表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

8 ダリーの推理手帳その1


ギョームの死因を巡る調査が進む中、私は自殺や事故、自然死の可能性を排除するに至った。


その理由の一つは、彼の屋敷の台所から突然消えた薬草の存在だ。だが、この事件が単なる偶然ではなく、何者かの意図によるものだと結論づけるには、さらに確固たる理由が必要である。


以下に、私が自殺や事故ではなく、他殺の可能性を導いた推理を記す。


1. 薬草の消失が示唆するもの


ギョームの死を巡る調査の過程で、彼の家族から興味深い証言を得た。それは、ギョームが亡くなる前日、台所で見つかった薬草がいつの間にか消えていたというものだった。家族の誰も、その薬草を持ち出した理由を知らず、また誰が持ち去ったのかもわからない。


もしギョームが自ら命を絶とうと考え毒草を用意したのであれば、その毒草を家族に見える台所に置きっぱなしにしただろうか。


彼のような几帳面な性格の人物であれば、計画を実行する際に使う道具を誰にも見つからない場所に隠しておくはずだ。誤って家族が使用してしまえば大変だし、毒草ではないかと疑われて騒がれる可能性だってある。


さらにこうも考えられる。


自殺のあとにそれを誰かが持ち去ったと家族が考えたということは、目撃した薬草はそれなりの量があったことがうかがえる。1度飲用したら無くなる程度の量だったとすれば、そのような疑問は浮かばないはずなのだ。そして死人が薬草を外に持ち出すことはできない。したがって、この事件には薬草を持ち出した第三者が関与している可能性が極めて高いと判断した。


さらに、自殺のケースでは通常、本人がその行動を選ぶ背景に、精神的な負担や明確な動機があるはずだ。ギョームには確かに悩みを抱えている様子があったという証言もあるが、その悩みが命を絶つほどのものであったかは疑問が残る。彼が村の発展を強く願い、地主としての役割に誇りを持っていたことを考えれば、その可能性は低いと見ている。


2. 自然死及び事故死の可能性


医師の診断によれば、ギョームの死体には外傷が一切見当たらず、病気の兆候も確認されていない。そのため、自然死の可能性は早々に排除された。ただし、医者アランが犯人若しくは犯人の協力者であった場合にはこの限りではないが。


では、事故死の可能性はどうか?


仮にギョームが誤って毒草を摂取した場合、その毒草がどのように彼の食事に混入したのかを説明する必要がある。ここで問題となるのが、彼が食事を取る際の環境だ。ギョームは裕福な地主であり、食事は通常、家の使用人たちが準備していたという。つまり、彼が台所に立って料理をすることはほとんどない。そのような状況で、毒草が「偶然」彼の食事()()に混ざる可能性は非常に低いのではないだろうか。



3. ギョームの行動と性格に反する状況証拠


ギョームは厳格で計画的な性格の持ち主だった。村の地主としての責任感が強く、財産や家族の将来についても深く考えていた。そんな彼が突然、自ら命を絶つという行動を取るのは極めて不自然だ。


自殺を選ぶ人間には、周囲に何らかの前兆や兆候を見せることが多い。例えば、遺書を残す、財産の分配を明確にする、最後の挨拶をするなどだ。


しかし、彼の死後、家族や親族、使用人たちからの証言を総合しても、そのような兆候は一切見られなかった。それどころか、彼は亡くなる数日前にも村の若者たちと収穫祭の計画を巡って議論を交わし、積極的に意見を述べていたという。これらの状況は、彼が命を絶つような精神状態であったことを否定する一因だと指摘できるだろう。


さらに、ギョームの死の直前に関係者の間で起きた出来事について調査を進めると、いくつかの人間関係の緊張が浮かび上がった。特に、ギョームが村の中で築いていた権力や影響力を不快に感じていた者たちがいたことが分かった。


このような背景を考慮すると、ギョームが自ら命を絶つ理由が見当たらない一方で、彼の死が他者によるものだとする説の説得力が増すのだ。



これら三つの要因を総合すると、ギョームの死が自殺や事故である可能性は著しく低いと判断せざるを得ない。彼は他者によって命を奪われた可能性が極めて高いと推測される。



この結論に基づき、次に進むべきは、事件に関与した可能性のある人物の絞り込みだ。ギョームがどのような人間関係の中で、誰と対立し、誰に恨まれる可能性があったのか。鍵となるのは、消えた薬草を持ち出した人物の特定と、それがギョームの死とどう結びつくのかを明らかにすることだ。


私は、調査を再度行うことを決意した。この事件の謎を解き明かすために。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