【24話】新宿ダンジョン第三層突入
今回3000文字。vsオーガです。
授業が終わったあと、俺は真っ先に新宿ダンジョンへと向かった。
新宿駅の雑踏をかき分けながら、地下へと続く階段を下りる。新宿ダンジョンは駅の地下に直結しているため、平日の夕方は通勤客と冒険者で混み合っている。ダンジョンの入り口にたどり着くと、すでに数人の冒険者が待機しているのが見えた。
「君、今日も来たんか?」
入り口の警備員が俺に声をかけてくる。彼は毎日のようにここで見かける顔だ。
「ええ、今日も軽く探索してから帰ろうと思ってます」
俺は軽く笑いながら返事をした。
「気をつけてな。最近はモンスターの動きが活発だから、油断せずな」
言われてみれば、一番最初にこのダンジョンに入った時、ゴーレムが第一階層にいた。通常は5階層のモンスターだ。どういう原理だろうか。
「わかりました。ありがとう」
警備員に軽く手を振って、俺はダンジョンの中へと足を踏み入れた。
新宿ダンジョンは初心者向けから上級者向けまで、幅広い層が楽しめるようになっている。ダンジョンの構造は複雑で、毎回新たなルートが生成されるため、何度訪れても飽きることがない。
今日はどんなモンスターが待ち構えているのだろうか。
ダンジョンの中に入ると、冷たい空気が肌に触れた。薄暗い通路を進みながら、周囲を警戒する。足音が響く中、俺は自分のスキル【影】を使い、体を少し軽くして移動速度を上げた。
颯人に言い訳するときのデマカセだったが、成功してしまった。
しばらく進むと、前方にスライムの群れが現れた。さほど強くないが、油断は禁物だ。
「さて、軽くウォーミングアップするか」
俺は自分にそう言い聞かせながら、戦闘態勢に入った。そして、【身体強化】のスキルを発動させる。体内にエネルギーが満ちる感覚があり、筋肉が一瞬で引き締まる。力がみなぎり、感覚が鋭くなった。
「さあ、行くぞ」
【身体強化】を使っていることで、動きが一段と早くなり、スライムたちに対して圧倒的な力で立ち向かう。『影刃』はしまい、スライムを思いっきり掴む。能力を奪ったら、拳を振り下ろす。そのたびに、スライムは弾け飛び、消滅していく。素早く次の敵に狙いを定め、確実に仕留めていく。それの繰り返しだった。
数分もかからずに、目の前のスライムは全て倒されていた。俺は深呼吸をして体をリラックスさせ、戦闘から離れた。
『全部【再生】だ』
こんなんなんぼあっても良いですからね
「今日は2階層より奥に進みたいな」
そして俺は、2階層へと続くポータルに入った。
2階層は相変わらず、気味の悪いゴブリン共が彷徨いている。
4匹の集団を見つけた。俺はすかさず【影】を使い、ゴブリン共を一気に拘束する。
ゴブリンたちは抵抗しているようだが、全く【影】には影響しない、成長したのかは知らないが、4体同時でも拘束できるようになった。
「グリム、何か知らないか?」
影越しだとスキルを奪うまで時間がかかるため、グリムで暇つぶしする。
『前検証してたの忘れたのか?【影】の力は精神力依存だ。そして精神というのは肉体の状態にかなり引っ張られる。【身体強化】を持ったおかげで、強化されるスキルも多いだろうな』
へぇ、なんかスキルで精神まで変わってるって考えると怖いな。
『別にそう大した影響はない、心配せず奪ってけ』
まぁ強くはなりたいし、ジャンジャンバリバリ奪っていくか。
そんなやり取りをしているうちに、ゴブリンのスキル吸収が終わっていた。
『【短剣術】が4つだな』
新しいスキルでないことに少し落胆しながらも、便利なスキルに感謝しながら次に進む。
今日は時間がないため、こちらに気づいていないゴブリンたちは、無視する。
そしてボス部屋に到着したが、どうやら復活のクールタイム中のようだ。
楽に3層まで進めることにラッキーと思い、三層に突入する。
低いうめき声がして、そちらを見ると、3体のオーガだった。
