【第5話】強敵の影、意外な出会い―『ゴーレムの試練』
風雅がダンジョンに向かいます。
俺は地下鉄に乗り込み、ダンジョンが存在するエリアへと向かった。車内では、他の冒険者たちも見受けられ、彼らの目には緊張と自信が混じっていた。
「君も今日が初めてか?」
と隣の席に座った冒険者が話しかけてきた。
「ああ、そうです。今日が初日です」
と俺は答えた。
「俺はもう何度も行ってるけど、最初は誰でも緊張するもんさ。気をつけろよ」
その言葉を胸に刻みながら、俺は地下鉄を降りた。ダンジョンの入口は高層ビルの間にあり、まるで異次元への扉のようだった。
ダンジョンの入口に到着する前に、俺はまず装備を整えるためにダンジョン前のストアに立ち寄った。このストアは、冒険者たちが装備や消耗品を揃えるための場所で、店内には様々なアイテムが所狭しと並んでいた。
「いらっしゃいませ!」
店員の元気な声が響く。
俺はまず、防具コーナーに向かった。初心者向けの軽量な防具が並んでおり、その中から適したものを選ぶ。軽くて動きやすい革のジャケットとパンツを手に取り、試着してみる。
「お、似合ってるじゃないか」
と、隣で装備を選んでいた冒険者が声をかけてきた。
「ありがとう。初めてだから何を選べばいいのか迷ってます」
「初心者なら、まずは動きやすさを重視するべきだな。防御力も大事だけど、動けなきゃ意味がないからな」
その助言に従い、俺は革の防具を購入することに決めた。次に、武器コーナーに向かう。剣や槍、弓など様々な武器が並んでいる中で、俺は自分に合ったものを探した。
「初心者には扱いやすい短剣がいいかもしれないな」
と再び同じ冒険者が助言してくれた。
「短剣か。確かに扱いやすそうだな」
俺は数本の短剣を手に取り、その重さやバランスを確かめる。最終的に、手に馴染む一本を選び、購入することにした。
さらに、消耗品コーナーにも立ち寄った。回復薬や食料、地図などが揃っており、俺は必要と思われるものをカゴに入れていく。
「これで準備は整ったな」
すべての装備を揃えた俺は、レジで会計を済ませた。総額は3万円に達していた。内訳は以下の通りだ。
- 軽量な革のジャケット:9000円
- 革のパンツ:7000円
- 短剣:6000円
- 回復薬(3本セット):5000円
- 携帯食料(1週間分):3000円
「頑張ってくださいね」
と言いながら、俺の購入品を袋に入れてくれた。
ストアを出ると、ダンジョンの入口がすぐ目の前に広がっていた。俺は装備を身につけ、改めて深呼吸をして気持ちを落ち着けた。
「さて、行くか」
自分に言い聞かせながら、俺はダンジョンの中へと足を踏み入れた。
入口で身分証明書を提示し、許可を得ると、俺は深呼吸をしてダンジョンの中へと足を踏み入れた。
冒険者のランクにはA~FとSがある。
影のような強い【スキル】なら、いきなりE級から始められるため、俺はE級だ。
ダンジョンの内部は、外の世界とはまるで別世界だった。暗く冷たい空間が広がり、未知の危険が潜んでいることを感じ取ることができた。壁は湿気を帯び、足元は不規則な石畳で覆われていた。
何やら弾力のある音が聞こえるこれは…スライムだった。
俺はスライムに向き合い、短剣を抜いた。スライムは柔軟な体を揺らしながら、こちらに迫ってくる。最初の敵としてはありがたい相手だが、油断は禁物だ。
「まずは冷静に…」
スライムが跳びかかってきた瞬間、俺は素早く側へ身をひるがえし、短剣で一閃した。スライムの体は切れ、粘液が飛び散る。しかし、すぐに再生し始める。スライムの特性を知っていた俺は、連続して攻撃を加えた。
「これで…どうだ!」
短剣の鋭い一撃がスライムの核心部分を突き、ついにスライムは消滅した。初めての勝利に胸が高鳴った。
「ふぅ…なんとか倒せたな」
しかし、これで終わりではない。ダンジョンの奥にはさらに強力な敵が待ち受けている。俺は気を引き締め、次のエリアへと進んだ。
ダンジョン内は薄暗く、壁には古代の文字や絵が刻まれていた。これらの遺物が何を意味するのか分からないし、本当に意味がある何のかすらわからない、
「ここがダンジョンの魅力の一つなんだよな…」
しばらく進むと、広間に出た。そこにはいくつかの宝箱があり、冒険者たちが慎重に開けている姿が見えた。俺も一つの宝箱に近づき、中を確認する。
「これが…ダンジョンの報酬か」
中には回復薬とコインが入っていた。コインは何に使うかわからないが、回復薬ありがたい。俺は宝箱の中身を取り出してポーチに入れた。
ちょっと奥まで進みたかった俺は、冒険者の集団についていくことにした。
その時、広間の奥から不気味な音が聞こえてきた。冒険者たちは一斉に身構え、俺も短剣を握り直した。巨大な影が現れ、その正体が明らかになる。
「これは…ゴーレムか!」
石でできた巨体が動き出し、冒険者たちに襲いかかる。俺は冷静に周囲を見渡し、攻撃の隙を見つけることに集中した。
他の冒険者たちと共に、ゴーレムに立ち向かう。巨大な拳が振り下ろされるが、冒険者達は巧みに避け、一斉に攻撃を加える。ゴーレムの動きは鈍重だが、その破壊力は凄まじい。一撃でも食らえば命取りだ。
その時、ゴーレムが右の腕を横に広げる。
「お前ら気をつけろ!!」
リーダーらしき冒険者が言う。
ガキンッ
「ふん!」
タンクらしき人が攻撃を受け止める。
あの攻撃を受け止めるのか…すごいな。
バリバリ…
「仁!離れろ!盾が石化している!」
「んなっ!」
タンクの人、仁がサッと離れる。
「このゴーレムは【石化の拳】持ち!上位個体だ!」
警告するリーダーをゴーレムが攻撃しようとする。
ランクの高い冒険者でも、怪我は避けられなだろう。
ゴーレムが腕を振り上げた瞬間、俺は影の力を使ってゴーレムを拘束した。
保っても3秒といったところだ。
「今だ!」
他の冒険者はゴーレムの背後に回り込み、弱点と思われる部分に剣を突き立てた。石の体が一瞬揺らぎ、隙が生まれる。
「やったか…?」
しかし、ゴーレムはまだ動いていた。
急にゴーレムがこちらへ全力で迫ってきた。
あの時と同じだ。強盗が迫ってきた時、俺は何もできなかった。だからこそ、今度は…でも…
『掴め』
手が勝手に動き、薙ぎ払おうとするゴーレムの腕を掴む。
「ガアッ!!」
「お前!!大丈夫か!!」
苦しい、でも、あの感覚だ。スキルを吸い取っているんだ!
