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【47話】飽和攻撃

前回2500文字超えたので分割



 パリン、と。ガラスが割れるような乾いた音が響く。


 俺が叩きつけた閃光茸は、地面に激突する寸前、何らかの不可視の壁に阻まれて弾かれていた。炸裂した光と音は、その壁の向こう側でくぐもったものとなり、中心に立つ『不動』にはほとんど届いていない。


「【絶対領域】…!」


 情報通りの鉄壁。俺の奇襲は完全に読まれ、そして無力化された。『不動』は眉一つ動かさず、ホルスターから規格外のサイズをしたハンドキャノン――対戦車用拳銃『荒鷲(アラワシ)』を抜き放つ。その動きに一切の淀みはない。


「何者だ」


 低い声が響くと同時に、銃口が火を噴いた。


 ズドン!という、拳銃とは思えない腹に響く重い発砲音。俺は咄嗟に【身体強化】で反応速度を引き上げ、横に跳んで銃弾を回避する。弾丸が先ほどまで俺がいた場所の床を抉り、コンクリート片が飛び散った。


(…ヤバい! なんだあの威力は!)


 チェックメイトはこちらの方だった。接近戦に持ち込む前に、あの『荒鷲(アラワシ)』で蜂の巣にされる。  俺は即座に【影】を操り、近くにあった鉄骨の資材を盾のように俺の前に引き寄せた。


 ガンッ! ガギンッ!


 連続する銃弾が鉄骨を叩き、火花が散る。鉄骨がひしゃげるほどの威力だ。まともに食らえば【再生】すら間に合わない。


「小細工を」


 『不動』は冷静に呟き、射撃を止めると、ゆっくりとこちらへ歩を進めてくる。彼の周囲には、常にあの不可視の壁が展開されている。物理攻撃は一切通じない。


(どうする…どうやってあの壁を破る…!)


 焦りが脳を焼く。銃撃を鉄骨の盾で防ぎながら、俺は次の手を必死に考えた。彼の弱点は、精神的な消耗と、面攻撃。一つの閃光弾では足りなかった。ならば――


「――数を、ぶつけるしかない!」


 俺は【収納】していた残りの閃光茸と煙幕苔、その全てを両手に掴んだ。  そして、鉄骨の盾から飛び出すと同時に、それらを天高く、そして左右へと、ありったけの力で投げ放った。


 『不動』は即座に反応し、自身に向かってくるポーチを『荒鷲』で撃ち抜く。だが、天井や左右の壁、彼の死角へと散らばった他のポーチまでは対応しきれない。  次の瞬間、倉庫の空間が、無数の光と闇、そして音で満たされた。


 四方八方で閃光茸が炸裂し、煙幕苔が視界を奪う。不規則な光と影が明滅し、方向感覚を狂わせる。


「ぐっ…!」


 流石の『不動』も、全方位からの飽和攻撃には眉をひそめ、一瞬だけ動きを止めた。彼が展開する【絶対領域】が、明滅する光に照らされて、シャボン玉のように僅かに揺らめくのが見えた。


(――今だ!)


 俺はその一瞬の揺らぎを見逃さなかった。  煙幕の中を最短距離で駆け抜け、揺らめく障壁に【影】の全てを叩きつける。ミシミシと、空間が軋むような抵抗。しかし、俺は構わずその中心へと、手を―――伸ばした。

次回、【49話】6秒の攻防

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