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【外伝】情報屋ー『黒川の場合』

情報屋おぢ視点の後日談です。

黒川修司――本名は斎藤俊郎。45歳の彼は、裏社会の情報屋として長年の経験を持つ。彼は広範なネットワークを駆使し、必要な情報を迅速に提供することで知られている。しかし、その情報の正確さと迅速さには相応の代償が伴い、料金は決して安くはない。


修司は、冷静で計算高い性格を持ち、常に利益を最優先に考える。情報提供者としての彼は、リスクを恐れず、時には危険な領域に踏み込むこともある。そのため、彼の持つ情報は裏社会では非常に価値が高く、多くの依頼者が彼に頼るのだ。


-----------


朝日がゆっくりと歌舞伎町のビル群を照らし始めた。薄暗い夜の闇が消え、昼の顔が戻ってくる中、俺はいつものようにバーの奥の席に腰を下ろしていた。ここは俺にとっての「事務所」。情報を集め、整理し、必要な人間に届ける場所だ。朝一番に届いた情報は、興味深いものだった。


「ハルトが、最近おかしいらしい。」


バーのマスターが、世間話のようにさりげなく漏らした情報が耳に残った。あのハルトが変わった?それだけでは終わらなかった。


「どうやら、あいつが雑用をしてるって話だぜ。」


これは聞き逃せない。歌舞伎町のギャングの中でも、ハルトは頭角を現し、恐れられていた。【身体強化】のスキルを持つ男として、多くの取引や戦いでその力を証明してきた。だが今、そのハルトがギャングの中で雑用をやっているというのは異常事態だ。


俺は軽く頷き、黙ってグラスに手を伸ばした。カウンター越しに情報を得るために話し込むのは、ここではよくあることだが、この話は一歩踏み込んでみる価値がある。いつものように、何気ない質問を織り交ぜながら、話の筋を探っていく。


「ハルトが、そんな風に落ちぶれるなんて誰が予想したかね。何かあったのか?」


「詳しいことは誰も知らねえ。だが、数日前にあいつが取引をしていた時、妙なことがあったって噂だ。なんでも、突然、力を失ったらしい。」


「力を失った、か…」


その言葉が妙に引っかかった。【身体強化】を持つハルトが、力を失う?そんなことが本当にあり得るのか。何が起きたのか、確かめる必要がある。俺は名刺入れから一枚のカードを取り出し、軽く指で弾いてみた。


「これは面白いな。誰かが彼を狙ったか、それとも…」


バーの常連客たちが賑やかに話す中で、俺は静かに考えを巡らせていた。ハルトがただ力を失うだけで終わるはずがない。力を失ったとしたら、その代わりに何か得るものがあるか、あるいはそれを取り戻そうとするだろう。彼がこのまま雑用に甘んじるような男ではないことは、誰よりも分かっている。


その時、この間話した青年の風貌が脳裏に浮かぶ。あの時はなんとなく、彼にタダで情報を渡した。彼がカマをかけていたのも分かった。ただ、彼の風貌や態度が、ただの情報探しのためではないような気がしていたのだ。


その青年、あの場で見せた様子はまるで何かを探し求めているようだった。能力者を探していると言っていたが、その目には異常な輝きがあった。どうにも普通ではない。おそらく、何か特別な理由があって能力者を探していたのだろう。


あの時、青年がどんな意図で情報を得たのか、そしてその後の行動は一体どうだったのか。ふと、彼がやったのかもしれないという考えが頭をよぎる。彼の動きが気になって仕方がない。あのような輝き、あのような目的を持つ者が、この街に何をもたらすのか、そしてその先にどんな影響を与えるのか。


ふと、目の前に置かれたグラスを持ち上げ、薄く笑った。ここから先は、彼がどう動くかを見極めることが重要だ。俺の仕事は情報を売ることだが、今はその動向を追うことが第一だ。


ハルトという駒が再び動き出す瞬間を見逃すわけにはいかない。彼が這い上がるのか、さらなる深みに落ちるのか、それを知るためには、彼の動向を注視する必要がある。


「さて、次はどうなるか…」


歌舞伎町の夜は今日も騒がしい。だが、俺の目の前で今、新しいゲームが始まろうとしている。

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