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第四話

 最低限の指示を出した直後に闘技場の反対側の埋め込まれた檻の吊り下げ式の格子扉が職員の引っ張るロープによって開かれた!

ボロボロのサビと刃こぼれだらけのナイフで武装した腰みのを着けた4頭のゴブリン達はギャアギャアとわめきながら最初にマーガレットとツバキを見るがショートスピアを両手で構えてる姿を見て、方向転換をしてグラグの左手の大盾と右手の肩口に構えたバトルアックスを見てダンダとリオン兄弟に突進してゆく!

う〜ん強敵のリザードマンや戦意旺盛な2人に向かわず雑魚っぽい兄弟に向かうのは良いんだが、正面を横切ろうとするなんて動きの鈍いリザードマンとはいえグラグをナメすぎだろ?


 最初の接触はグラグの攻撃だった!自らの正面を横切ろうとするナメたゴブリン達の3頭目のゴブリンの頭蓋をバトルアックスの一撃で顎まで圧し割り殺害する!

そしてそれとほぼ同時に獣人特有の俊足を活かしてゴブリン達の後ろに回り込んだツバキのショートスピアが4頭目のゴブリンの胸部を背中から突き刺す!

その時、俺はというと何もしなかったわけではなく。

日本刀に付いていた剣帯で左腰に佩いている日本刀の鯉口を左手で切り左半身を後方に下げ、間合いを詰められた際に居合で迎撃出来る様にしつつ、右手の掌を先頭のゴブリンに向けて神力を込めた言葉を放つ!「闇の飛礫よ!」

その言葉を口にした瞬間ヴェスペラ様に包み込まれる様な感触を感じ、額の聖印がカッと熱を帯びるのと同時に、身体からエネルギーらしき物が搾り取られ、右手の掌に野球ボール程度の大きさの黒い闇の様なモヤが発生し、時速130km程度の速度で先頭のゴブリンの左胸部へと向かい飛んでゆく!


 だが自らに迫る闇の飛礫の気配を察知したのか先頭のゴブリンは身体を沈み込ませる様な動きをすると!?

ゲームのバグの様に2〜3倍程度の速さで前方へと突っ込む事で闇の飛礫が回避される!?

この世界の戦士達が魔法の代わりに使えるスキルの1つのステップだったか?と思ったのも束の間、闇の飛礫は右に曲がって2頭目のゴブリンに当たらないかな、と考えた俺の思いに応え、右に曲がり後ろを走っていたゴブリンの左胸部に命中、ゴブリンの左胸部を野球ボール大にへこませて転倒させる!手で頭をかばう事も出来ずに、頭に自らが持つナイフが突き刺さりながら倒れ伏しピクリとも動かない。まあ即死したのだろう。


 そう判断していると「ぎゃあ!」と右側から人間の悲鳴が上がる!?

視界の左端で傷だらけのダンダとリオンが仲の良い兄弟特有の息の合う連携で傷だらけのゴブリンと互角以上に戦っている状況を確認しつつ、悲鳴が上がった方向に顔を向けると、どこからともなく現れた2頭のゴブリンの内の1頭のゴブリンが咄嗟に振り向いたツバキの近くに居た、後ろを向いたままのマーガレットの背中の心臓の辺りをボロボロのナイフで刺していた!

この時、俺は実を言うと見捨てる事も検討していた…なぜならば俺が使える回復の奇跡は臓器の損傷、特に心臓や脳を治すのは不可能だからだ。

だがマーガレットの絶望に染められながらも助けを求める表情を見た瞬間、迷いに迷ってしまった…


 マーガレットを刺したゴブリンはトドメをさす事はなく、ツバキと対峙していたゴブリンへと加勢をしようと足を早める!

どうする!?背中を刺されて虫の息のマーガレットの回復か?それともツバキの援護か?

マーガレットの出血量は酷く1分後には死にそうだ。ツバキは2体1で不利な戦いを強いられている。

どちらを選ぶべきか?そもそもマーガレットを癒やしたとして助かるのか?傷は心臓にまで達しているんじゃないか?だが助かる可能性もあるんじゃないか?それにツバキなら2体1でもしばらくは問題ないんじゃないか?

この時、俺は愚かな事に正解を選ぼうと迷いに迷っていた。これは武道でいうところの居着くと言った状態であり最悪の判断であった。俺1人では無駄に犠牲を増やし最悪の場合全滅も有り得ただろう。

だが俺には状況を変える事が出来る優秀な仲間がいた!


 援護が無いせいで苦戦しているツバキを援護するために「グロオオォ!」と咆哮を上げながらリザードマンのグラグが大盾を突き出しながらボロボロのナイフを持つゴブリンに体当たりを行い弾き飛ばす!

「朝日!ゴブリンハ俺タチガ押エルカラ、マーガレットヲ治スンダ!」リザードマン特有の人間の声とは違う独特の抑揚の声を聞くのと同時に!

「回復!」と数mほどの距離がある、うつ伏せに倒れ伏し僅かに藻掻いているだけのマーガレットの身体に向けて神々しさを感じさせる光の球を手の平から発射させて背中側の心臓の辺りに当てて1秒ほどで治療する。


 そしてグラグの活躍により戦闘の流れが微かに俺たちに傾いたのか、ツバキと対峙していたゴブリンがマーガレットに目線を向けて、獣人であり2体1でようやく渡り合えるほどの圧倒的な身体能力を持つツバキから目を切ってしまい致命的な隙を晒す!当然の事ながら、その致命的な隙を見逃すツバキではなく一瞬で腹部の辺りに槍を突き刺し捻り致命傷を与え、グラグに吹き飛ばされ脳震盪を起こしたのかフラフラと千鳥足になっているゴブリンの腹を刺した直後に!?

