洋楽きっちゃ組 3
どーも、初めまして。
1ないし6から来てくれた方は、今後もよろしくお願いします。
メタ発言ってなんでしょう。
それはともかく、音楽っていいものですよね。
ある意味生きていく中で最も不必要でありながら、生活の中で密接に関係してくる要素の一つです。
だってそうでしょう。音楽がなくたって火をおこせるし、空気だって吸える。音楽がなくて困ることなんてない。レコード会社の関係者以外はね。
でも、音楽に囲まれて生きてきた者にとって音楽の消失が意味するのは、一つの空虚。
いつも朝起きてから洋楽のCDをかけている者が、ある朝寝ぼけてしまい、それをしなかったとする。するとどうでしょう。それに気付かないまま時間を過ごしていると、静寂というよりは無機質な空気が漂い、その空間自体に違和を感じる。無数に存在する人生の歯車が、ほんの一つだけ欠けた感触。人間というものはとても脆く、それだけで何もかもが狂ってしまう。
分かりづらいかもしれないから、もう一つ。ミルクを入れた、ライトめなものを。
テレビを見ていると、ほとんどの番組で活用している要素が一つある。答えはもちろん、音楽。
歌番組はもちろんのこと、OPテーマ、EDテーマ、BGM、挿入歌、音楽は多種に形を変え多様にちりばめられている。
では唐突にこれらが消えてしまえばどうなるのか。調理過程で塩を入れ忘れたような、何かひと味足りない感覚を味わえるだろう。
ドラマや映画、そのクライマックスや見せ場のシーンで一切、音楽が流れなければ、意図的にそう演出する場合もあるだろうが、ほとんどの場合どこかむず痒さを残してしまうだろう。
今回は何が言いたかったかと問われたら、当たり前の何かが足りないということは、抽象的ながらハッキリとした違和感が残るということである。
そんな人間を見たことがあるかと問われれば、僕はある。
明らかにどこかのネジが一本飛んでいる人を。
敢えて詳細な部位はいわずにおくけれどもね。
それを優しさととるかは皆さんにお任せします。
『三度橋 帝』
というわけでみかどさん、こんにちは。
「ああ、おはよう。今日もお外はお先真っ暗。いつになったら暗くなるのかねぇ」
今は昼ですからこんにちわで合ってます。それにびっくりするくらいの快晴ですし、あと6時間くらいすれば真っ暗になりますよ。気が早すぎです。
えーと、みかどさんは見ての通りというか聞いての通り、とても変わった人です。
行動も、言動も、格好も、どこかに必ず違和感のある人です。
「今日学校に来る途中、遅刻しそうだったから近道を通ったら、白い犬に出会ったんだ。そうしたらとてつもなく大声で吠えられて、すっかり腰が抜けてしまってね、その場にへたり込んでしまったよ。その時私は思ったねまさにこうだと思ったね、ああ、学校に間に合わない」
今日遅刻した理由はそれだったんですね。正直どうでもいいエピソードにカテゴリしたいくらいのくだらなさですよ。あと、急がば回れ、的な落ちになるかと素直に期待していた僕が哀れです。
言動はとても分かりやすいでしょう。バーゲンセールなみの大安売りで、僕のテンションが次々とかっさらわれていきます。どこか風にいうと、SAN値が下がる、という感じですね。
というよりみかどさん、その格好はどうしたんですか。
「ああ、これかい。お恥ずかしながら、大急ぎで家を出たものだから、お気に入りの着ぐるみパジャマのまま登校してしまってね。このまま帰るのもなんだし、これで授業を受けようかと」
いや、別に僕は構いませんけど、羞恥心が削れていくのは確かだと思いますよ。
一旦この話題は置いておき、なぜ普通に会話ができたかの説明を。
みかどさんはなぜか、3度目の発言では必ず、至極まともな会話が成り立つ。おおよそ人間らしい回答は、ある意味この時しか返ってこない。
