【32話】取引現場荒らし
気づいたら全然投稿していなかった。すみません
今日は『ブラッドドラッグ』との取引を叩き潰すために、もとい、スキルを頂戴しに、俺は地下の取引室へと向かっていた。
目標は『ブラッドドラッグ』の一員、影山啓吾。そして、彼と組む能力者の女だ。奴らが血晶石を使って裏取引をしているのは、黒川さんに教えてもらった。スキルを貰うついでに、取引を止めて、社会に貢献できれば、一石二鳥というわけだ。
取引している部屋の横の部屋に着いたので、早速教えてもらったやり方で、突入する。今日使うのはこちら、『オーガの魔石』である。まず、【身体強化】を開放し、魔石を軽く握り、ヒビを入れる。そして、腕を振りかぶり、壁に思っきり、――投げる。
「ふんっ!」
ゴオオオォォォン
取引室の壁を爆破し、堂々と部屋に足を踏み入れた瞬間、部屋にいた全員の動きが一瞬止まった。その一瞬が、すべてを制圧するのに十分だった。俺は辺りの煙や瓦礫など一切気にすることなく、ゆっくりと歩みを進めた。
「……何だ、この野郎は!?」
部屋にいた一人、おそらく、影山啓吾が俺を見て叫ぶ。変装しているつもりだろうが、そんなものは俺には通じない。俺の視線は彼を捉えたまま、冷静に周囲の状況を把握していた。隣には、例の【収納】を使う女、悠里が立っている。奴らは既に血晶石を隠し始めているようだが、そんなことも無駄だ。
奴らの手下どもが一斉に襲いかかってくるのを見て、俺はすべての動きを予測し、最小限の力で捌いていく。アサシンゴブリンに比べれば、捌き切るのは、造作もない。彼らの攻撃は俺にとってはスローモーションのように見え、次々と無力化していった。恐怖が彼らの中に広がっていくのが手に取るように分かる。
「どうする……どうすればいい……!」
影山は焦り、視線をさまよわせながら何とか逃げようと考えているようだったが、逃げ道などない。彼の仲間である悠里も、結晶石を収納したままの状態で逃げる準備をしていた。どうしよう。
影山は一瞬の隙を見つけて発煙弾を放り投げ、煙が辺りに立ち込めた。だが、煙など意味がない。視界を失っても、【身体強化】のおかげで彼らの動きや位置は、音で手に取るように分かる。
「ここから逃げ切ってやる……!」
影山は隠し扉に手を伸ばし、必死に逃げようとしたが、その腕を俺は冷静に掴んだ。驚愕した彼が振り返ると、俺の顔を見てさらに恐怖に染まっていた。
スキルの吸い取りが始まる。あと7秒だ。
「くっ……!」
抵抗する力が強くなってきなので、完全に対抗心を削ぎ落とす。そのために…ふぅ…
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!!!!!!」
俺の【咆哮】による叫び声が通路に響き渡る。反響し、鼓膜がサヨナラされる。
「……終わりだ」
彼の首元に手を触れると、彼は意識を手放し、すべてが静まり返った。俺は影山を放り投げ、悠里の元へと歩み寄った。彼女は既に俺の前では無力だった。
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