【12話】『覚悟』
ここまで序章。グリムからの発表。
家に戻った俺は、先程買った装備品を手に取りながらニヤニヤしていた。すると、部屋の隅からグリムと思われる【影】が現れ、暗闇の中からその声が響く。
「風雅、言っておきたいことがあるんだ。ケッケッケ…」
一瞬、体が凍りつくような感覚を覚えた。心臓が早鐘を打つ。真剣な面持ちでグリムの姿を見つめる。
「それにしても…お前、【影】で話せるようになったのか?」
グリムはその冷酷な笑みを崩さず、余裕を持った口調で応じる。
「まぁな。さて、実は伝え忘れていたことがあるんだ。」
「いったい、何を言いたいんだ?」
グリムはその目に冷酷な光を浮かべながら、じわじわと話を進める。
「ケッケッケ、実はな…一週間に一つ、人間から能力を奪わなければいけないんだよ。そうしないと、君は死ぬ。間違いなく、な。」
俺はその言葉が頭に染み込むのを感じる。目が見開かれ、心臓が鼓動を早める。息を呑む瞬間、グリムの言葉が次第に現実味を帯びてくる。
「は?人間からってなんだよ…ダンジョンで【スキル】奪いまくってるじゃねえか」
「ダンジョンのモンスターから奪ったスキルには使用回数や制限時間があるんだよ。」
「ちょっと待て、今なんて…?」
風雅の心臓は激しく打ち始め、思わず手が震える。冷静に振舞おうとするが、内心は大混乱だ。自分の人生がかかっていると理解したとき、彼の瞳には恐怖と焦りが広がる。
「さらっと今、重要なことを言いやがったな、コイツ!」
-風雅は立ち上がり、焦りながらも冷静に状況を把握しようとする。しかし、その心中は完全にパニックに陥っていた。一週間に一つの「人間から」の能力奪取、【スキル】の使用制限。それが自分の命に直結していることを理解したとき、風雅はただただ呆然とするしかなかった-
「それが本当なら、どうすればいいんだ?どうやってそんなことを…」
グリムは冷酷に笑いながら、その様子を見て楽しんでいるかのようだった。
「ケッケッケ…君が自分で考えなければいけないことだよ。君の命がかかっているんだから、しっかりと考えなきゃね。さあ、時間がないよ。君が次に何をするか、よく考えたほうがいい。」
-風雅は、その場に立ち尽くし、頭の中でその言葉が繰り返される。生死をかけた現実に直面し、彼の心はますます乱れていった-
家族が外出しているのを確認した俺は、部屋の隅に現れたグリムに対して、目を鋭くして問い詰めた。
「それが本当なのか?お前が言ってることが、全て本当なんだろうな!」
グリムはその冷酷な笑みを崩さず、あくまで余裕を持った口調で応じる。
「ケッケッケ…もちろん、本当だよ。オマエの命がかかっているからこそ、真実なんだ。どうせなら、少しでも早く理解して、行動に移したほうがいいだろうね。」
俺の心臓は急速に鼓動を打ち始めた。正論のように話してくるグリム二腹が立つ。汗が額に滲み、手が震えてくる。グリムの冷徹な目つきと不敵な笑みが、全てが真実であることを示している。信じたくない気持ちが、どうしても消えない。
「本気で言ってるのか?こんなこと、冗談じゃないのか?」
声が震え、思わず叫ぶようなトーンになってしまった。内心は恐怖と混乱でいっぱいになっている。これが単なる冗談であることを心から願った。
グリムはその反応を楽しむかのように、さらに口元をゆるめる。
「ケッケッケ…冗談じゃないぞ、風雅。オマエがどう受け止めるかはオマエの自由だが、現実は変わらない。オマエは一週間ごとに人間から能力を奪わなければ、死ぬ、この事実は変わらない」
俺はしばらくの間、グリムの言葉に圧倒され、思考が停止したような感覚に襲われる。冷静さを取り戻そうとするが、その焦りと恐怖が全身を支配している。心の中でグリムの言葉がぐるぐる回り続け、俺の思考を止めてしまっている。
「どうして…どうしてそんなことを…」
問いを口にするが、グリムはただ楽しげに笑い続けるだけだった。
「ケッケッケ…オマエがその答えを知りたければ、自分で考えるしかないだろう。さあ、時間がない。どうするかはオマエの自由だ」
その言葉に俺は立ち尽くし、呆然としたまま、頭の中でグリムの言葉が回り続ける。命がかかった現実を受け入れながら、どうにか冷静さを取り戻し、次にどう行動すべきかを考え始める。しかし、焦りと恐怖が俺を支配し、心は混乱の渦に巻き込まれていった。
その瞬間、心の中で激しい葛藤が渦巻く。グリムの言葉が耳に響き、俺の思考が混乱する。人から能力を奪わなければ命が危ない、その現実を受け入れようとしても、どうしても感情が追いつかない。
「今まで、【スキル】など全くなかった俺が…せっかく手に入れたばかりの能力を、こんな形で手放すわけにはいかない…!」
手に入れたばかりのこの能力が、どれほど自分にとって大切なものかを考えると、どうしても受け入れられない。俺が長い間諦めていたこと、能力を手に入れることがどれほど困難で、そしてそのためにどれだけの努力をしてきたかを思い出すと、この現実がさらに苦しくなる。努力しても報われなかった時期が長かった。どうしようもなく無力だった自分が、ようやくこの能力を手に入れたのだ。そんな中で、この力を手放さなければならないという現実が、俺の心を締め付ける。
「俺はもう諦めていた。【スキル】なんて一生持てないんだと…だけど、せっかく手に入れたのに、命ごと手放すなんて…それだけはどうしても嫌だ!」
その思いが胸に込み上げ、どうしても諦めることができないという強いエゴが生まれる。冷静に振舞おうとするが、内心では深い焦りと恐怖に囚われている。心臓が激しく鼓動し、手が震える。全てが崩れ落ちる瞬間に直面しているかのような感覚が、俺を襲う。どうしても、この能力を手放すことができない。自分の中で、能力を得るために積み重ねた時間や苦労が、無駄になってしまうのが耐えられない。
「これは俺のエゴだ。感情論以外の何物でもない…だけど、俺はもう決めた。どんな困難が待っていようとも、この力を守るために全力を尽くす!」
そのエゴが、自分を駆り立てる。命がかかっているとはいえ、この力を守り抜くために、全力で戦うことを決意する。何があっても、この能力を手放すわけにはいかないという気持ちが強くなる。今までの努力や苦労を無駄にするわけにはいかない。たとえどんなに苦しくても、この能力を持っている自分を守るために、必死で戦うしかない。
「俺は選択をするんだ!出来るようになったんだ!」
不思議と心が落ち着く
「俺は生き延びるんだ!!」
その決意を胸に、俺は次の一歩を踏み出す準備を始める。生き延びるための道を切り開くと心に誓い、自分の力でこの困難を乗り越える覚悟を固めた。これが自分の新たなスタートだと感じながら、どんなに困難な選択が待っていようとも、全力で生き延びるための戦いを始める決意を固めた。
「ケッケ...いい目だ...」
そう言い残すとグリムの影は薄くなり、俺の体へと引っ込んでいった。
いかがでしたでしょうか、気に入っていただければいいねとポイントをお願いします。
次回は能力奪いの計画です。
あとTwitterもやっています。エピソード更新を報告しています。
ぜひフォローをお願いします→@owen_monokaki




