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【14話】朝活ー『ゴブリンの王』

朝一発目からダンジョンに行きます

 翌朝、3時、まだ住宅街が静まり返っている時間帯に、俺は新宿ダンジョンへ向かうことにした。昨夜手に入れた【身体強化】の力がどれほどのものなのか、それを確かめるためには実戦が必要だ。そして、その場所はダンジョン以外にないと確信していた。


 まだ少し眠いな…


 寝不足の体を無理やり起こし、ふらつく足を引きずりながら家を出る。暗闇の中、冷たい朝の空気が肌を刺す。頭の中には昨夜の出来事がまだ鮮明に残っていて、その感覚を思い返すたびに、体が少しずつ目覚めていく。


 俺は駅に向かう途中、ふと立ち止まって空を見上げた。夜空にはまだ星がちらほらと輝いている。星を見つめながら、ゆっくりと歩を進めた。


 電車に乗り込むと、車内はほとんど人影がなく、静寂に包まれていた。窓越しに映る自分の顔は少し疲れて見えるが、心は高揚感で満たされている。駅のアナウンスが流れるたびに、目的地に近づいていることを感じ、少しずつ気持ちが引き締まっていく。


 駅を出ると、まだ静まり返った新宿の街が目に飛び込んできた。昼間とは全く違う雰囲気が漂い、まるで別の世界に迷い込んだかのようだ。俺は新宿駅のコインロッカーへ向かい、学校の荷物を中に入れる。今は身軽になっておく方がいい。


---


 荷物を預けた後、新宿の街を抜け、ダンジョンの入り口に向かう道すがら、俺は昨夜手に入れた【身体強化】の力がもたらす感覚を何度も確かめていた。腕を軽く振るだけで、筋肉が引き締まり、力が漲るのを感じる。歩くだけでも、地面にしっかりと根を張ったかのような安定感があり、全身が一体化したような感覚がある。


 この力は、俺の体に常に備わっている。発動型のスキルではなく、パッシブスキルのようだ。だからこそ、ハルトから奪った瞬間に彼は突然能力無しの身体で動けなくなったのだろう。そんな風に考えると、俺はこの力の重さを実感せずにはいられなかった。


 しかし、手にしたからには、この力を存分に使いこなすしかない。ダンジョンが、その答えを俺に教えてくれるだろう。


---


 俺はダンジョンに入り、早速【身体強化】の力を抑えずに開放する。体が羽のように軽く、足は大地を強く蹴る。スライムを適度に能力を奪いながら狩り、進む。第一階層のキングスライムは討伐されてからリセットされていなかったため、俺はそのまま第二階層、ゴブリンのフロアへと向かった。


 第二階層に入り、通路を進むと、ゴブリンたちが視界に入った。彼らはすぐに俺に気づき、短剣や棍棒を振り回しながら近づいてくる。これから始まるのは、単純な作業だ。


『影刃』を取り出し、冷たい刃を軽く振る。最初のゴブリンが前に現れると、刃が一閃し、ゴブリンはその場で倒れた。動きはスムーズで、特に感情もなく淡々と作業を続ける。


 ゴブリンたちは次々と襲いかかってくるが、その動きは遅く、『影刃』で簡単に切り裂ける。切り裂くたびにゴブリンが倒れ、地面に崩れ落ちる。攻撃を避けるために特に動きもせず、ただ必要な作業をこなすだけだ。


 最後のゴブリンが残っている。こちらに迫ってくるが、『影刃』を振り下ろすと、一瞬で倒れる。周囲には倒れたゴブリンたちが散らばり、戦闘が終了した。


 作業が終わり、『影刃』を収める。次のステージへ進む準備が整った。


「まぁ、油断は禁物だし」


 俺は自分にそう言い聞かせ、慎重に歩を進めた。道中、何度かゴブリンの小隊に遭遇したが、彼らの動きは鈍く、【身体強化】の力を前にしては敵ではなかった。軽く心を引き締め、第二階層の奥へと進む。


 深部にたどり着いた俺は、広い空間に出た。そこはまるでゴブリンたちの集会場のような場所で、中心には異常に大きな影が見えた。これが、第二階層のボスであるゴブリンロードだ。


「ここが…終点か」


 ゴブリンロードは俺の存在に気づくと、冷たい目でこちらを見据え、口元を歪めて低く唸り声を上げた。それが合図だったかのように、周囲に隠れていたゴブリンたちが一斉に現れ、俺を囲むようにして攻撃を仕掛けてきた。


 俺は『影刃』を抜き、【身体強化】の力を瞬時に開放する。全身に溢れる力が、俺の筋肉をさらに強化し、反応速度が上がる。『影刃』が空気を切り裂くたびに、ゴブリンたちが次々と倒れていく。【速攻】で腕の振りをさらに速め、次々と敵を斬り裂く。


 ゴブリンロードは、その間もじっと俺を観察していた。まるで、自分が動くまでもないと言わんばかりに手下たちに攻撃を任せているようだった。


「そんな悠長なことをしていられるか!」


 決意を固めた俺は、ゴブリンロードに向かって突進した。だが、その巨体は予想以上に重く、素早く反応して巨大な斧を振り下ろしてきた。斧が地面に突き刺さり、周囲に衝撃波が広がった。その一撃で、ゴブリンたちも吹き飛ばされるほどの威力だ。俺はすかさず【身体強化】をさらに強めて、間一髪で斧を避ける。しかし、衝撃波は避けきれず、俺の体が吹き飛ばされる。


「くっ…!」


 体が宙を舞い、壁に激突する。鈍い痛みが右腕に走り、骨が折れた感覚がした。しかし、俺はすぐに【再生】を発動させ、折れた骨がゆっくりと再生していくのを感じる。まだ戦える。


「終わらせてやる!」


 ゴブリンロードの攻撃を避け続け、少しずつ彼の体力を削っていく。奴の動きが鈍くなり始めたのを見計らい、俺は全力で『影刃』を振り下ろす。【短剣術】を駆使し、精密な一撃をゴブリンロードの側頭部に叩き込む。


「これで終わりだ!」


 渾身の一撃がゴブリンロードの意識を刈り取り、その巨体がぐらりと揺れた後、地面に崩れ落ちた。周囲のゴブリンたちも、その姿を見て一斉に後退していく。


 ゴブリンロードの頑強な体に苦しみながらも、最後には俺の一撃が決まり、静けさが戻ったダンジョンの奥深い空間で、俺は一息ついた。

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