【39話】狼の王
身体ボロボロですよ...
俺は4階層の奥に進むと不自然に岩に囲まれた場所を発見した。おそらくここがボスのフィールドだろう。
不自然な茂みを通り抜けると広大な草原が広がっていた。これまでの1 on 1のボス戦とは違う。大量の狼の群れ。気の所為ではない、10体を超えるアルファ・ウルフが各群れを率いている。そしてその奥には、〈王〉が鎮座していた。狼の支配者だ。その迫力に俺は圧倒される。同時に俺は焦った。隠れる場所がない。
「絶対絶命って感じだ」
謎の落ち着きを感じながらはじめの一手を考える。向こうは大将の指示を待っているみたいだ。
「それなら先手必勝!!」
まずは相手の陣形を崩すことだけ考える。俺は早速ウルフから奪った【俊敏】と【身体強化】を重ねて中心に突っ込む。雑魚は無視してアルファ・ウルフの頭を一突き。周りのウルフどもを影で拘束し、アルファが消える前にアルファの能力を奪う。
ウルフぐらいならいけるな、試してみるか。俺はウルフの拘束箇所を首に限定する。そして9体の首を、折る!
グシャッ!!
ウルフたちが塵となり、倒したことを確認する。2つの群れに同時に攻撃される。流石に厳しいだろ。
「ウオオオオオオ!!!」
俺は【咆哮】を使い、怯ませ数体切り刻みながら、次のアルファを仕留めに行く。
「グリム!さっきの能力は何だ!」
俺はグリムに問う。
『【統率の威光】、雑魚がビビるオーラとでも考えておけ』
分かりやすい説明で助かる。
「さんきゅー」
俺はそう言いながら早速【統率の威光】を発動させる。
「道を開けろ!!」
こうして雑魚を怯ませながらアルファを狩り、あと5体とロードウルフだけとなった。普通のウルフは数に入れていない。
そうして、【統率の威光】を発動させたその時、ロードウルフが初めて動いた。
「ガウウウウウウウウウウ!!!!」
ロードウルフが吠えた。次の瞬間、アルファ・ウルフたちの毛並みが逆立ち、全身に漲るような力を感じる。
『【ロードの咆哮】だ。周囲のウルフの戦闘能力を引き上げる効果がある。今のお前の【統率の威光】だけじゃ抑えきれんぞ』
「……チッ!」
目の前のアルファ・ウルフたちの殺気が段違いに上がっている。さっきまでの奴らとは違う。動きが速くなり、連携が洗練されていく。
9体のアルファ・ウルフが、一斉に俺を取り囲んだ。
「おいおい、囲むのが早えよ!」
俺は【俊敏】を発動し、地を蹴る。だが、アルファ・ウルフたちはまるで意思を統一したかのように、俺の動きを読んで詰めてくる。
(マズイ、さっきまでの動きとは完全に別物だ…!)
一体が突進してきた。避けた瞬間、別の個体が横から牙を振るう。俺は辛うじて身を捩ってかわすが、その瞬間、背後から飛びかかってくる影が見えた。
「っ!」
瞬時に【身体強化】を発動し、拳を叩きつける。ドガッと鈍い音が響き、一体を吹き飛ばすが、次の瞬間には別のアルファ・ウルフがその隙を突いてくる。
「ハッ、今のは危なかったな!」
俺は笑いながらも、内心焦っていた。アルファたちの動きが完全に統率され、俺の逃げ道を塞ぐように襲いかかる。このままでは消耗するだけだ。
(クソ、これが【ロードの咆哮】の効果か…!)
一瞬、ロードウルフの方に目をやる。あいつは未だ動かず、俺の様子をじっと見据えている。まるで、自ら手を出すまでもないとでも言いたげだ。
「チッ……なら、こっちもやるしかねぇな!」
俺は深く息を吸い込み――
「道を開けろ!!」
再び【統率の威光】を発動させる。強烈なプレッシャーが周囲に広がる。だが――
「ガウウウウ!!」
ロードウルフの目がギラリと光った。その瞬間、アルファたちが一斉に俺へ襲いかかる。
(――効かねぇ!?)
ロードウルフの支配が、俺の【統率の威光】を押し返している。俺の威圧を受けながらも、アルファ・ウルフたちは怯まず襲いかかってきた。
「なら――突破するしかねぇ!!」
俺は地を蹴り、アルファ・ウルフの群れへ突っ込んだ。狙うは、まず一体。こいつらの連携を崩さなきゃ話にならねぇ!
「――ッ!!」
俺は一気に地を蹴った。
【速攻】発動。
視界が歪むほどの加速。100m走のスタートダッシュどころじゃねぇ。まさに瞬間移動したかのように、一気に目の前のアルファ・ウルフの懐へと飛び込む。
「――お前から消えるんだよ!!」
そのまま【咆哮】を放ち、至近距離で叩きつける。轟音が響き渡り、目の前のアルファ・ウルフが硬直する。その一瞬――
「影の檻!!」
【影】が足元から這い上がり、アルファの四肢を絡め取る。
「狩る!!」
【俊敏】を発動し、一閃。狙った喉元を貫き、塵となる。
――1体目。
「次!!」
俺は再び【速攻】を発動し、別のアルファ・ウルフへと飛び込む。
横から牙が襲いかかるが、【影】で絡め取り、動きを鈍らせる。迫る別の個体を、俺は再び【咆哮】で怯ませる。
「邪魔だッ!!」
踏み込み、【俊敏】と【身体強化】を重ねて拳を叩き込む。鈍い音とともに、アルファが弾け飛び、消滅する。
――2体目。
「このまま押し切る!!」
俺は加速しながら、咆哮と影を駆使し、ひたすら攻め続ける。
流石に一斉に相手をするのはキツイが、【再生】を発動させながらゴリ押しで捌く。肉を裂かれようが、骨を砕かれようが、俺の体は即座に修復される。
「――ハハ、止まらねぇな!」
痛みすら興奮に変わる。血が滾る。
『……バカめ、これが普通の戦闘ならな』
グリムが呆れたような声を出す。
「余計なこと言ってる暇ねぇぞ!!」
すでに6体が塵へと還っている。
残るは3体――いや、もう1体倒した。
「あと2体!!」
影と俊敏を駆使しながら、最後のアルファ・ウルフ2体を捌き、ついに――
「……終わりだな」
目の前には、ロードウルフがただ一体、鎮座していた。
睨み合う俺とロードウルフ。
『これで純粋な一対一だ。……ただ、こいつは今までのとは格が違うけどな』
ロードウルフが静かに立ち上がる。
「知ってるさ……だからこそ、面白いんだろ?」
俺は口元を吊り上げながら、ロードウルフへと向き直った。
「さあ、王様……」
「――どっちが狩る側か、決めようぜ!!」
ストックはあるのですが投稿タイミングが合わないのです。




