【第11話】暗闇の先に―『新たな防具』
今日は何-、今日は買い物ー。
新宿ダンジョンからの帰り道、俺は手に入れたばかりの【再生】のスキルに思いを馳せていた。しかし、アサシンゴブリンとの戦いで感じた不安は、まだ消えていない。今の装備では心もとないのは明らかだった。強敵に備えるために、より強力な防具が必要だ。決意を固め、俺は駅へと向かった。
新宿駅に到着し、電車に乗り込む。行き先は渋谷の「フォルティス・アーマー」。この店は高品質な防具で知られており、特に隠密行動に優れた装備が豊富だ。俺の目的にぴったりなアイテムが揃っているはずだ。
電車の中は静かで、周囲の乗客もそれぞれの思いにふけっている様子だ。窓の外を眺めると、夜の東京の街並みが流れていく。ネオンの光が川のように流れる光景は、どこか幻想的で、少し心が落ち着く。しかし、頭の片隅には、次の戦いに備えるための思考が渦巻いていた。
渋谷駅に到着し、改札を出ると、すぐに賑やかな通りが広がっていた。人々の活気に満ちたエネルギーを感じつつ、俺は目的地へと足を進めた。アートストリートを通り抜け、シブヤ・センター・コアに向かう。そこには、数々のブランドショップが立ち並び、能力者向けのファッションアイテムが揃っている。
その一角に、「フォルティス・アーマー」の看板が見えてきた。店の外観はモダンで洗練されており、ガラス張りのショーウィンドウには最新の防具がディスプレイされている。店内に足を踏み入れると、ひんやりとした空気とともに、革や金属の香りが鼻をくすぐった。高品質な防具が所狭しと並び、その中で特に目を引いたのは、黒を基調としたセット装備だった。
俺はその防具に自然と引き寄せられ、視線を落とした。これが、次の戦いに向けての頼れる相棒になるかもしれない。そんな期待を胸に、先程気になった装備のもとに向かった。
「これは…かっこいいな」
思わず心の中で呟いた。深い漆黒の色合いは光を吸い込むようで、触れた瞬間にその滑らかな感触が伝わってきた。ジャケットは細身で洗練されたシルエットを持ち、肩や胸元には控えめな装飾が施されている。そのデザインはまるで夜の闇に溶け込むようで、隠密行動にはぴったりだ。
「軽いのに、しっかりしてるな」
ジャケットとセットのパンツも同じく黒で統一されており、動きやすさを考慮してストレッチ性も備えている。全体的にシンプルでありながらスタイリッシュな印象を与えるこの装備に、俺の心はさらに引きつけられた。
装備を手に取って細部を確認していると、店員が近づいてきた。
「お客様、その『夜影セット』にご興味がおありですか?」
「あ、はい、この装備はどんな効果があるんですか?」
「この『夜影セット』は、隠密行動に特化した装備です。ジャケットとパンツには魔法繊維が使われており、物理的な攻撃を受け流しやすく、一定の魔法耐性もあります。また、セットで装備することで夜間の視認性が低くなり、敵に察知されにくくなる【特性】を持っています。特に暗闇の中での行動には最適ですね」
なるほど、ダンジョンの中での移動に役立ちそうだ。
俺は、セット装備のデザインと機能に満足し、この装備が持つポテンシャルに期待を膨らませた。見た目のクールさに加えて、実用性の高さが気に入った。
「よし、これを買います」
「ありがとうございます。お会計は42000円です」
俺の財布の中身が空になるそこそこの大金だ。だが、欲しい。
俺は財布から金を取り出し、店員に渡した。そして、ついに「夜影セット」を手に入れた。これからの冒険で、この装備がどれほど役に立つかを思い描きながら、俺は店を後にした。次の敵と戦うのが楽しみで仕方がない。
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【次回】城之内死す、デュエルスタンバイ!
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