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昭和38年 ~令和最新型のアラフォーが混迷の昭和にタイムスリップしたら~【なろう版】  作者: 朝倉一二三


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87話 法人化


 コノミの誕生日がやって来た。

 本当の誕生日は不明なので、俺と出会った日が彼女の誕生日ということになっている。

 それはすなわち、コノミと出会ってちょうど1年たったということだ。

 俺的には、もう1年たったのかぁ~という感じだ。


 光陰矢の如し。

 歳をくうと1年が過ぎるのが早い。

 それは、なんの変化もない毎日を送っているせいだと思っていたのだが、そうではないらしい。

 子どもがいてもそれは変わらないようだ。


 サントクから、爪切りの特許の支払いがあった。

 四半期ごと、年4回の精算だが、1回で70万円ぐらい入ってくるらしい。

 平成令和だと700万近い感覚。

 他の特許もあるし、この感じだと元時代の年収1000万円の壁もあっという間に突破しそうだ。


「う~ん」

 コノミを学校に送り出した俺は、アパートの部屋で唸っていた。

 今は爪切りが売れまくっているので、パテント料も増える。

 いずれ落ち着くだろうが、とりあえずは来年の話だ。

 このままいくと税金を死ぬほど取られる。

 早々になんとかしないといけない。


「どうしたの?」

 ヒカルコが俺の唸りに反応した。


「結構な金額の特許料が入ることになったんで、早々に法人化しないとヤバい」

「うん」

 うなずいた彼女だが、他人ごとのような顔をしている。


「前にも話したが、俺と財布を一緒にしていいのか?」

「うん」

 ここで、もう一度確認したほうがいいだろう。


「お前の稼ぎも全部、俺の会社の収入になるってことだぞ? あとで、私の分だから返せと言われて揉めることもあるだろ?」

「そんなことはないし」

「お前なぁ――俺のことが嫌いになって、別れたくなったりしたらどうするんだ?」

「そんなことないし!」

 大声をあげた彼女が俺に抱きついてきた。

 結婚式場で、「永久とわの愛を誓います」などと宣言した挙げ句、数ヶ月とか1年で別れるやつらがザラにいるのに、そんなことがないと言い切れるのか。

 ヒカルコが抱きついたまま、ちょっと涙目になってじ~っと俺の顔を見ている。

 こりゃ、なにを言っても聞きそうにないな。

 俺は説得するのを諦めた。


「解った解った、後悔するなよ」

「しないし!」

 抱きついている彼女の頭をなでる。

 まぁ、こいつもいい歳した大人だし。


 それはそうと、法人化するとなると司法書士に仕事を頼まんと駄目だな。

 サントクの社長さんに紹介してもらえば確実だと思うんだが、なにせ遠い。

 やっぱり近場にあったほうがいいよなぁ。

 会社だって、この区で立ち上げるわけだし。

 それに税理士も必要だ。


「とりあえず電話帳か……」

 この時代、なにか商売を調べるとなると電話帳がデフォルトだ。

 街中が看板だらけというのも、あれも情報源として重要だからだし。

 あとは、あるとすれば――人づてか。


「電話帳いるの?」

「ああ」

「借りてくる」

 俺は大家さんちの内階段は使っていないが、ヒカルコと矢沢さんは使っている。

 俺はそこまで図々しくないのだ。


 ヒカルコが電話帳を借りてきてくれたので、そこから同じ区にある司法書士をチェックする。


「結構あるなぁ――ここなんて、近くだぞ」

「うん、大家さんが知っているかも」

「ああ、そうだな。大家さんが知らなくても、不動産屋の爺さんに聞くとかな」

「大家さんに聞いてくる」

「え?」

 俺が戸惑っている間に、メモを持ってヒカルコが行ってしまった。

