、皆様の励ましとお叱りがあったからこそだと思っております。

 皆様、本当にありがとうございます。

 最近、プライベートな事情で投稿頻度が落ち気味ですが、エタることはけっしてありませんので、これからもお付き合いいただければと思います。

 それでは皆様、これからも宜しくお願い致します。

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