66 エピローグ
ライブで綾目さんはファンサをもらい、泣いて喜んでいた。
その後のファミレスでは、私のオーラや生存率、チケットの件のネタバラシをした。ヨシさんという座敷童子の存在を話した途端に「あんたは親友だよ」と手を握られた。初対面のときは店から追い出そうとしたくせに。そういう悪びれないところも好き。
ヨシさんと車でオカルトスポットに向かいながら、思い出したように呟く。
「そのうち、ヨシさんに綾目さんを紹介しないとね」
「強いんですか?」
「ビジュは」
斜に構えているが、根は善良そうな人だ。性格的にもヨシさんの望みを叶えられるタイプの霊能力者ではないだろうが、仲良くしておくに越したことはない。バイクの運転もうまいし。
「なかなかないねぇ、恐怖い怪異」
ハンドルを握るヨシさんの和装は、夏に向けて涼しげな装いに変わっている。
私は年中ラフなパンツスタイルだから、季節感を大切にする人は偉いなあと思う。
赤信号で停車した際、彼の視線がチラとこっちを見る。
「心里さんって、クトゥルフでも探してるんですか? 何なら納得するんです?」
「なんでもいい。邪神でも、日本三大怨霊でも、百鬼夜行でも、悪魔でもなーんでもいい。とにかく私を怖がらせてくれるなら」
「何がそんなに楽しいんですかねぇ……。絶叫マシンマニアみたいなものなんでしょうけど」
「よくわかってるじゃん。ヨシさんの悲願が叶うまで情報収集がんばるからさ、ちゃんと付き合ってよね」
「ええ、付き合いますよ。心里さんにもうちょっとマシな趣味ができるまでは」
「今もマシな趣味でしょ」
「それ、何を持ってるか教えてもらっていいですか?」
「さっきのサービスエリアで拾った赤い封筒」
「わかって拾ってますよね?」
「うん!」
運転席から長いため息が聞こえた。




