社長秘書になった元ぼやき事務員のジーコさん、パスワードに告白されたもよう
「残高はありません」
――――いや待て、目の錯覚だ。
五年勤めた会社を辞め、金星人と名乗るマヤ社長の秘書についた私は、ウキウキしながら銀行へ向かった。
薄給ながらも楽しみにしていた前の会社はしょせん地味な事務員。今度の会社は社長秘書だよ。期待して、ない胸が膨らむってもんだよ。
「残高がありません」
――――嘘でしょ? 生命の危険を侵してまで働いて、まさかの無給だと。
「どうなってるんですか!」
いくら恩人でも、払うもんは払ってもらうよ。お給料ないと生活困るもん。
「困っているようだねジーコ君」
果てしなく胡散臭いたまごの銀行員がやって来た。
「いい、私は手を汚すこと無く片手で三個のたまごを割ることが出来る能力がある。叩き割られて、スクランブルエッグになるのが嫌なら失せな」
……手間かけさせる。もっと良い能力を下さいよ、神様さぁ。
「メッセージが届いてます」
会長から持たされた新型スマホは、絶対に監視付きだ。
マヤ社長は人は良いけれど、基本アホなんだよ。何も気にせず、社員用に携帯を義務づけている。
まあ某国への対策もあっての事だけど、私にとっては給料の振込ミスの方が一大事だよ。
「給与のことだが、我が社は現金主義なんだ。支給会社まで戻りたまえ」
ハァ、疲れた。始めから言って欲しい。あと支給が至急とかかってんだよって、わざわざメッセ入れんな。
――――会社に戻ると、マヤ社長が待っていた。
「なんか手違いで、お給料ロッカーにあるんだって」
機密文書などをしまっておく金庫部屋だ。
パスワード画面にはこう書かれていた。
「私を愛していますか?」
…………ぅっ、ゼェェ!!!!
何度目だよ、このやり取り。これ何ハラ?
仕方なく該当ワードを入力する。
「ア・イ・シ・テ・ル」
――――カチャリ……ガチャ。
「私もあなたを愛してます」
何、今の間? おいっ、いま開いた鍵をかけ直したよな?
「もう一度入力…」
「アイシテル」
――――カチャ!
よし、開いた。事務の反射舐めんなよ。あと会長、暇なん?
金庫の中には……中には、十キロ相当の金魚型の黄金。本物だよ、重いし。
現金って言ってたよ、確かに合ってるよ、けど多いって。
相場グラム一万として、億あるよ。マヤ社長はアホだけど、会長はバカなの?
社員全員分でも多過ぎて、税務調査怖いんだよ?
結局全て私が調整して、前の会社の三倍と、ボーナスせしめた。でも疲れた……。
次の私の目標は、上司二人に常識を教え込む事になったようだ。
お読みいただき、ありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
初めてのお給料って、なんとなく覚えている方も多いのでは。ジーコさんの場合は初めてのお給料ではないのですが、振込みではなく現金と聞いて、久しぶりにドキドキ感を思い出しましたようです。
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