【第2話】コンビニ強盗―『影の抗争』
前回の続きです。
「強盗だ! 金を出せ!!」
コンビニ内は一瞬で静まり返り、緊張が走った。俺の心臓は早鐘を打つように激しく鼓動していた。涼介と奈々は俺のすぐそばにいたが、二人とも驚いた様子で動けずにいた。
「動くな、誰も騒ぐな!」
強盗の男は銃を振りかざしながら叫んだ。俺の体は凍りつき、冷たい汗が背中を伝う感覚を感じた。
「涼介、奈々、どうする?」
風雅はかすれた声で問いかけたが、二人とも動揺しているのが見て取れた。
「ちょ、ちょっと待って、今は動けない...」
涼介は言葉に詰まりながら答えた。
「私も同じ...」
奈々も怯えた表情で答えた。
「もっと早くしろ!何やってんだ!」
強盗は店員を催促する。
俺は足がすくんで動けなくなった。心臓の鼓動が耳の奥で響き、汗が額を伝う。
店員は震える手でレジを開け始めたが、動きはぎこちなく、時間がかかっている。
「早くしろ!」
強盗はイライラしながら銃を振り上げ、店員を威嚇する。店内の客たちは恐怖で動けずにいたが、何人かはそっと電話を取り出し、警察に通報しようとしていた。
涼介はふと我に返り、小声で俺に言った。
「風雅、もし何かチャンスがあれば、逃げよう。けど、今は静かにしていよう。」
俺は小さく頷いたが、頭の中は混乱していた。どうすればいいのか、何も思いつかない。ただ恐怖で体が動かない。
「お願い、何も起こらないで...」
奈々は涙目になり、震える声で言った。
その時、店の外から小さな音が聞こえた。車のエンジン音だろうか?外を見る余裕もなく、俺は強盗の動きを注視していた。
「おい、早くしろ!」
強盗は再び店員に叫び、銃をさらに強く握りしめた。店員の手は震え、札束を袋に詰める手が遅い。
「これ以上待てないぞ!」
強盗は苛立ちを隠せず、店内を見回した。その視線が一瞬、俺たちに向けられたとき、全身に冷たい汗が流れた。俺たちはじっと息を殺していた。
やがて、外からさらにエンジン音が大きくなり、何台かの車が急停止する音が聞こえた。サイレンの音が近づいてくる。ついに警察が到着したのだろうか。
「警察だ! 君たちはそこから動くな!」
警察官の一人が拡声器を使って強盗に呼びかけた。強盗は動揺し、銃を振り回しながら店内を見渡した。店内のパニックは一層激しくなり、客たちは隠れる場所を探して床に伏せた。
俺は必死に冷静さを保とうとしたが、自分の無力さに苛立ちを覚えた。「こんな時に何もできないなんて...」心の中で自分を責めた。
その瞬間強盗が銃を空中に置いて吹っ飛び、天井の照明に当たり、ガラスが飛び散った。警官のスキルだろうか。
強盗は地面に倒れた後、立ち上がった。その顔は凶暴な表情に歪み、手には何かを放つ準備をしていた。
俺は強盗がスキルを発動しようとしていることに気づいた。
強盗の影がこちらへとせまってくる。俺は何も反応できなかった。強盗の影が俺の影を掴んだ時、動けなくなる感触がする。
「アガッ!」
俺の影が首を絞められた時、俺自身も硬直した。
「風雅!」
涼介の声がする。
もがく暇もなく、俺は強盗の方に引っ張られてしまった。
「こっちには人質がいるぞ!」
まずい。人質になってしまった。俺は焦りと共に強盗の腕の力が予想以上に強いことを感じた。意識が薄れていく中、最後の抵抗として、必死で強盗の腕を掴んだ。
その瞬間、何かが俺の中に流れ込んでくる感触がした。まるで真冬に寒さで凍えた手を暖炉の前にかざしているような、体全体を包み込むような温かさが広がっていくのを感じた。
「!?」
強盗からの影による拘束が解かれた。
「クソッ!!」
強盗は奈々の方に向かって急ぎ、影を使って銃を手に戻した。
もはや計画なんて考えていない、ただの衝動。そう感じた。
「奈々! スキルを使え!」
「—」
間に合わない!!
「やめろ!!!!」
俺が言ったのか?自分の無力さに怒りがこみ上げた。しかし、何もできない自分が悔しくてたまらなかった。
そのとき、俺の影が強盗の方に伸びていった。
「え?」
俺の影が強盗の腕を掴んだ。
バンッ!!
影が強盗の腕を掴んだと同時に、銃口が奈々からずれ、当たることはなかった。
何が起こっているのかわからないが、俺の影が強盗を拘束しようとしているのを感じた。
「くそっ!何で、お前が!!」
強盗は驚きと恐怖が入り混じった表情を浮かべ、影の力に必死に抵抗した。影の力で強盗の動きを封じたが、彼の抵抗は予想以上に強く、俺も必死で彼を押さえつけようとした。
「逃がさないぞ!」
俺は声を張り上げながら、影を強化して強盗をさらに押さえつけた。強盗は激しくもがき、なんとか自由になろうとするが、影の力が彼の動きを許さなかった。
「警察の人! こっちです!」
涼介が警察官に呼びかけた。警察官たちは素早く強盗に近づき、彼を取り押さえた。
「よし、もう大丈夫だ」
警察官は強盗を手錠で拘束し、彼を警察車両へと連れて行った。強盗は抵抗を辞め、無念の表情を浮かべたまま連行された。
俺はその場に立ち尽くし、全身が震えていた。何が起こったのか、まだ完全には理解できていなかった。影の力は一体何だったのか。そして、なぜ俺がその力を使えたのか。
「風雅、大丈夫か?」
涼介が心配そうに声をかけてきた。俺はゆっくりと頷いた。
「なんとか?でも、まだ信じらんないよ」
「そりゃそうだ。さっきのは本当に驚いた」
奈々も近づいてきて、俺の肩に手を置いた。
「ありがとう、風雅のおかげで助かったわ。」
俺は照れくさそうに笑ったが、内心ではまだ興奮が冷めていなかった。
その後、警察官たちは俺たちを警察署へと連れて行き、事情聴取を行った。強盗の動機や背景についても少しずつ明らかになっていった。彼は借金に追われ、スキルを使って強盗を働くしかなかったという。
調書を書き終わった頃には、もう23時を過ぎていた。家までは警察が送ってくれた。
家に帰った後も、高揚感でなかなか眠れなかった。ベッドに横たわりながら、今日の出来事を何度も思い返していた。
「一体、俺の中に何が眠っているんだろう...」
その問いは、俺の心の中でますます大きくなっていった。しかし、その答えを見つけるのはこれからの話だ。
「明日から、また新しい日が始まるんだ。」
そう自分に言い聞かせ、俺はようやくまどろみに落ちた。
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