 金があるなら人を頼れ――なんて言ってる俺だが、大家さんはちょっと違うよなぁ。

 悩んでいると、ヒカルコが戻ってきた。

 大家さんを連れて。


「ショウイチ、大家さんが知っているって」

「篠原さん、司法書士さんを探してるのぉ?」

「はい、会社を起こすつもりなので」

「あらぁ、そうなのねぇ。ここは知り合いで私も仕事を頼んだりするから、大丈夫よ。紹介してあげる」

「ありがとうございます」

 コネを使いまくりだ。


「私から紹介されたって言えば通じるから」

「いつも本当にお世話になってしまって」

「いやもう、なにを言ってるの? 競馬で勝たせていただいたしぃ」

「それは、内密にお願いしますよ」

「解ってますよぉ」

 彼女がケラケラと笑っている。

 ヒカルコにも大家さんと一緒に競馬場に行ったことは話していた。


「大家さんももの好き」

 ヒカルコが、競馬場に行ったという大家さんに呆れている。

 彼女は八重樫君同様、一度行って懲りた口だ。


「まぁ、確かにねぇ。でも、私だけじゃあんな場所に絶対に行かないしぃ」

「そりゃそうでしょう。お上品な御婦人の行く場所じゃありませんし、あそこにいる人で金持ちは馬主だけですから、ははは」

 なぜか、金を持ってないやつほど、博打をやりたがる。

 どんなに逆立ちしたって、大家さんみたいな本物の金持ちには敵いっこないのにな。


「あとは――小さな会社ってことは、税理士が必要でしょ」

「はい」

「それも、当てがあるから連絡してあげる」

「なにからなにまで、ありがとうございます」

 俺は正座して大家さんに頭を下げた。


「いやねぇ、そんなに改まって」

「いやいや、本当にコノミのこともお世話になりっぱなしで」

「突然できた孫みたいな感じで、私も楽しんでいるから、お互いさまよ」

「そうですか?」

「ええ」

 そう言ってもらえるのは、大変ありがたい。

 両親もいないコノミには、当然祖父母もいないわけで。

 彼女も、大家さんを本当の祖母のように慕っているし。


 しばらく大家さんと世間話をしたあと、俺はカバンを持って彼女に紹介された司法書士を訪ねてみることにした。

 中には事前に作った会社の実印とゴム印も入っている。


 ヒカルコは、まだ大家さんと話をしているのだが、傍から見たら本当の親子かってぐらい仲がいい。

 ヒカルコ、矢沢さん、コノミと、大家さんは随分と彼女たちと楽しんでいる感がある。

 どこか馬が合うんだろうな。


 司法書士の所に行く前に、秘密基地に寄って金を10万円ほど持っていく。

 まぁ、法人化の書類やら申込みやら、全部頼んでも3~4万円ぐらいだと思う。

 場所はすぐ近く、今住んでいるアパートを紹介してもらった不動産屋と同じ通りにあるらしい。


 通りを歩いていくと、木造モルタル2階建の建物に看板を見つけた。

 中澤司法書士事務所――ここだ。


「ちわ~」

「いらっしゃいませ」

 中には事務机についた50歳ぐらいで小太りの男と、青い事務服を着た中年の女性社員が座っていた。

 灰色のロッカーと収納棚が並び、沢山の資料が縦に重なっている。

 部屋の真ん中には、革の椅子と小さなテーブルが置かれていた。


「あの~、片桐さんから紹介されて来たんですが」

「おお、片桐さんから――どうぞ、そちらにおすわりください」

 男は、白いシャツに茶色のズボン、灰色のベストを着ている。


「ありがとうございます」

 男に案内されて、部屋の中心にある椅子に座る。

 目の前にはレースがかかった小さなテーブル。

 昭和といえば、デカいガラスの灰皿も完備。

 平成令和には、このガラスの灰皿が銃刀法違反になるみたいな話がネットにあったが、嘘か本当か解らん。


 灰皿を見つめていると、男が目の前に座って女性社員がお茶を出してくれた。


「それで、今日はどのようなご要件で」

