生れ落ちました
どうもこんにちは、レナスフィア改め、相川詩織・・・再び改め、セレスティア・ルナ・アルテナです。
ついに新しい世界に生れ落ちました。そして眼下にあるのは川です。現在川に向かって落下しています。
しかも、ただの川じゃないです、激流です。
「生まれたばかりで死んじゃう!?」
とっさに防御魔法を構築、私の周りに球形に展開して着水しました。うう・・・結構衝撃がきました、痛い。
私は魔法に守られ、水に浮かんで流されています。
アルテナさん、何でこんな場所に産み落としたんですか・・・
《それはね、川に流されてきた正体不明のハイエルフの少女、というのを下流の村の人に印象付けるためだよー》
「!?」
いきなり頭の中に声がします、とうか考えを読まないでください!
《あはは、ごめんねー。言い忘れてたからちょっとだけ干渉しにきたんだよー。えっとね、水の精霊に溺れた後の救助を頼んであるから、ちょっと嫌だろうけどその魔法を消して軽く溺れておいてね♪》
・・・キャラ崩壊してないですか?アルテナさん。
というか溺れろってどういうことですか。ちょっとどころかすごく嫌です。
《一応さっきまではお仕事モードだったから、気にしたら負けだよ。セリーちゃんはこの世界の常識がまだないから、溺れて記憶喪失で名前以外思い出せないっ・・・ていう言い訳が出来るようにしたかったの》
そういえば、私はまだこの世界の常識が全く無いですね。
というか、今はお仕事モードじゃなくて純粋に楽しんでるわけですね。
いいですよ、分かりました。見事溺れて見せますよ。
《それじゃ、私はコレで帰る(?)ねー。がんばっ》
・・・初代のアルテナ女王ってこんな人だったんですね。
さてと、気が乗らないですが頑張って溺れることにしましょう。
私は防御魔法を消し、流れに身を任せ飲まれていきます。
想像以上に厳しい。頭はグラグラ揺れるし、水は飲んじゃう、鼻から水は入ってくるわでかなりの苦痛です。
変に溺れたくないという気持ちが無意識にあるのでしょう、気を失うことが出来ません。
どれくらい時間がたったのでしょう、流され方が変わってきたのに気づきました。
さっきまではモミクシャにされる感じだったのに、今は純粋に押し流されているような・・・。
そして、体勢を整えて前を向くと目の前にあったのは。
マイナスイオンたっぷりに舞い上がる水しぶき、そして虹、開けた景色・・・・・・そう、滝です。
「普通死んじゃうからー!!!!」
誰に向けたのか分かりませんが・・・いえ、アルテナさんに向けて叫びます。
とっさに防御魔法を展開して落下します。100m弱の落差がありますよ・・・本当に殺す気なんでしょうか・・・。
でもここで防御魔法を展開したことが地獄の始まりでした。
お風呂にお湯を張るときに、蛇口から勢いよく落ちる水に軽くて丸いものを近づけたことはあるでしょうか。
球形の物体は水の勢いを受け流し、不規則に回転しつつ流れ落ちてくる水の下にあり続けるのです。
先ほど展開した防御結界は『球形』、そして滝から勢いよく落ちている。
その結果は・・・
「ふぎゃあぉいfはjふぃえうんshあふ!?!?!?」
もう何を言ってるのかすら判断できない悲鳴が滝の生み出す轟音に飲み込まれる。
激しい滝の勢いそのままに、自分の張った結界の中でシェイクされていた。
セレスティアは気を失って防御魔法が消えるまで滝にもまれ続け、見かねた水精霊が助け出した頃には、立派に溺れていたのであった。