【第13話】奪う力ー『強靭な身体』
外伝の風雅視点です
グリム一週間に一度人間からスキルを奪わないと死ぬと言われてから2日も経っており、最後に【影】を奪ってから6日経っており、もうすでにあと1日しか時間が残されていなかった。
家に戻ると、俺はすぐに次のターゲットを探す必要性に迫られていた。あと一日しかないぞと、グリムはずっと脅かしてくる。スキルを奪わなければならないプレッシャーが胸に重くのしかかり、頭の中でその声が響いているような気がする。
「時間がない…早くしないと…」
焦燥感に駆られながら部屋を歩き回る。
手元には、今まで調べてきた情報が書かれたメモが散らばっている。次のターゲットを絞るために必要な手がかりを見つけるため、俺はそのメモを手に取り、一つ一つ見返す。しかし、どれも決定的な情報には欠けていた。
「くそっ…どうすればいいんだ…」
苛立ちが募り、拳を握りしめる。
思い切って外に出ることにした。俺は電車に乗り、歌舞伎町へ向かった。電車の揺れに身を任せながら、スマホをいじり、さらに情報を探す。だが、表向きの情報では俺の求めているものは見つからない。
「歌舞伎町なら、何か手がかりがあるはずだ…」
車内でスマホをいじりながら、何か手がかりがないかと考えていた。到着すると、まずは街を歩き回り、情報を集めることにした。裏通りのバーや路地裏の小さな店、噂好きな人々が集まる場所を回って、耳をそばだてる。夜の歌舞伎町は混沌としていて、多くの情報が飛び交っていた。
歌舞伎町のネオンが輝く中、混沌とした夜の街に足を踏み入れる。人々が行き交う中、能力者に関する情報を得るために怪しげな裏通りを歩き回る。いくつかの店の前を通り過ぎ、適当に目をつけたバーに入った。音楽が大音量で流れる中、俺はカウンターに座り、周囲を観察していた。
バーテンダーが俺に近づいてきた。
「何かお飲み物を?」
「モヒートをお願いします」
と俺は注文した。もちろんノンアルコールだ。
しばらくして、一人の情報屋が俺に近づいてきた。中年の男で、薄暗い照明の下でもその鋭い目つきが印象的だった。
「なにか探しものですか?」
彼は不自然に低い声で話しかけてきた。
俺は一瞬戸惑ったが、すぐに警戒を解かずに返事をする。
「……ちょっと情報が欲しいんだ。最近、特定の能力者が動いているって話を聞いたんだけど、何か知ってるか?」
ちなみにそんな話は聞いてない。ブラフというやつだ。
男は少しの間、俺を観察するように見つめた後、ゆっくりと話し始めた。
「【身体強化】のスキルを持つハルトってやつがいる。最近、勢力を拡大してるって話だ」
「ハルト?」
俺は名前を繰り返しながら、その響きを頭に刻みつけた。
「どこでそいつに会える?」
情報屋は肩をすくめ、
「この近くの廃工場を根城にしているって話だ。だが、気をつけろ。奴は相当危険だ」
と言いながら、ポケットから名刺を取り出し、俺に手渡してきた。
黒川 修司
情報屋
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電話: 03-XXXX-XXXX
メール: info@kurokawa-shuji.bomb
住所: 東京都新宿区歌舞伎町1-XX-XX
住所書くの強気だな。情報屋ってそういうもんなのか。
「今回はサービスだぜ、若いの」
俺は感謝の言葉を口にせず、その場を後にした。その男が俺の次のターゲットだと直感した。歌舞伎町の暗がりを進み、廃工場へ向かう道すがら、俺は心の中で決意を固めていた。
夜の歌舞伎町はいつも以上に静かで、廃工場の周囲には人影がほとんどなかった。俺は工場の入り口から少し離れた物陰に身を潜め、ハルトの取引が終わるのをじっと待っていた。周囲には古びた廃材や、錆びついた金属の破片が散らばっており、風が吹くたびにかすかに音を立てていた。