そして1度の発言につき、必ず3つの句点がついたところで話を区切る。~。~。~。これで一度の発言が終了する。一つの流れのようなものと思ってもらえれば。
どうしてみかどさんがこの喋り方をするのかはいまだに教えてもらえない。知り合って日も浅いからしょうがないとは思うけれど。
まあ名字にも冠されているとおり、3という数字が、ただ単に好きなだけなのかもしれない。というよりは、僕が知る限りみかどさんは3という数字にとても縁がある。
中間ないし期末テストの順位は、必ず3位。良くも悪くも、この数字より上下することは一切ない。それは顔も合わせてない頃から、その名前が定位置に印刷されていたのを見てきたから、よくわかっている。
「勘違いしておくれよ。3よりも3が嫌いなんだ。それはもう、信長が関ヶ原の戦いでペリーを破ったときのように」
勘違いしていいんですか。3と3って、違いがまったく理解できません。あと最後はそれ凄まじく歴史変わってますからね。
もう進行上みかどさんは軽くあしらって進めていきましょう。
この人について、家柄も、ご両親のお仕事についても、一切情報がわからない。単純に元クラスメートや現クラスメート、担任、果てはご近所さんにもリサーチを試みたけど、まったく成果は上がらなかった。
一言で言うなら、謎の家庭である。一説では各国首相ないし大統領にパイプを持っている影の権力者だとか、実は冥王星あたりから来た宇宙人の一家で、日本の研究施設に従事しているとか、寝も葉も茎もない噂が飛び交っている。主にみかどさんのクラスで。
そのせいで、良くも悪くも腫れ物扱いされることが多い。実際、この人と付き合っていくには最低でも2度は、言語明瞭意味不明な会話を凌がなければならない。どんな精神状態になるのか。
「見て。薄汚れた鳩が地べたを這いつくばっているよ。ああいうのを見ると、そっと蹴り飛ばしたくなるよね」
どこにもそんな5月病でもないのに気分がシンカー気味に沈んでいく不愉快な光景は目に映りません。そしてすこしだけそっと蹴り飛ばしているのを見たいです。どういう蹴り方ですか。
先程言いましたが、この人は基本的に頭がいいはずなんです。だてに学年上位、というか3位をキープしてませんから。
それでも、一度だけみかどさんの解答用紙を見せてもらったことがあるのですが……
ええ、あれが国語だったら、僕の人生何かが終わってしまうかのような誤回答が散在していました。どうやったらあんな文字の羅列を日本語で生み出すことができるのだろう、という感じです。死後の世界って、こんなに混沌としてるのかな、とどこか意識がトリップしそうな気分を味わえます。ちなみに、見せてもらったのは数学でした。
頭はいいはずなんですよね、本当に。まともな時を狙って勉強教えてもらったら、本当に成績が伸びましたし。そうでないときの応対は、命を削るくらいの会話が聞けましたが。
「本当にきみには迷惑をかけっぱなしだ。そりゃあ私だってまともに会話したいと思うときだってある、けれど、これは生来のクセみたいなものだから、一朝一夕で治るものでもない。だから私にできるのは、できるだけ会話を切れないようにして、少しでもきみとの会話を長引かせることしかできない、こんな風にね」
みかどさんでも、そういう風に考えることあるんですね。っていうか、別に責めてるわけじゃないんですよ。意図してそう言ったわけではないというか。
「日本語なんてなくなればいい。きみもそう思うだろう。銀田一先生」
ええまあ流れはわかってましたけどね。というかそのパクリはやめてください版権的にもギリギリのラインだと思いますし。あと文脈的にもその名前はアウトです。
本当に、まともなときと、そうでないときのギャップがここまで激しい人は、他に見たことがありません。
まあ、この人と出会えた事自体が、とても希有なことなのかもしれませんけど。変な人、にカテゴライズしている人は多々増えましたが、ここまで飛び抜けている人はそういませんし。
