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16話 立てば芍薬


 俺はダービーの単勝を的中させて、小銭を稼いだ。

 これから暑くなるからと、秋葉原に扇風機を買いに向かったのだが、これが危ない選択だった。

 上野のレストランで昼飯を食ったあと、なんとこの時代にいた俺の祖母と母親に出会ってしまう。

 俺の存在じたいが危なくなる可能性もあったと思うのだが、過去との遭遇はなにごともなく無事に済んだ。

 銀座、上野、秋葉原などに行く場合は注意しなければならないだろう。

 たとえば休日は避けるとかな。


 俺は冷や汗をかきながら、アパートに帰ってきた。

 それにしても、婆さんが間違うぐらいに、俺と爺さんは似ているのか。

 まぁ、婆さんもオカンの若い頃にそっくりだったしな。

 やっぱり血は水よりも濃し――か。


 秋葉原で買ってきた扇風機で遊んだあと、ちょっと遠い国鉄側の商店街に行くことにした。

 こちらのほうが品揃えが豊富だし。

 目当ては大工道具で、窓にハメる網戸を作りたいのだ。

 元時代のサッシなら、網戸が普通についていたし、後付でも簡単に取り付けることができたのだが、この時代では簡単にはいかない。

 窓枠も木製だから、釘で打ち付けるという手もあるだろうが、釘穴だらけになってしまう。

 借家じゃそんなことはデキッコナイスだろ。

 簡単に取り外しができるようにしなくては。


 商店街に足を運ぶと、のこぎり、金槌、各種釘などを購入。

 ついでに金尺やら巻き尺も買う。

 みんな大量生産じゃないので値段が高い。

 対応してくれたのは、前掛けをした白髪の爺さん。


かんなはいいのかい?」

「あ、それじゃ鉋も」

 取り付けの微調整をするために、鉋もあったほうがいいだろう。


「はいよ~」

「それから目の細かい網が欲しいんだけど、そういうのってどこで売っているのかな?」

「こういうのかい?」

 爺さんが奥から、巻いた白い網を出してきてくれた。

 とりあえず3mほど買う。

 俺が作りたいのは網戸だ。

 この時代、街の中でもドブなどが残っているので、蚊が多い。

 身体がシマシマの蚊に刺されると、痒いし真っ赤に腫れ上がりとてもやっかいだ。

 昔から蚊帳ってのがあったので、こういう網も売っているはずだと思っていた。


 同じ通りにあった材木屋から、数種類の細い角材も購入。

 それを担いでアパートに帰ると作業開始だ。

 窓を全開にしてサイズを計ると階段の下で角材をカット。

 その大きさに合うように、網もカット。

 それを細い角材とガラス釘という極小の釘を使って止めていく。

 この釘――俺も周りではガラス釘と言っていたが、もしかして他の呼び名があるのかもしれない。


 そんな極小の釘も、平成令和にはなくなってしまった。

 みんなサッシになってしまったからな。

 この時代は、細い角材や三角形の材木と極小釘を使って、窓ガラスを固定していたのだ。

 ガラスもペラペラだったので、すぐに割れた。

 そのためにすぐに交換できるようになっているわけだ。


 でき上がった網戸をハメて、鉋で削ってフィッティングしていると下から声がする。


「篠原さ~ん」

 この声は大家さんだ。


「は~い? なんでしょう?」

 網戸から下を覗くと彼女が見上げていた。


「あら~、その網戸いいわねぇ。私にも作ってくれないかしら?」

「これでいいなら、材料費出してくれればいいっすよ~」

「それじゃお願い~」


 ――というわけで、大家さんの寝室の網戸も作る羽目になってしまった。

 まぁ、大家さんにはゴマをすっておいたほうがいいだろう。


 大家さんは俺の作った網戸を喜んで使っていたのだが、それを見た隣近所から、同じものを作ってくれと言われる。

 大家さんの顔を潰すわけにもいかず、仕方なく材料費+500円で作ってやる。

 材料を買ってきてトンテンカンと作るとなると、さすがにこのぐらいもらわないとやってられん。

 網戸が評判になると、本職の大工とかも作り始めたので、そうすると俺はお役御免となった。

 同じ値段なら本職が作ったほうがクオリティが高いからな。


 網戸を作りながら思ったが、後付のこれって特許にならんのかな?