【石化の拳】を吸収した感覚が手に伝わり、俺はゴーレムの腕を握り締めた。石化の力が流れ込むのを感じながら、状況を見極める。
「今度は…俺が使う番だ」
俺はゴーレムの動きを読み、隙を見つけてその腕に全力で「石化の拳」を叩き込んだ。拳がゴーレムの石の肌に触れると、瞬く間にその部分が石化していく。
「ガアァァ…!」
ゴーレムは苦しそうに呻きながらも、体を石化されたまま動けなくなった。風雅はその隙を逃さず、さらに追撃をかけた。短剣を持ち替え、ゴーレムの頭部分に狙いを定めて一気に突き刺した。
「お前ら!何ボケっとしてんだ!助けに入るぞ!」
「「「うおおおお!!」」」
ゴーレムは蜂の巣にされ、砂となり消え、魔石とアイテムだけが残っていた。
「おーでっけえ魔石だ、これはありがてえな」
「おい君! 腕が折れてるぞ」
「え?」
腕が明らかに駄目な曲がり方をしていた。気づいた途端、痛みが流れ込んだ。全身が熱い。これはまずい。
「ほら、これを使え」
何やら粘性の液体をかけられているみたいだ。不思議と腕は戻り、痛みも引いていった。腕が戻る瞬間が一番ショッキングだったかもしれない。
「あ、ありがとうございます。ポーションなんか...」
「気にすんな!最初の方は小さな出費が案外痛いからな」
俺の背中をたたきながらリーダーが言う。
冒険者たちが魔石を取り囲み、取り分について話し合いを始めた。
「取り分はどうする?」
と一人の冒険者が提案する。
「魔石はパーティーで分けるとして、アイテムはどうする?」
と別の冒険者が続けた。
その時、俺はゴーレムの残骸から一つのアイテムを見つけた。それは、鋼鉄で作られた短剣だった。非常に重厚で、見た目も鋭さを感じさせるものだった。
「この短剣、すごいな」
とつぶやくと、隣の冒険者が気づいて声をかけてきた。
「お、お前持っているのは【ゴーレムの鋼鉄の短剣】だな。これ、なかなかの価値があるぜ」
「本当ですか?」
「ああ、特にお前が初めてゴーレムを倒したんだから、お前に譲ろう。俺たちも魔石が手に入ったし、気にするな」
その言葉に感謝しながら、俺は鋼鉄の短剣を手に取った。手に持ってみると、ずっしりとした重みがあった。これからの冒険で頼りにできる武器になるだろう。
「ありがとうございます」
「これからも頑張れよ」
と、冒険者たちは笑顔で送り出してくれた。あの人達はまだ奥に行くみたいだ。
さっき聞いたがパーティー名は【鉄壁隊】だそうだ。C級冒険者らしい。
俺は短剣を大切にポーチにしまい、ダンジョンの出口へと向かった。今日は初めての挑戦で、多くの経験を得ることができた。これからの冒険がどうなるのかはわからないが、一歩一歩前進していくつもりだ。
スライム12体から取った魔石をすべて売った。
「買取額16968円になります」
結構多いな、がっぽりだ。
「あ、あと—」
手に入れたコインを渡そうと手を伸ばそうとした瞬間、突然、彼の右手に強い力が働いた。びっくりして手を引っ込めた。あのときと同じ、【奪う力】だ。
「な、」
『そのコイン、今は預ける必要はない。まだ持っておけ。』
「え、でも…」
俺が答えようとするが、【影】がそのまま風雅の手からコインを奪うように引き寄せた。コインは影に包まれ、次の瞬間には風雅のポケットに戻っていた。
『これで問題ない。自分の力で使うために取っておくべきだ』
俺は驚きと疑念を抱えつつも、【奪う力】の言葉を理解しようと努めた。
「分かった…あ、すみません…」
独り言のような感じになってしまったので
俺は受付の担当者に申し訳なさそうに頭を下げたが、担当者は特に気にした様子もなく、優しく微笑んでいた。
「問題ありませんよ。またのお越しを」
「さて、帰ろう」
そういえば、【鉄壁隊】の人達は使っていなかったが、どんな【スキル】を持っているのだろうか。
『なんだ?やっぱり欲しいか?ケッケッ』
お前と一緒にするな。
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