【21話】勝利と結果
さて、圭吾戦、事後です。
颯人と、首を絞められていた女の子が横たわる部屋には、重苦しい空気が漂っていた。俺はその場に膝をつき、まず颯人の状態を確認する。顔面には殴られた痕がくっきりと残り、呼吸は浅く不規則だったが、まだ意識はあるようだ。
「…大丈夫だ、颯人。治すから、少しの間、我慢してくれ」
俺はポーションだと誤魔化すために水を取り出し、彼に飲ませる。もちろん、ただの水だ。しかし、【再生】の能力がバレたくないからだ。彼の体が微かに動き、唇がわずかに開いた。
「…風雅…」
かすれた声で俺の名前を呟く。安堵の色が彼の目に浮かんでいた。
「無理しないで。無事で良かった...」
俺は彼の肩に軽く手を置き、彼を安静にさせた。次に、首を絞められていた女の子に目を向ける。彼女の黒髪は乱れて肩にかかり、少し内巻きになった毛先が揺れている。前髪は額にかかるように整えられ、その顔には苦しげな表情が残っていたが、どこか落ち着いた雰囲気も感じられた。
首には圭吾が残した生々しい痕がくっきりと浮かんでいる。皮膚が赤く腫れ、彼女が感じた苦痛が、まだ見て取れる。
「…君も、少しの間、痛みに耐えてくれ」
俺は静かに呟きながら水を取り出し、彼女にも飲ませる。彼女が飲むのを確認した瞬間、【再生】を使った。光が彼女の首を包み込み、少しずつ痕が消えていく。だが、彼女の呼吸はまだ浅く、肩が小刻みに震えていた。
「…大丈夫だから、安心して。君は助かったんだ」
俺は彼女の目を見つめながら、優しくそう言葉をかける。彼女は微かに頷き、少しずつ呼吸が落ち着いていった。
「ありがとう…」
かすれた声で彼女が呟く。
俺は軽く頷き、彼女をそっと横に休ませた。部屋には静けさが戻り、俺は二人の無事を確認しながら、胸の中で一つ深く息をつく。今は、彼らを守れたことに少しだけ安心していた。
彼らの無事を確認していると、サイレンが鳴り響き始めた。
部屋に響くサイレンの音が、俺の思考を現実に引き戻す。音は次第に近づき、警察の到着を告げていた。俺は少し身を起こし、二人の状態を再確認する。颯人と女の子の安心した表情をしている
「すぐに助けが来るから、大丈夫」
俺は二人に軽く微笑みかけながら、外から響く音に耳を傾ける。外で警察官たちの足音が近づき、ドアが開く音が聞こえてきた。俺は冷静さを保ちながら、二人が安心できるよう配慮しつつ、警察官たちに状況を説明する準備をした。
「ここです。助けが必要な二人がいます」
俺は警察官に声をかけ、部屋の中を指し示す。彼らが二人の状態を確認し、必要な処置を行うのを見守りながら、心の中でこれからの展開に備え始めた。俺自身も、この先どう対処すべきかを考えながら、深く息をついた。
サイレンの音が次第に静まっていく中、警察官たちが部屋に入ると、一瞬、場の空気が張り詰めた。俺は落ち着いた声で状況を説明し始める。
「彼らは襲われました。彼は顔を殴られ、彼女は首を絞められていました。でも、今は大丈夫です」
警察官の一人がメモを取りながら、状況を確認していく。別の警察官が颯人と女の子に近づき、彼らの状態をチェックし始める。俺は冷静さを保ちながらも、心の奥で少しずつ安心感が広がっていくのを感じていた。
「お前も怪我はないのか?」
警察官が俺に問いかける。
俺は軽く首を振った
「俺は無事です。でも、彼らが早く手当てを受けられるようにお願いします」
と答える。【再生】は効いてるだろうが、念のためだ。警察官は頷き、無線で救急車を手配し始めた。
「ありがとう…風雅…」
颯人のかすれた声が耳に届く。彼は微かに笑みを浮かべ、痛みをこらえながらも、助けてくれたことに感謝しているのが伝わった。
「無理しないで、もうすぐ救急車が来るから」
俺は彼の肩に軽く手を置いて、彼を落ち着かせる。
女の子も少し顔を上げ、俺に弱々しい微笑みを返してくれる。
「ありがとう…」
「あの、もう安全だから、あとはしっかり休んで」
俺は(たぶん)優しく声をかけ、彼女の状態が安定してきたことに少し安心する。
外では救急車のサイレンが再び鳴り響き、警察官たちが彼らを外に連れ出す準備を進めていた。俺の頭には、柴田圭吾のことが浮かんでいた。
「(柴田圭吾…)」
その名前が胸の中で重く響く。彼がなぜ、あのような暴力的な行動に走ったのか。彼を変えたのは血晶石かもしれないが、今はもう、取り返しのつかない事態になってしまった。
警察官たちは颯人と女の子を丁寧に救急車へ運び出し、俺は自分の感情を整理しようとしていた。俺はこれからどう進んでいくのか、深く考えながら、最後に警察官に確認した。
「ポーションを使ったから、大丈夫だと思いますが、念のために検査をお願いします」
救急隊員は頷き、颯人と女の子をストレッチャーに乗せていく。
颯人は顔をしかめつつも、俺に向けて微かに笑った。
俺はそれに対して微笑み返した。傍からみたらキモいだろうか。
俺は再度強調し、救急隊員たちが彼らを搬送していくのを見守った。
外の風は夜の冷たさを感じさせ、サイレンの音が次第に遠のいていく。俺は少しだけ安心したものの、啓吾のことが胸に重くのしかかっていた。
「これから、どうなるんだろうな…」
『あいつのスキル奪えばよかったのに...』
やかましいグリムであった。
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《次回》颯人がスキルを教えてくれます。
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