【第10話】暗闇の収穫―『影刃の顕現』
アイテムの精算会です。割とチートがどんどん近づいてくる。
アサシンゴブリンを一掃した後、俺は息を整えながら周囲を見渡す。戦いが終わった静かな部屋には、倒れたゴブリンたちの遺体が散らばっていた。まずは収集するべきアイテムを確認しようと、倒したゴブリンたちの体に近づく。
普通のゴブリンたちのアイテムは、だいたいが単純な短剣や壊れた装備、または少量の素材が多い。しかし、アサシンゴブリンは別だ。彼が持っていたアイテムがどうなるのか、特に気になる。体が光り、そしてポッと消えた瞬間に、地面に浮かび上がるアイテムが現れた。その中には、期待通りのレアアイテムと価値の高い魔石が含まれている。こういった光景は珍しいものではないが、目の前に現れるとやはり新鮮な感動がある。
アサシンゴブリンの遺体が消えた後、地面に現れたアイテムは、次々と輝きを放ちながら浮かび上がってきた。まず目に飛び込んできたのは、見たことのない美しいデザインの短剣だ。その刃は滑らかに輝き、まるで夜の星のようにきらめいている。隣には、透明な宝石のような魔石が置かれていた。どちらも非常に価値が高いと感じる。
「これがアサシンゴブリンが持っていたアイテムか…」
俺は軽く微笑みながら、そのアイテムを丁寧に確認する。持ち帰る前に、すぐにでもその価値を確認したいが、まずはすべてを収集することが大事だ。周囲のゴブリンたちのアイテムも一緒に拾い集める。ほとんどが使い古された武器や装備だが、役立つアイテムが含まれているかもしれない。
そう息巻いては居たが、次第に不必要なものが目に入ってくる。使い古された短剣や壊れた盾、劣化した鎧が散乱しているのを見て、頭を抱えたくなる。
「これらは…手に持ちきれないし、持って帰っても役に立たないな」
俺は苦笑いをしながら、それらのアイテムを無造作に地面に置いていく。
アイテムの中には、モンスターたちが戦いの最中に使っていた道具も多く、どれもこれも過去の痕跡を残すだけだ。中には、完全に使い物にならないものも含まれている。俺は一つ一つ、必要なアイテムと不要なアイテムに分け、必要ないものはその場に放置することに決める。
「これで、片付いた」
不要なアイテムをすべて置き去りにし、重要なアイテムだけを慎重に袋にしまう。地面には使い古された武器や壊れた装備が散らばり、周囲に物の散乱が残る。
収集が終わると、俺は一息つきながらバッグにアイテムを整理する。ダンジョン内での収集が終わり、次にするべきはアイテムの鑑定だ。アサシンゴブリンのアイテムは特に価値が高いので、しっかりと確認しなければならない。
「さて、これらのアイテムを持って、受付に行こう。」
ダンジョン内を歩きながら探索を続けると、前方に青色のスライムの群れを見つけた。スライムは16体ほど集まって、狭い通路の中でゆっくりと動いている。その青く輝く体は、薄暗いダンジョンの中でもひときわ目立っていた。
「おお、これは…」
興味を引かれた俺は、スライムたちをじっくりと観察しながら、まずは【影】を使って彼らを一網打尽にすることに決めた。動きが遅いスライムたちは、隙間なく影で包み込まれ、全てが拘束された。青い体を震わせながらも動けないスライムたちを見て、俺はそのままスキルを吸収しようと影に力を入れる。
「さて、これで吸い取れるのかな?」
影越しにエネルギーを吸収しようとしたが、予想以上に時間がかかることに気づいた。普段ならば直接触れて吸収するのが普通だが、影を通じてはエネルギーの流れが鈍く感じられる。吸収し始めるのに必要なエネルギーが影越しではうまく集まらず、やめようとしたその時、グリムが声をかけてきた。
『待て、この感覚だと、【影】越しなら10秒たってから吸い取りを開始することができるな』
「10秒か…それなら試してみるか」
俺はグリムのアドバイスに従い、もう一度影を通じてエネルギーを集めようとした。すると、10秒ほど待った後、手のひらにスライムたちのエネルギーがゆっくりと集まり始めた。少し時間がかかるが、影を通して確実にスキルを吸収できることがわかった。
「なるほど、こういうことか。」
エネルギーの吸収が始まると、徐々にスライムたちの生命力が薄れ、影を通じて吸い込まれていく。時間がかかるものの、確実にエネルギーが集まってくる感覚が手に伝わる。普段よりも4倍の時間がかかることを感じながらも、スキルの吸収を続けた。
