【45話】狩りの準備
書いてから1ヶ月以上経ってて、矛盾点見つかりまくりで修正。
日曜の18時。自室の椅子に座った俺は、スマートフォンの操作を終えた。匿名のギルド口座を介して、黒川さんに情報料50万円が送金されたはずだ。すぐに暗号化されたデータファイルが返信され、俺は自室でその中身を確認し始めた。
タイムリミットは6日後。以前のように死に追われる焦燥感はないが、リミットとの戦いで得た教訓が俺を突き動かしていた。強くなるために、そして、次の「1週間後」を盤石の状態で迎えるために、この好機は絶対に逃せない。
モニターに表示された詳細な敵戦力情報に、俺は息を呑んだ。相手は武装したプロ集団。ただ乗り込むだけでは自殺行為だ。そして、もう一つ重要な問題があった。
(冒険者ギルドの店で買った閃光弾や発煙弾を使えば、製造番号から足がつく可能性がある…)
相手はプロだ。現場に残された証拠から、使用者を割り出すことなど造作もないだろう。俺は「冒険者・飯野風雅」という表の顔を汚すわけにはいかない。
「…なら、作るしかないか。ダンジョンにあるもので」
翌日の月曜、俺は学校が終わるとすぐに新宿ダンジョンへ向かった。目的は消耗品の現地調達。俺が向かったのは、まだ探索が進んでいない二階層の奥地、菌類が発光する湿地帯だった。
狙いは二つ。一つは、衝撃を与えると強烈な光を放つ菌「閃光茸」。もう一つは、乾燥した胞子嚢が破裂すると、周囲に濃い煙幕を撒き散らす「煙幕苔」だ。
これらは換金価値が低いため他の冒険者は見向きもしないが、今の俺にとっては宝の山だった。俺は半日かけて、十分な量の菌と苔を採取し、【収納】スキルで安全に持ち帰った。これ密輸し放題じゃん。
そして水曜日。俺は一つの賭けに出ることにした。先日ロードウルフから手に入れた【狼王のマント】と、愛用している『夜影セット』、そして報酬の現金の一部をバッグに詰め、黒川さんに紹介してもらった裏路地の工房を訪れた。
そこは、表沙汰にできない装備の改造を請け負う、腕利きの職人の店だった。
「…『夜影』に、このマントを統合してほしい」
無口な職人は俺と品物を一瞥すると、黙って頷き、法外な改造費を提示した。俺はそれを払い、全てを彼に託した。
金曜の夕方、俺は完成した新しい装備を受け取っていた。
それは、黒を基調としながらも、光の角度によって狼の毛皮のような深い艶を放つ、まったく新しい一着だった。
『夜影』の隠密性に、【狼王のマント】が持つエネルギー耐性と気配遮断の効果が加わっている。職人はこれを『夜狼の外套』と名付けた。
自宅に戻り、俺は最終準備に取り掛かる。採取した閃光茸と煙幕苔を、小さな皮袋に詰めていく。衝撃で破裂するように調整した、手製の閃光弾と発煙弾だ。これなら、製造元を辿られる心配はない。
全ての準備を終え、俺は『夜狼の外套』を身に纏った。体に吸い付くようなフィット感と、以前とは比較にならないほどの安心感。闇に溶け込む感覚が、より一層鋭くなっていた。
そして取引前日の夜、俺は横浜に来ていた。
港のD地区は、コンテナが山と積まれた、人の気配のない寂れたエリアだった。俺は『夜狼の外套』のフードを深く被り、物陰に身を隠しながら第7倉庫に接近する。
「…あそこか」
黒川さんの地図通り、一際大きな倉庫が闇の中に佇んでいた。既に現場の設営は始まっているようだ。
俺は近くのクレーンの影に身を潜め、じっと内部の様子を窺った。
(巡回ルートは情報の通り…侵入経路は、北側の換気口からが一番確実か)
【影】を細く伸ばし、蛇のように地面を這わせる。影を倉庫の壁際まで進ませ、内部の音や気配を探る。人の声、金属が擦れる音…連中のプロ意識の高さが伝わってくる。
夜が更け、空が完全に闇に染まる。コンテナの影が色濃くなり、俺の存在を隠してくれる。
冷たい潮風が頬を撫でた。
作戦は決まった。あとは、狩りの時間が来るのを待つだけだ。俺は静かに息を潜め、闇に溶け込んでいった。
ノリで改造したせいで、普段の冒険者の時の装備新しく買わないといけなくなってしまった。
次回、【46話】潜入。
次回朝投稿。