「今やっている仕事を法人化しようと思いまして」

「ほう、どのようなお仕事でしょう?」

 俺はいつものように、カバンから爪切りを出して、発明品の説明をした。


「――というわけで、特許料や印税などで収入が増えるのが確実なので、今のうちに法人化しようと」

「印税というと、本を書いていらっしゃる?」

「まぁ、そんな感じです」

「承知いたしました。当社でお引き受けいたしましょう」

「ありがとうございます」

「え~と、有限会社でよろしいですね」

 そういえば、平成令和には有限会社は設立できなくなったな。

 まぁ、個人会社だし、デカくするつもりもない。

 ただの節税のための会社だからな。


「まずは、会社のハンコですね」

「一応、作ってありますが、これで大丈夫ですかね?」

 先生にハンコを見せる。


「ああ、大丈夫ですよ。それから出資証明の書類が必要になりますから、会社の口座と預金証書ですかねぇ」

 会社の口座を作るためにも、会社の代表者印が必要だ。

 預金証書なら、平成令和なら通帳のコピーでよかったが、この時代にそんなものはない。

 手形を振り出すわけじゃないので、当座じゃなくて普通口座でOK。


「それは、私がやらないと駄目ですねぇ」

「そのとおりです。それから業務内容はどんな感じで?」

「発明と特許の取得、小説、漫画、TV漫画、映画など、それに関わる著作物の制作と管理」

 あとは、株式売買やら、為替、先物取引など――それに関する一切の業務――てな感じか。

 土地も買うが不動産屋を介して買うから大丈夫だろう。

 今日一日、定款を考えて、明日持ってくることになった。


「なにか、すごくぶっ飛んでいる会社ですな、ははは」

「はは、私もそう思います」


 会社名は――「有限会社篠原未来科学」

 我ながらちょっと中二的な名前だとは思うが、節税のための会社だし、これでいいだろう。

 会社の場所は、俺の秘密基地があるあのボロ屋だ。

 まさか、アパートにするわけにもいくまい。

 金ができたら、ちょっとリフォームするのもいい。

 まぁ、建て直したほうが早いと思うが……。


 最初の計画どおり、面倒なので手続きやら書類の提出やら、全部司法書士にやってもらう。

 税務署や区役所への事業開始届けなんかは自分で出せばいいのだが、金はあるし。

 どうせ使えない金だから、こういうときにドンドン使う。

 どうせ経費で落ちるし、代金は約4万円らしい。

 あとで実際にかかった明細をくれると言うが、そんなもんだろう。

 大家さんも使っている先生なので、問題はないはず。


 司法書士の所を出ると、次は同じ通り沿いにある税理士の所を訪ねた。

 歩いていくと、木造の建物が見えてきて、看板が出ている。

 とにかく絶対に看板があるな。

 田中税理士事務所――ここか。


 中に入ると、木造の建物の中に事務所があった。

 ここも事務所とロッカーが並び、色々な書類が沢山積み上がっている。

 座っていたのは、白いシャツに黒い腕抜きをした2人。


 白髪の爺さんと、中年の男性。

 同じ顔をしているので、おそらく親子だと思われる。


「こんちは~、片桐さんから紹介を受けて参りました」

「いらっしゃいませ」

 ここでも、大家さんの名前の効果は絶大だ。

 どこの馬の骨だか解らん男より、ここらへんの大地主で顔役の婆さんの紹介でやってきた男のほうが信用があるということだろう。

 そりゃそうだ。

 俺だって、そう思う。


 爺さんと話していると、なにか独特のにおい。

 なにかと思ったら、彼の机の上に仁丹が置いてあった。

 仁丹かぁ――そういえば、平成令和には見かけなくなったなぁ。


 会社を始めることを話して、面倒を見てもらうことになった。

 話を終えると、税理士の所を出て空を見上げる。


「とりあえず、会社の登記が終わらないと始まらないな」