 サッシ組み込み型の網戸とか、特許が取れそうだが。

 それにサッシと言えば、ゴミを掃き出すために一部に切れ込みが入っているやつとか。

 あれも使えそうかも。

 特許計画は中々進まないが、今は下調べをしている段階だからな。


 隣の八重樫君の漫画連載計画は順調に進んでいる。

 連載のために俺と彼が作った、「宇宙戦艦ムサシ」の企画が通ったのだ。

 雑誌社も力を入れているらしく、連載の宣伝もするらしい。

 そのために格好いい宣伝カットを描くんだと、彼も張り切っている。

 初めてあったときは、なんだかそこら辺にいるような少年であったが、今の彼は光り輝き、オッサンの俺にはまぶしすぎる。


 ――そんなある日、廊下から女の声がする。

 最初は編集の相原さんかと思ったのだが違う。

 なんだかすごく色っぽい声だ。

 まぁ、彼にも女の知り合いぐらいいるだろう――と、特許の調べごとをしていると、ドアがノックされた。


「は~い? 開いてますよ」

「こんにちは……」

 多分、八重樫君だと思ったので返事をしたのだが、ドアを開けたら目が覚めるような美女だったので驚いた。


「え?! はい? どなた?!」

 彼女がドアを開けて入ってくると、入り口の部分で両手を前でピシッと揃えて、深くお辞儀をした。

 黒い髪は艷やかに流れて、頭の上のヘアバンドで束ねられており、切れ長の目は、俺を警戒しているようにも見える。

 着ている白いブラウスや赤い上着、穿いているスカートも地味ながら上等なものだ。


「私、八重樫一の姉でございます」

 彼女の言葉に、本当に驚いた。

 いつも話している彼から、彼女の姿をまったく想像できなかったからだ。


「え?! 八重樫君のお姉さん! 彼から、かねがねお話は聞いております」

「初めまして」

「私になにかお話が……?」

「はい」

「散らかっておりますが、お上がりください。今、お茶を淹れますので」

「おかまいなく……」

 ――そう言われても、淹れないわけにはイカンだろう。

 それにしても、美人美人だとは聞いていたけど、マジで美人だな。

 警戒しているってのは、当然といえば当然。

 自分の弟が、怪しげなオッサンの口車に乗せられて新しいアパートに引っ越したり、漫画の連載を始めようとしているのだから。


 俺が鍋を持ってお湯を沸かしていると、八重樫君がやって来た。


「篠原さん、すみません……」

「おお、八重樫君! 君のお姉さん、すごい美人だな!」

「いえあの……そうじゃなくて」

「ああ、大丈夫大丈夫、別に悪いことをしているわけじゃないし」

「はぁ」

「まぁ、君は保証人になってもらっているわけだし、お姉さんのお小言ぐらい仕方ないだろ?」

「それはそうなんですが、篠原さんにご迷惑が……」

「それは、お姉さんの話を聞いてみんことにはなぁ」

 面と向かって、「なぜそんなヤクザな商売に弟を引き込んだのですか?」なんてことは言われんだろう――多分。


 俺は、沸いたお湯を持って部屋に戻ると、お茶を淹れた。

 そういえば、ヤカンも買ったほうがいいな。

 眼の前に湯呑を置いたのだが、彼女は口をつける気配もなし。

 ちゃぶ台の前で背筋を伸ばして正座して、1分のスキもない。

 俺の所まで、なにかいい香りが漂ってくる。


「それで、ご要件とは……?」

「あの――漫画家というのは、食べていける商売なのでしょうか?」

 彼女の言葉を聞いて、警戒というよりは蔑む感情のほうが強い感じがする。

 こんな所に住んでいる冴えないオッサンの戯言なんて聞くつもりはないが、弟が世話になっているなら世間体を気にして――ということだろう。


「それは本人の才能次第ってやつですが、毎月の仕事があれば余裕ですよ」

「そうなのですか?」

「はい、原稿料だけでも、4~5万円になりますし、そこら辺の一流企業と比べても高収入だと思いますが」

 原稿料の値段を聞いて、彼女は驚いたようだ。

 金でものごとを測りたくねぇが、一番解りやすいのが金でもある。

