【25話】新たな力、試し打ち
新スキルです。
俺は孤立しているオーガを見つけ、静かに【影】のスキルを発動させた。オーガの動きがピタリと止まり、その巨体が黒い影に絡め取られる。拘束時間はわずか6秒。だが、俺にはそれで十分だった。
オーガに近づき、手をその粗い肌に触れた瞬間、スキルの吸収が始まる。オーガの力が俺の体に流れ込み、その一部が自分のものになるような感覚が広がった。
「なんのスキルだ? グリム」
『これは【咆哮】だな。周囲の敵を威圧し、恐怖させて動きを一瞬止めるスキルだ』
このスキルは、オーガが持つ強烈な咆哮を再現するものらしい。動きを止める力は【影】もあるが、かなりの数に攻撃できる点はありがたい。俺はこの新たな力に満足しながら、静かにオーガの体を離れた。
「次はどうやって使うかだな…」
すると、何やらうめき声が聞こえてきた。オーガが、こちらに向かって顔を突き出し叫ぼうとしている。だが…
「ウガッ…ウガッ…?」
どうやら、【咆哮】が撃てずに混乱しているようだ。そのスキを狙い、オーガの胸を切り裂く。叫ぶのは諦めて棍棒を振り下ろすが、胸の傷が傷んでいるようで、どこかぎこちないものだった。攻撃を避けた俺はそのまま頭に『影刃』を入れ込んだ。ドロップアイテムを確認し、帰ることにする。
帰りにちょうど5体のゴブリンを見つけたので、【咆哮】を試すことにした。
「ウオォォォォォ!!」
スキルの使用を念じた瞬間、口が勝手に開き、自分の声とは思えぬ低く震えるような轟音が周囲に響いた。空気が一瞬で張り詰め、ゴブリンたちは全身を硬直させてその場に倒れ込む。
勝手に口が動く感覚は非常に気持ちが悪いな。というか…
「ノ”ド”ツ”ブ”レ”タ”」
濁点に更に濁点が付くぐらいには悲惨な声だった。【再生】を使い喉を回復する。
「あー、あー、あー、よし、快適だ」
何ならいつもより出やすい気がするな。
調子の良くなった俺は、ぶっ倒れているゴブリン5体のスキルを奪いながら、『影刃』を頭に突き刺していく。
「歌でも一つ歌いたい気分だなぁ」
ブスブス
ゴブリンの処理が終わり、魔石とアイテムの回収が終わったので、ダンジョンを出てギルドに向かう。
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《次回》次のターゲットを決めます。
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