「これで…スキルが手に入る。」
吸収が完了し、スライムたちのエネルギーが尽きると同時に、彼らは無力化された。スライムたちを拘束し続けた影を解き放ち、俺は新たに手に入れたスキルを試すことにした。先程手に入れた【短剣術】と【速攻】を活用して、スライムを素早く倒す準備をする。
スライムの青い体が次々に弾け飛び、透明な液体が広がる中、俺はスピード感あふれる攻撃を繰り出した。スライムの数は多かったが、【短剣術】と【速攻】の効果で、動きは一層滑らかになり、16体のスライムを瞬く間に掃討することができた。
【速攻】の効果は切れたけど、【短剣術】の効果は特に切れる感覚がないな。
『【短剣術】のような武器の基礎スキルは体と適合するからな。簡単に言えば常時発動型のスキルだ』
早く言ってくれって言おうと思ったけど、どうせ聞かなかった俺が悪いって返されるだけだしな。
『よく分かってるじゃないか』
はいはい。
スライムを全て倒した後、俺はスキルの吸収が完了した感覚を確かめようとした。その時、グリムが声をかけてきた。
『スライムからのスキル、確認するか?』
「ああ、頼む」
俺が返事をすると、グリムはスキルの詳細を伝え始めた。
『さて、今回吸収したスキルだが…全部【再生】だ。しかも、数が普通じゃないぞ』
「え、どういうことだ?」
俺は驚きながらも話を聞く。グリムが続けて説明を始めた。
『スライム16体で…【再生】が16個だ』
「16個!?同じスキルが16個もあるってことか?」
その言葉に、思わず目を見開いた。同じスキルが複数存在することは知っていたが、重複するのは初めての経験だ。グリムも俺の驚きに共感している様子だった。
俺は【再生】の多さに驚くと同時に、その有用性に思いを馳せた。これだけの再生能力があれば、かなりのダメージにも耐えられるはずだ。傷が瞬く間に回復する様を想像し、その力をどう活かすか考え始める。
『この再生スキル、16個もあるとしたら…短時間での回復力がかなり向上するはずだな。まさに生き残るための強力な力だ』
グリムの言葉に、俺は静かに頷いた。これまで以上に強力な戦闘スタイルを築ける予感がした。新たな能力を手に入れた喜びと、その可能性に胸が高鳴る。
「これで、どんな状況でも立て直せる。スライムも悪くないな」
俺はグリムに感謝の意を込めて笑みを浮かべ、再びダンジョンの入口へと足を進めた。
ダンジョンの入り口に戻ると、受付で鑑定してもらうための準備を整えた。周囲の冒険者たちもそれぞれの成果を持ち帰る中、俺は自分の収集品をしっかりと確保し、受付に向かう。
「これ、アサシンゴブリンからのアイテムです。鑑定をお願いできますか?」
受付の担当者がアイテムを受け取ると、確認し始めた。魔石や短剣の価値がどれほどのものなのか、詳しい情報を教えてもらうのが楽しみだ。
「すぐに結果をお知らせします」
担当者が言葉を残し、鑑定作業に取り掛かる。鑑定結果を待つのが楽しみだ。
「どんなアイテムなのか、期待して待とう」
アイテムの鑑定が終わるまでの時間、俺はその場で待ちながら、どんなスキルや能力が手に入るのか、期待と共に胸が高鳴る。
しばらくして、受付の担当者がアイテムを持って戻ってきた。
「お待たせしました。鑑定結果が出ました」
担当者が一つずつアイテムを取り出し、説明を始める。
「まず、アサシンゴブリンから手に入れた短剣です。これは『影刃』という名のレアアイテムで、隠密行動時の攻撃力が大幅に上昇します。特に暗闇での性能が抜群で、夜間や影に隠れた敵に対して有効です」
「へぇ、ありがとうございます」
「魔石の方は大変純度が高いですね。10046円で買い取らせていただきます」
「りょ、了解です」
なんの46円だそれ。
「他の魔石も買い取りでよろしかったですか?」
「あっ、お願いします」
「はい、ですと、合計で50839円です」
おー!数時間で5万えぐすぎだろ。
「ありがとうございます」
影刃を仕舞い、大金を握りしめ、外の空気を肺に吸収する。
金はいいな、金は。
主人公の財産「40526円」です。次はなんか買い物でも行こうかな。
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