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星空の夜、再び

特になにもできずに運命の夜が来た。

今日は緊張して眠れそうにない、ちょっと気は引けたがこっそりとくすねて来た調理酒にいつも使っているワンカップの日本酒を飲みベッドに飛び込んだ。

この身体ではじめて飲むお酒、耐性が付いてないせいかフワフワなどという感じではなく、グラグラと視界がゆれ始めた。私はお酒が身体に合わないタイプなのかもしれない。そういえばお父さんがお酒を飲んでる姿を見たことが無いなぁ・・・下戸なのかも。お母さんは飲むのになぁ。

色々と考えているうちに詩織の意識は暗闇の中に消えていった。







ふと気が付くと、私はあの景色の中に居た。

先日見た景色と同じ。いや、オーロラの色が今日は赤い。前回は緑だったかな。

変わらぬ幻想的な風景を眺めていると、ガイの声が頭の中に響いてきた。


《今晩は、ようこそいらっしゃいました》


「こんばんは、やっぱりこの前のは夢じゃなかったんですね。」


《ええ、コレで夢ではなかったと信じてくださったでしょうか?》


ガイの声は今日も穏やかだ。

詩織はここで聞いた自らの死について親に話し、そして信じてもらえなかったことをガイに話した。


《そうですか・・・でも親御さんにしてみたら信じられない、というのは当たり前ですね。貴女は御両親に、いえ家族、そして多くの友人に愛されておいでです。死ぬと聞いて「はい、そうですか。それではこれからどうしましょう」と簡単に言えるはずがありません。》


「愛されている、かぁ。そういわれると嬉しいですけど、死ぬのが近いと思うとちょっと重いと感じちゃいます。なんかひどい人間ですよね、私。」


《そんなことはないですよ、他の方の気持ちを考えることが出来るからそう思うのでしょう?貴女は優しい人ですよ》


「そうなんでしょうか・・・」


《そうですよ。さて、そろそろ御両親も眠りにつきそうですが、ここにお呼びしますか?直接私から話しを聞き、夫婦そろって寝ているときに刻まれた記憶が一致すればいやおうも無くあなたの話が本当にあったことだと考えてくれると思います。》


「え、呼べるんですか?」


《はい、出来ます。どうしますか?》


ここに呼ばなければ両親は3ヶ月程度だけど平穏な日常を送れる。ただし、私が死んだ後はきっと深い後悔の念を抱いてしまうかもしれない。

だが、もしここに呼べば、幸せだった充実した日常は失われる可能性が高い。両親は私のために今の安定した生活を放棄して私のために何かをしようと死に物狂いで行動するかもしれない。


後から迫る大きな後悔か、すぐに始まる激動の日々か。


「ここにお父さんとお母さんを呼んでください、お願いします」


《では。お二人をここにお連れします。少々お待ちください》


悩むことじゃない、私なら未来を知ることが出来るなら知りたいと思う。それが後悔する内容であっても。

きっとお父さんもお母さんも知らずに、いえ、目を背けて後悔するより知って後悔するほうがいいといってくれるはず。



やがて私の近くに他の蛍のような光とは違う色の2つの光が下から昇ってきた。

「赤い色?」

《御両親をおつれしました、まだ生を終えてないこの世界の人の魂は赤いのです。ちなみに詩織さんは異世界の方なのでそれは当てはまりません。さて、こんばんは、初めましてお二方。私はこの世界の人達に神や・・・・・》

ガイさんが自己紹介と私のこの後ことを両親に話し始めました。

両親は蛍のように小さな光の塊で、どちらがお父さんなのかお母さんなのかぱっと見分かりません。


《えっと、俺の声が聞こえるか?》


頭の中にお父さんの声がします。


「はい、聞こえます。お父さん」

《やっと喋れるようになったか、・・・コレは夢なんだよな?》

「夢じゃないよ、今は蛍みたいな感じだけど風とか温度とか感じるでしょ?」

《ああ、感じるな・・・》《ホントに風を感じる・・・》


《それでは、すこし急かと思われるでしょうが、御両親の魂には元の世界に戻っていただきます。まだ生きている普通の魂がここに長時間入るのは少しよくない。お互いが夢でないと思えるように何かキーワードになるような言葉を最後に決めていかれることをお勧めします》


《そうだな、では「蛍舞う幻想の夜」でどうかな、母さん。起きたら俺のほうから声をかけるよ》


《分かったわ、・・・起きた後この言葉がアナタから発せられないことを祈ってる》


そうして二つの赤い魂は下の方へと降りていった。


「ガイさん、説明ありがとうございました。」


《いえ、いいんですよ。詩織さんはもう帰られますか?》


「あ、じゃあちょっと質問がすこしあるんですがいいですか?」


《どうぞ》


「えっと、まずは。私は死んだ後魂はどうなるんですか?」


《こことは違う、マナの入りの良い世界に転生することになります。世界の海を移動することになりますが、私が暫くの間魂が耐えられるように膜のようなもので包みますので、移動中に魂が傷つくことは無いでしょう。》


よかった、消滅とかじゃないみたい。

完全に消え去るとかだとこの先絶望感しか湧いてこなかったともう。


「よかった、消滅とかじゃないんですね。じゃあ次の質問です。私はどんな世界に行くことになるのですか?」


《マナの入りがよい、ということは機械文明があまり進んでない世界になります。貴女の持つ本の力(魔法創造)を生かせる世界にお送りします。》


どうやら私の持ってる本が一発芸手品用から神器に一気に昇格するようです。

あ、昇格じゃなくて復権・・・かな?


「次の質問です、将来家族がこの世界で死を迎えたあと、私が送られる世界で会いたいと願った場合送ってもらえるのでしょうか?」


《申し訳ありませんが、それは出来ません。この世界の魂は少ないマナの中で存在するように出来ています。マナが大量に存在する世界ではそう長い時間もかからずに消え去ってしまうでしょう》


「そうですか・・・」


私は家族と本当の意味で3ヶ月弱しかすごせないようです。


「・・・では最後です、なんでガイさんは私のために色々と手を焼いてくれるのですか?」


これが一番疑問に思っていたことです。

ガイさんはフッと微笑むと《それは秘密です》と答えてきた。

いったい何があるのでしょうか、ちょっとそれは不安です。


《それでは詩織さん、今日はここまでにしましょう。あなたの体がお酒のせいでトイレに行きたがってるようですし。水分補給もお忘れなく》


そういえば、お酒を飲んだのでした。

というか全部の行動見られてたりするのかな?

ガイさんはまた2ヶ月ほどたったらここに呼ぶと言い、私を送り返してくれました。



さぁ、残り短い日々の始まりです。

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