 人を説得するには数字を使うべしだが、詐欺師も人を騙すときには数字を使う。


「――しかし、仕事があればの話ですよね?」

「もちろん、そういうことになりますが、そこら辺は自分で商売をしている人と変わらないでしょう?」

「確かにそうですが……」

「職業に貴賎なしだと私は思いますがねぇ。そこら辺で商売している人は偉くて、漫画家なんて8○3な商売だからダメってのは、いかがなものかと」

「……」

「漫画という商品を開発して、出版社に売り込んでそれを全国に卸してもらい、収入を得る――どこかマズいところがあるんでしょうか?」

 彼女の顔が一段と厳しくなると、立ち上がった。


「…………失礼いたします」

 俺の言葉に反論ができなくなったのだろう。

 それとも、中卒の俺の言葉なんて聞く耳を持たないと思われたか?

 まぁ、どちらでもいいが。

 ここまできて八重樫君の決心が揺らぐはずがないし、もう実家とは縁を切ってもいいとすら思っているだろう。

 それを察して、そういう道に誘い込んだ俺に抗議をしにやって来たのかもしれないが。


 それはいいとして――玄関先で靴を履くお姉さんが色っぽすぎなんだが。

 左右に揺れる尻――服の上からもムチムチ感が伝わってくる。

 立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花って使い古された言葉があるが、マジでアレだ。

 平成令和にも、こんないい女はめったにいなかっただろう。

 盗撮してぇが、そのスキがない。


 眼の前で揺れる尻を眺める――トンビが鷹を生むはずがないから、八重樫君の母親が美人なんだろうな――と察する。

 そうなると、八重樫君は父親似ってことか。

 いやぁ、あれだけ美人だと、蔑みの視線すらご褒美だよなぁ。

 罵られても悔しくねぇ、ははは。

 自分で自分に呆れる。


 彼女が出ていってしばらくすると、八重樫君がやってきた。


「篠原さん、すみません!」

「いやいや、気にすることはないよ。お姉さんにお茶を出したけど、まったく口をつけなかったから、どうだい?」

 彼にお茶を勧めてみた。


「ありがとうございます」

 彼がぬるくなってしまったお茶を、ぐいっと飲み干した。


「まぁ、お姉さんとしては、弟が変なオッサンに騙されているんじゃないかと心配しているんだろう」

「……そんなことを言ってました」

 面と向かっては言わなかったが、やっぱりそう思っていたらしい。

 それをどうのこうの言うつもりはねぇけど。


「普通の会社員より稼いでいると言ったら、黙って出ていったよ」

「それも全部、篠原さんのおかげなのに……」

「全部ってこたぁないよ。君の絵だって素晴らしいじゃないか。女の子だって可愛いし」

「ありがとうございます」

 気になる彼の家族について聞いてみた。


「お姉さん、お母さん似なんだろ?」

「はい、そのとおりです。よく解りますね」

「そりゃ解るよ」

 いやぁ、お母さんもさぞかし美人なんだろうなぁ。

 是非とも親子丼――ゲフンゲフン。

 男の夢だな。

 眼の前の彼には聞かせられねぇが。


「はぁ」

 彼がため息をついた。


「漫画家の仕事が順調にいけば保証人なんて要らなくなるさ。そのときには、もう口出しなんてしなくなっているだろうし」

「はい、そこを目指しますよ」

「しかし親元から独立したいから、漫画家で成功したいってのも珍しいな」

「あくまで漫画家で成功するのが目的で、姉や親のことはそのついでです」

「ははは――でも、お姉さんの漫画嫌いは相当っぽいな。当然、両親もあんな感じなんだろ?」

「そのとおりです。なにがいけないっていうんでしょう……」

 彼がしょんぼりしている。


「まぁ――小説や文学にはノーベル文学賞ってのがあるが、漫画にはねぇしなぁ、はは」

 田端康成大先生が、ノーベル文学賞を取るのは、もう少しあとか……。

 小説より劣るとされる大衆向けの娯楽でも、その役割があるし、なにがどう劣ると言われても説明できるやつはいないんじゃね?