 一通りあちこちを回って、俺は秘密基地に帰ってきた。

 ふと、隣にある白い大きな空き家が目に入るのだが、庭も手入れされていないので、背の高い草が伸び放題。

 草取りをしないと、こんなに草ボーボーになるのか。

 未だに売れてないらしく、売家の看板が立ったまま。


「ここを会社の社宅として買ったら、経費で落とせるんじゃないか?」

 俺はそのまま税理士の事務所に踵を返した。


「ええ、可能ですよ。減価償却やらをしないといけませんが」

 税理士の答えは、問題ないらしい。

 会社に定期的な収入があることが解れば、銀行でローンが組めるはず。

 まぁ、代金の半分以上金を出せるのだが、いきなりそんな金を出したら、出どころを疑われる。

 それはできない。


 土地や家を買えば資産ができるから、株式売買や先物取引もできるようになるぞ。

 この時代は、それなりの資産がないと証券会社などが相手にしてくれないのだ。

 俺は秘密基地の土地と建物を持っているのだが、あれじゃ担保にするのは無理だろう。


 起業することで、色々なことが一気に進みそうな気がする。

 こいつは忙しくなりそうだな。


 ――その日の夜、相原さんがやって来た。


「コノミちゃ~ん!」

 彼女がコノミに抱きついて、クンカクンカしている。


「まだ矢沢さんの原稿には早いようですが……」

「これです」

 相原さんが、俺にデカい封筒を渡してくれた。

 中を見ると――ゲラ刷りが入っていた。

 おそらくは雑誌の1ページと思われる紙に広告が入っている。

 上下二段に分かれており、上段にムサシと爪切りの広告が載っていた。

 ムサシの前で、ヒロインの女の子が爪切りを使っている絵だ。


 ムサシの担当は高坂さんなのだが、原稿以外の仕事は全部相原さんがやっているっぽい。

 まぁ、レコードもそうだったしなぁ。

 次々とすごい仕事をするので、出版社も編集部を越えて任せてしまっているのだろう。


「画期的!」「切った爪が飛び散らない!」「宇宙でも安全!」

 ――などと、書かれている。

 以前、サントクにオススメした広告の件だろう。


「は~、これが雑誌に載る、サントクさんの広告ですね」

「はい」

 相原さんから本をもらって、コノミは早速読み始めた。


「これは中々目立つんじゃないですか?」

「ええ」

「でも、これは先生の絵じゃないですねぇ」

「はい、先生から許可をもらって、違う人に描いてもらってます」

 さすがに描いている暇がなかったか。


 ムサシが連載されてる月刊誌だが、今月の注文も60万部以上入っているのだ。

 数が多いということは印刷に時間がかかる。

 そんなわけで締め切りが少々早まっているらしい。

 先生はピンチヒッターのアシを入れて、狭い部屋の中、3人でヒーヒー言いながら描いている。


 そんなわけで広告のカットなど描いている場合ではないので、他の人に描かせたわけだ。

 この時代、雑誌の構成やらイラストなども全部内製で、編集者などが切った貼ったをしている。

 仕事のない漫画家などにカットやイラストを描かせているのだが、これはタイアップだから、いくらか先生にもお金が入るはず。


「ちょっとキャラが幼い感じがしますが、これはこれで可愛いな」

「そうですねぇ」

「こういうキャラで、ムサシの外伝を描いてもらっても面白いかもしれないなぁ。たとえば敵側の視点から見た漫画やら、脇役に焦点を合わせた漫画とか――」

 元時代でいう、スピンオフ漫画だ。

 平成令和だと、ある漫画に人気が出るとスピンオフものが平行して連載されることがよくあった。


「あ、面白そうですね……」

 俺の話を聞いた相原さんが、なにか思案をしている。


「相原さん、また仕事を増やすんですか?」

「だって、篠原さんが次々と面白そうな企画をおっしゃるから!」

 俺のせいか?

