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書庫と少女と物語

 もう100年は使われていないと言われる禁書庫の扉を開くと古い紙と埃の香りが漂ってきた。


 薄暗い禁書庫の中は天井から埃が纏わりついた蜘蛛の糸が幾つも垂れ下がっている。

 禁書庫と呼ばれているわりにはその広い空間には床へ乱雑に書物が積まれ高い塔を幾つも作り上げている。


 「こんなに多くの本が禁書に? いくら文学の都市と言われてるっていっても多すぎじゃない?」


 少女は疑問に思いながら書庫の中に足を踏み入れる。 少女は手頃な高さの本の山から一冊手にとりその表紙を見ると、ごく一般的な娯楽小説だった。 拍子抜けした彼女は更にもう一冊、もう一冊と手に取るがどれも一般的なものばかりで中には少女も知っている物も存在した。

 「どういうことかしら? 禁書庫に何でこんなに多くの小説が?」


 疑問に思う少女の目にたった一冊、豪華な額にはめ込まれた本が飛び込んできた。


 「あれが禁書かしら?」


 少女は幾つもの本の山を避け、その額にたどり着く。


 「これが禁書かしら? タイトルも著者も記されてない。表紙に装飾もないし額の方が高そうね。」


 本を額から外すとその本は思っていたより分厚く、ズシリとその重量を少女の手に伝える。

 一体何が書かれているのか?少女は気になりその本の表紙をめくる。


 「え? なにこれ? これって」


 豪華な額に入ったそれはこの国の民なら誰でも知っているとある少女と母の物語だった。

 だがそれにしてはあまりにもページ数が多い。


 「これってひょっとして原本なのかしら?」


 少女は知らない。

それが禁書庫にある所以を。


少女は知らない。

それが誰の手によって執筆されたのかを。


少女は知らない。

その本に姉妹本が存在し、

それが今どこにあり、誰の手に渡っているのかを


 そんな少女を小さなハエトリグモが高く積まれた本の山の上からじっと見ていた。

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