この妙なクセさえなければ、お近づきになりたい人なんですけどね。一応、男として。出会いを思い返すと逆にお近づかれてますから、僕の方から、何か構って欲しいオーラを出していたのかもしれませんけど。
お世辞を抜きにして、みかどさんはとても綺麗なお方です。
身長がえーと、168cmと標準くらいなのですが、驚くくらいにその体は細く華奢で、手を触れただけでもくしゃくしゃに壊れてしまいそうなほど。僕は男子でも小さな部類だけど、あの人なら小脇に抱えられる自信がある。
髪型に関して言えば、よく言えば奇抜、よくない言い方をすれば、もう何世紀か待った方が良かったのでは、という感じ。
まず左半分はありえないほどに伸びた前髪を、これでもかというほどに垂れ下げ、右半分はエリートよろしく、一本たりともはみ出すことなく、見事なまでに徹底して上げている。後ろ髪はなぜか普通に、少し長いくらいのポニーテールになっているけど。
そして開けている方の、つまりは右目の方に片眼鏡をしている。度は入っていない。以前にどんな見え方になるのか興味があって貸してもらったところ、少し景色が歪んだだけでほんのちょっぴり落胆して、愛想笑いで誤魔化したのはないしょだったりする。
「空って不思議だと思わないかい。彼女は気分次第で笑顔を振りまき、機嫌次第で悪意をばらまく。私もかくありたいものだ」
前の2文は哲学的で素敵だと思いますけど、最後の文だけはまったく同意したくありません。というか、やめてくださいね。どんな悪女ですか。
本当に、偶然出会ったにしても、珍しいお方だと思いますね。つくづく、我ながら運の良さを褒めたい。確かにネジどころか鉄骨が丸々抜けているような人だけど、ぬくぬくのんびりとさせてくれない、せわしい人です。退屈をさせてくれません。
それだけでなく、先程から失礼な言い方になっていますけど、まともなときのみかどさんの話は、とても素敵なんです。
哲学的というか、幻想的というか、どこか別の世界にいるような気分にしてくれる、素敵なお方です。
本当、偶然というものに感謝したいですね。
「きみは先程から偶然という言葉を強調しているが、そうは思いたくない。きみと出会ったこと、今こうして話していることも、全て偶然からの成り行きと考えてしまってはつまらない、だから私は、きみと出会ったのも、会話するのも、きみに抱いている好意さえもが、きみの意志、私の意志のおかげで、成り立っていると考えたい。私がきみと出会いたいと思い、きみが私と出会いたいと思った、それ故にきみと私は出会ったのだよ」
こうして、自分の主張を述べているみかどさんは、僕の目には眩しすぎる輝きを放っていて、本当に、近づくのがおそれ多いくらい。
だから、例え偶然だったとしても、この人に出会えたという事実だけは、本当に大事にしていきたい。
「きみは屋根を見て何を思う。あれは便利なものだ。槍が降ってきたら守ってくれる」
……本当に、これさえなければ心の底から尊敬できる人なんですけどね。
ちょっと長居しすぎましたね。精神衛生的に。それではまた。
「おお、また会ったな。出会いというものは一期一会。一度会ったらまた会うのが縁というもの」
そろそろフラストレーションのタンクがパンクしそうなので、スルーの方向でお願いします。さようならー。
というわけで、三度橋帝さんでした。
本当にあの人と会話していると、いつか精神バランスがゲシュタルト崩壊して自我を見失うんじゃないかと思いますね。
僕はただ会話していただけなのに、色々なものが根こそぎそがれた気がします。
いや本当、素敵なお方なのは間違いないんですけどね。
そんなアンバランス代表、三度橋帝さんでしたー。
次回はこのタイトルの由来に基づいた話を書きたいと思います。
この駄文に付き合って頂けるなら、幸いです。