 未来でも定番になっている販売戦略だし、ヒットする可能性が高いしな。


 俺と相原さんが話していると、ヒカルコがす~っと寄ってきて、くっつく。

 それを見たコノミが俺の膝の上を占領する。

 鉄壁のディフェンスだ。


「それでは、私は矢沢先生の様子を見てから帰ります」

「わざわざありがとうございました」

「いいえ」

 そうだ、忘れていたことがあった。


「あ! 相原さん、私の所は今度法人化しますので、今後ともよろしくお願いいたします」

「ついに、社長さんですか?」

「ははは、税金対策の会社なので、社員もいませんし」

「私がいるし!」

 ヒカルコが口を尖らせた。

 そういえばそうだ。


「篠原未来科学をよろしくお願いいたします」

「そ、そんな社名で大丈夫なんですか?」

 相原さんが心配そうな顔をしている。

 ふざけていると思われているのだろうか。

 多少おふざけが入っているのは否めないが、そんなに酷いとは思わないけどなぁ。


「いやぁ、表立って営業とかするわけじゃありませんし、ははは」

「そりゃ、篠原さんの会社ではありますけど……」

 なにか奥歯にものが挟まったような感じだが――まぁいい。

 相原さんは、俺の部屋を出ると矢沢さんの所に向かった。


 ――相原さんがやって来た次の日。

 新聞を見ると、お隣の国でナントカ大革命が始まったとある。

 あ~、この時代なのか。

 俺が読んでいる新聞は、付き合いで取ってるそっち系の新聞なので、かなり好意的なことを書いてある。

 昭和の時代は、お隣の国とはあまり付き合いがなかった印象だな。

 みんな人民服を着て自転車に乗っている――そんな印象しかない。

 近いのに、遠い国という感じだ。


 それがあんな具合になるとはなぁ……。

 この時代の人々にそんな話をしても信じてもらえないだろう。


 朝に高坂さんがやって来たのだが、珍しい。

 ムサシの原稿がそれだけ急ぎなのだろう。

 今回は締め切りがすごく早まってしまったが、早めにスライドしただけなので、来月からはまた普通に戻ると思われる。


 少し八重樫先生と話したが、かなりげっそりしていた。

 徹夜ではなかったようだが、毎日夜遅くまで仕事をしていたようだ。

 彼に、サントクの広告の話をした。


「忙しそうだったから先生の所には行かなかったが……」

「ああ、いいんですよ。それは相原さんにお任せでやってもらいました」

 すごく眠たそうだ。

 今回、急きょ入ったアシの男の子も、家に帰るようだ。

 坊主頭の、これまた若い子だな。


「あの子もムサシを読んで、東京にやってきたらしいですよ」

「はは、先生も弟子が増えて大変だな」

「いやぁ、弟子ではないですよ。弟子を取れるほどの実績もないですし」

 いやいや、これだけ売れたら十分に凄いっての。

 ストーリーの組み立てが少々アカンだけで、ネームも絵も達者だし。


「けど、3人じゃ狭かっただろう」

「いやもう、ギチギチでしたよ」

「印税も入るし、もっと広いスタジオを借りるとか」

「う~ん、この先どうなるか解りませんし……」

 慎重だな。

 まぁ、そのぐらいでいいんだが。

 本当に作家というのは、先が解らん商売だからなぁ。

 小中学館が潰れることはないと思うが、俺は小さな出版社の仕事をやって原稿料を取りそこねたことも、なん回かあったし。


 先生が大きなあくびをした。

 彼は、これから寝るらしいので、話を切り上げた。


「お疲れ様~」


 ――会社設立を思い立った次の日。

 銀行の書類を揃えるために、銀行にいかなくては。

 色々とやって来たが、俺の壮大な計画が、この瞬間から始まるわけだ。



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