時間がゆっくりと流れる中、工場内から低い声が漏れ聞こえてきた。取引の内容まではわからなかったが、ハルトと相手が言葉を交わしているのは間違いなかった。俺はじっと耳を澄ませ、隙を見逃さないように集中していた。
ハルトの取引が終わるのをじっと待っている間、俺は工場の一角で影に身を潜めていた。取引が終わったのを確認すると、ゆっくりと行動を開始した。
影が俺の体からゆっくりと広がり、廃工場の薄暗い部屋を静かに覆っていく。光があったはずの場所が次第に闇に飲み込まれ、部屋全体が重く不気味な暗闇に変わっていく。蛍光灯のかすかな光さえも、影の深みでかき消されていくようだった。
ハルトはまだタバコを吸いながら、取引の余韻に浸っていたが、次第に異変に気づいた。辺りが急に暗くなったことに眉をひそめ、周囲を見渡す。だが、もう遅い。俺はすでに彼のすぐ近くにまで接近していた。
部屋全体が影に覆われた今、俺は一瞬でハルトの背後に立ち、静かに声をかけた。
「ちょっといいか?」
静かに声をかけると、ハルトが振り向いた。その瞬間、俺の手が彼の腕に触れた。
「何をする!」
ハルトの驚きと怒りが混じった声が耳に入る。しかし、もう遅い。俺の能力が発動し、彼の【身体強化】の力を吸い取り始めた。
「クソっ、やめろ!」
彼は必死に抵抗しようとしたが、俺が【身体強化】を奪っていくにつれて俺の握力は次第に強まり、ハルトの力はどんどん失われていく。【身体強化】の力が失われるとともに、彼の体から力が抜け、無力感に包まれていくのが分かる。
「クソ...顔が【影】で見えなかった...」
彼の声がかすれる中、俺は最後の力を吸い取った。ハルトの身体から力が完全に抜け、ただの無力な存在となった瞬間だった。影がその姿を再び覆い隠し、俺は闇の中に紛れ込むようにしてその場を離れた。ハルトが無力感に打ちひしがれたまま、地面に倒れ込む姿をちらりと見ると、俺はすでに次の行動に意識を移していた。
ハルトから奪い取った力が俺の体内に流れ込み、瞬時に身体が軽く、強靭なものになっていくのを感じた。新たに手に入れた【身体強化】の能力が、全身に溢れ出す。指先に力を込めると、その強大な力がまるで波のように押し寄せ、俺を包み込んでいく。
「これが【身体強化】の力か…」
心の中でそう呟き、俺はその力を試すべく一歩を踏み出した。その一歩が軽やかでありながらも、地面を蹴る感覚は今までにないほど確かなものだった。影の中から躍り出るようにして、俺は廃工場を後にした。音もなく、影に溶け込むようにして進む俺の動きは、まるで風のようだった。
仲間たちが近づいてくる気配を感じたが、すでに俺はその場を去っていた。影と身体強化が融合した俺の存在は、これまで以上に強く、速くなっていた。背後に迫る足音を完全に振り切り、俺は一瞬で建物の外へと飛び出した。目に映る街並みが、まるでスローモーションのように流れていく。
「こんな力が手に入るとは…」
一瞬の喜びを感じながらも、俺はこの新たな力を冷静に制御し、次の一手を考えていた。歌舞伎町の喧騒から逃れ、暗がりの路地へと入り込むと、再び影の中に身を潜めた。【影】と一体化し、誰にも気づかれずに、俺はその場から完全に姿を消した。
新たに手に入れた身体強化の力を胸に、俺は次の目的地へと向かう。この力があれば、俺はさらに強大な存在となり、闇の中で生き残ることができる。歌舞伎町の闇を駆け抜け、俺はさっそうと退散した。
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