「でも、漫画は小説に劣るものじゃないと思いますよ! 一目で解りやすいし、沢山の人に読んでもらえるじゃありませんか!」

「そうなんだけどなぁ。権威主義者たちには認められないんだろ。漫画でノーベル賞取れたら、世の中の見方が180度変わると思うけどな」

「そうですね」

 悲しいかな、ここから約60年たっても、それは実現してない。

 そのかわり漫画とアニメは、日本の一大産業になってバカにするやつは少なくなったが。


 彼の家庭の話はそれぐらいにして、話を切り替えることにした。

 とりあえず、目の前の生活をなんとかしないとダメなのだ。

 八重樫君によると、連載1話のネームができたらしい。

 彼が自分の部屋からそれを持ってきた。


「そういうのは編集と打ち合わせするもんだろ?」

「まずは、篠原さんに見てもらいたくて」

「厳しいことを言うかもしれんぞ?」

「ぜひ!」

 覚悟は決まっているらしいので読む――だが、のっけからダメだ。


「う~ん、いいかい?」

「どうぞ!」

「のっけから舞台説明はダメだよ。読者にドン引きされてしまう」

「え? そうなんですか?」

「色々と舞台設定したから、それを出したいのは解るが、最初にドラマチックなシーンを出して、読者の心を掴まないと……」

「はい……」

 彼がしょんぼりしているが、結構ベテランでもやらかす失敗だ。


「けど、説明のシーンは無駄にはならないから大丈夫だ――こうやって一番尻に持ってくればいい」

「あ、なるほど」

「1話の最後で、ボロボロになった地球を見せて、読者の度肝を抜くわけよ」

「はい」

「それから、戦闘シーンももうちょっと緊迫感が欲しいな」

「どういうシーンでしょうか?」

「たとえば、大怪我をして裸で包帯を巻かれる女性士官とか、攻撃で破孔ができて乗組員が宇宙空間に放り出されるとか」

「は、はい」

 彼が、メモを取っている。

 一応ネタ出しはしているが、ネームまで口出しはしてない。

 そこまでいってしまうと、彼の作品ではなくなってしまうし。


「乗組員が残っているのに、容赦なく隔壁を閉められるシーンなんかもいいな」

「隔壁ってなんですか?」

「軍艦ってのはな、攻撃を受けても浸水が広がらないように、部屋が小分けになっているんだよ」

「へぇ~そうなんですね」

「この話は宇宙空間だから、扉を閉じて空気が抜けるのを広がらないようにしているわけだな」

「解りました。やっぱり軍艦の資料とか必要ですね! 本屋や図書館を巡ってみます!」

 ストーリーを作るためには、知識がどうしても必要だ。

 特にSFとかそういう特殊なものには、それなりの知識が求められる。

 まぁ、それがなくておとぎ話みたいな話でも、面白ければいいんだが。


「それはいいかもだぞ。宇宙戦艦同士の戦いだから、実戦の海戦の資料なども役に立つはずだ」

「はぁ……やっぱり篠原さんがいないと、話の密度が全然あがりませんよ」

「君だって知識をどんどん溜め込んでいけば、大丈夫だよ」

「そうでしょうか」

「俺は元々、兵器とかそういうのが好きな少年だったからな。戦中を過ごしたし。電探に反応! 全艦右砲雷撃戦用意! とか言って遊んでたもんだ」

「あ、そのセリフいただきます」

 彼が、セリフをメモっている。


「それから船の進路は、取舵と面舵な。速度は微速、半速から始まって、最大戦速そして一杯まで」

「え?! ちょっと待ってください、待ってください」

 説明するのが面倒なので、俺がメモを書いてやる。


「はぁ~こうなっているんですね……」

 最初の艦隊戦だけ、俺がそれっぽいセリフで埋めてやることにした。

 一番最初の最初で、彼にはなにも知識がないので仕方ない。


 彼は漫画に没頭して、お姉さんのことなんてどうでもよくなってしまったようだ。

 このあとは、図書館に行って資料を探してくるという。

 やる気だしてるなぁ。


 ------◇◇◇------


 ――さてさて、人のことばかり構っていられない。