俺は影で自分を隠しながらそっと近づいていく、まだ実力差が分かっていない分、複数体と一気に戦うのは好ましくない。孤立している個体を探すため、ステルスだ。
オーガの3体は、各々が低いうめき声を発しながらゆっくりと歩き回っている。目の前には、孤立している一体のオーガが見える。俺は【影】の力でさらに自分の存在感を消し、ゆっくりとそのオーガに接近した。オーガは身長が2メートルを超え、筋骨隆々の体をしている。手には巨大な棍棒を握りしめていて、その姿だけで圧倒されそうになるが、俺は冷静さを保った。
「まずは、こいつを仕留める」
心の中でそう呟き、【身体強化】を再び発動させる。全身に力がみなぎり、動きがさらに俊敏になる。
俺は一気に距離を詰め、オーガの背後に回り込んだ。その瞬間、『影刃』を取り出し、オーガの後ろ足に狙いを定める。躊躇なく刃を振り下ろし、鋭い切っ先がオーガの腱を切り裂いた。オーガは痛みに耐えきれず、大きなうめき声を上げて膝をついた。
「今だ」
俺は一気に間合いを詰め、オーガの首元に向かって『影刃』を突き刺す。だが、オーガの反応は早く、巨大な腕で俺を振り払おうとした。しかし、俺はその動きを読んでおり、寸前で攻撃をかわす。
もう一度、俺はオーガの背後に回り込み、今度は首元に正確に『影刃』を突き立てた。刃が深く食い込み、オーガの動きが止まる。その巨体がゆっくりと前に倒れ込む音がダンジョン内に響いた。
俺は呼吸を整えながら、倒れたオーガの上に立ち、勝利を確信した。だが、油断は禁物だ。まだ他のオーガが残っている。
「一体目、終わりだな」
オーガが倒れたあと、俺はその巨体が消えていくのを確認しながら、地面に落ちたドロップアイテムに目を向けた。
そこには、深緑色に輝く中型の魔石と、オーガの鋭い大きな牙があった。これらは売ればそれなりの価値がありそうだ。
俺は魔石を手に取ってバッグにしまい、その後にオーガの牙も拾い上げた。これで少しはいい稼ぎになるだろう。軽く息を整えて、俺は次の探索へと進む準備を整えた。
一体の戦力を確認した俺は、先程の3体のオーガを相手に戦いを挑む。まず、孤立している1体に注意を集中させた。手元にある『影刃』が漆黒の光を放ち、まるで闇から生まれた刃のようにしっかりと実体を持っている。
俺は音を立てないように足を運び、オーガの背後に素早く接近する。影を利用して気配を消し、次の瞬間には『影刃』を一気に振り下ろした。鋭利な刃がオーガの厚い皮膚を容易に切り裂き、苦悶の声を上げる間もなくその巨体は地面に崩れ落ちた。
その瞬間、残りの2体がこちらに向かって突進してくる。俺は影を操り、1体の足元を拘束する。動きを止めたオーガに、今度は正面から『影刃』で一撃を加える。重い一撃を避けながら、腹部に深く突き刺し、さらに横へと一閃を加えて致命傷を与えた。
もう1体のオーガは間髪入れずに迫ってくるが、俺はすかさず『影刃』を逆手に持ち替え、鋭い突きを繰り出す。オーガの胸に突き刺さり、刃が骨まで達する。そのまま【身体強化】の力を使い、オーガの体を押しのけるようにして刃を深く貫通させた。
最後の1体も、影による拘束と『影刃』の力で動きを封じられ、再び刃を振りかざし、その巨体を切り裂いた。【影】、【短剣術】、『影刃』の連携で、3体のオーガは次々と倒れ、周囲に静寂が戻った。
俺は息を整え、倒したオーガたちから魔石と牙を回収する。
『今の戦闘で【短剣術】を一つ消費しきったぞ、あと4つだ』
グリムの報告が脳内に響く。
まじか。前の探索でも使ってたせいもあるだろうが、なくなるとなると悲しいな。
ボス部屋に入るの時間はないので、オーガからスキルを頂戴してから帰るとしよう。
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《次回》【25話】スキル頂戴いたす
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