 せっかく持っている未来の知識を使って、面白おかしく暮らすためには、まず金だ。

 相場や株取引などを行うのは資産が必要らしいし、手っ取り早く合法に稼ぐ手段として、前から考えていた特許の取得計画を始動させることにした。

 競馬で稼いだ金じゃ、合法に大金を使えないのだ。


 何箇所か特許事務所を巡って、真面目に話を聞いてくれる場所を探す。

 なんか調子のいいこと言って金だけ取って――みたいな所もあるっぽい。

 俺が選んだのは、都内の某所にある小さな特許事務所。

 コンクリート製の四角いビルの2階にあった。

 建物の中に入って2階への階段を上がると、鉄製のドアがある。

 そいつを開けると、木の机が5つ、書類が沢山詰まったロッカーが壁に並ぶ。

 机が5つってことは、所長と従業員が合わせて5人ってことか。


 所長らしき人は、60近い短い白髪の爺さん。

 顔には深いシワが刻まれていて気難しそうである。


「お茶です」

「ありがとうございます」

 紺色の制服を着た女子がお茶を持ってきてくれた。


「お客さん、企業の人には見えませんが……」

「まぁ、発明王エジソンに憧れた、街の発明家気取りの男ですよ」

「あまりいい趣味とは言えねぇなぁ……」

 正直な爺さんだ。

 そんなことする暇があるなら、まともに働けと暗に否定しているのだろう。

 正直だが、客にそんなこと言うなんて商売下手だな。


 そんなことはどうでもいい。

 仕事をしてくれればいいのだ。

 特許の取り方について手続きの仕方などをレクチャーしてもらい、ついでに質問もする。


「1つ、お聞きしたいのですが、組み立て式の家具の特許とかもうとっくに取られてますかねぇ」

「ああ、その手の話はよくあるからねぇ。戦前のアメリカとかで特許が取られているよ」

 みんながよく考えることは、それだけ申請が多いってことなんだろう。

 こんな情報でも聞けるのはありがたい。

 カラーボックスがヒットしたのは、特許ではなくて、あのプラスチックみたいな派手な色使いってことだろうな。

 それが時代にマッチしたと。


 カラーボックスは駄目か。

 特許の申請は一件につき、手数料3万円らしい。

 結構料金が高いが、申請をする前に事務員が特許庁に行って、似たような特許が出てないか全部チェックするらしい。

 そりゃ、特許がすでに申請されているものを、出しても却下されるだけだし金の無駄。

 その手間がかかるので、料金が高いようだ。


 元の時代みたいにネットで確認ができたりすればいいのだが、この時代は全部アナログ。

 全部、その場所まで行って自分の目で確認しなくてはならない。

 もちろん、俺が特許庁まで行って自分で調べれば経費はかからないのだが、そんなことは面倒くさくてやってられん。

 金がかかっても人にやってもらったほうが得策だ。


 特許を取りたいものの絵などを書いて持ってくれば、清書して図面にも起こしてもらえるらしい。

 特許事務所もそれで食っているわけなので、まぁ金がかかるのは致し方ない。


「それじゃ、図面や試作品が完成したら、持ち込みますので、その際はよろしくお願いいたします」

「はい、よろしく~」

 結構アバウトである。

 まぁ、本来の顧客は企業などなのだからな。

 個人の客なんてのは趣味と変わらんのだし。


 とにもかくにも、俺の特許取得計画も始動したわけだ。

 ――とはいえ、未来に流行った画期的な特許を申請しても、企業が使ってくれるかが問題になるが――。


「開発した自社製品を売りに出すぞ!」

「特許を取りましょう!」

「社長! この特許は、篠原というやつにすでに取られてます」

「なんだと!」

 ――という感じになるわけよ。

 どうしても売りに出したい製品であれば、俺にロイヤリティを払うか、特許をまるごと買い取る。

 この二択になるだろう。


 ――と思うんだ。

 多分な。



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