「ぐああっ」と悲鳴が左から聞こえてくる!?


 目線を向けると、傷だらけのゴブリンにボロボロのナイフで腹部を刺されて出血しており蹲っているリオンと、今手首を斬られて多量の出血をしているダンダがいた。

だが時は既に遅し、俺はダンダとリオンを治しグラグが突っ込み避けた隙を突きツバキが腹部を刺した。


 さてと、トドメを待つのは3体か…

だが使用出来る奇跡の数は今は1日に8回まで、ゴブリンに1回、回復に3回使った。そして自らが何らかの方法で止めをさした者の肉体の一部をヴェスペラ様に捧げる事によって何らかの恩恵を得られる供物の奇跡を使う事を考えると1度も無駄には出来ない。

つまりは自分の手で止めをささなくてはならない…

イヤだなぁ…奇跡を使って止めをさすのと、自らの手で直接止めをさすのとでは難易度が違う気がする。

いや実際に違うのだろう、止めをさした瞬間の感触が手に残るだろうし、何よりも今まではゴブリン達は強敵であった、躊躇していたらコチラが死んでいただろう。

だが今は、無抵抗であり死にゆくだけの者達だ…

でもツバキは協力してくれたしな危険が伴う内容の協力を仰いでおいて、やっぱ止めた。は無しか…

そう思いながら皆が見守る中、重い足取りでゴブリンに近づき。出血をし過ぎて腹の出血が無くなり息も絶え絶えになっているゴブリンを見る。回復を使えば助かるよな。そう思いはするが感謝はしないだろうし襲いかかってくるだけだろう、それにそんな事をすれば辛うじて築く事が出来た仲間との信頼も一気に瓦解するだろう。

仕方ない…このまま苦しむのも哀れではあるし、俺の利益にも反する、覚悟を決めて右手で日本刀を抜き心臓に体重をかけて突き刺した…


 そうして3体のゴブリンを全て始末した後…

与えられた1室、入口は鉄格子ではあるが。

その片隅にヴェスペラ様に供物を捧げるための簡易祭壇、聖印が刻んであるだけの奥行30cm横50cmのテーブルの様な物を作り、そこに仕留めた傷だらけのゴブリンの頸を捧げ供物の奇跡を使うと…

「我が信徒、夕凪朝日よ。何故ゴブリン達を纏めて捧げないのか?」「ええと、それはつまり、少々お待ち下さい」残り3体の頸を祭壇に捧げ…

「では改めて、我が信徒夕凪朝日よ、願いは自己の強化で間違いないな?」また心を読まれたんか?まあ、もう、いいか、我慢しよう…「はい、最優先で新しい奇跡を使える様になりたいです。あとはついでに回数を増やすのと、身体能力も高めたいです」筋トレしろって言われそうだが年齢も年齢だし激しい筋トレは身体を壊しそうなんだよな、それに栄養状態が悪ければ逆効果になるだろうし。

「良かろう、身体能力は平均で1%ほどパワーアップしておいたぞ、次に奇跡の使用回数は1回増やしておいた。そして新しい奇跡だがポイントで言えば残り4ポイントだ、レベル1の奇跡は1ポイント、レベル2の奇跡は2ポイント消費する、目録から自由に選ぶがいい。ああもちろん身体能力や奇跡の使用回数に振り分けてもいい」使用回数はともかく、身体能力はたった1%かよシケてんな!などとは一切口にする事はなく。

虚空に浮かんでいる様に見える羊皮紙風ステータス欄から良さそうな奇跡を探す事にした…

レベル1の奇跡は光と闇、両方とも10個づつ。

レベル2の奇跡は光と闇、両方とも10個づつ。

そして大量の空欄か…いや、それは当面は関係ない、切り替えよう。

覚えれる奇跡は、どの奇跡も役に立つし何れはレベル3以降も全て覚えたいのだが、取り急ぎ覚えたいのは…飲料水や食物を浄化出来るレベル1の光の奇跡の浄化と軽い毒消しだろう。客観的に考えてこの世界の衛生環境が日本より良いとは思えんし、この2つが使えれば少なくとも食中毒の類で死ぬ可能性は減らせるはずだ。

次に他の奇跡だが、やはりバランスを取るために闇の奇跡も覚えるべきだろう。だがレベル1と2のどちらを覚えるべきか…


 羊皮紙を見つめながらのしばしの黙考の後に決断を下す。やはりレベル2の闇の奇跡だろうな、レベル3の奇跡に何が有るのかを見たくはある、やる気やテンションも上がるしな。

そうして俺はレベル2の闇の奇跡のインプの召喚とレベル1の光の奇跡の浄化と軽い毒消しを覚える事に成功した。レベル3の闇の奇跡は閲覧可能になったが、残念な事に光の奇跡は閲覧不能のままだった。


 新しい奇跡を覚えた後…

いつの間にか食事の準備が整っていたので、食事を開始する。

まあアレだ予想未満の献立であった。

黒い石ころの様な見た目のパンに、何やら変な濁りがあり白い脂の様な物が浮いているスープに、ゴブリンの様な臭いがする塩のみで炒めた細切れ肉…

料理を担当したダンダとリオンとマーガレットに聞いたら、やはりゴブリン肉らしい、味?味の感想をいうと。

黒いパンは恐ろしく硬く歯がかけそうであり、ジャリジャリと砂を噛む感触もあった。こんなのを常食していたら歯がすり減りそうで恐怖を感じてしまう…

スープは見た目ほど不味くはなかった、生臭さと泥臭さのハーモニーが酷かったが…

肉は実は一番ましで、硬めで筋張っていて臭みがあり旨味もないしクソ不味いと断言出来るのだが、細切れ肉のおかげで喉の奥に流し込めれたからだ。


 そうして拷問の様な食事を終えた後…

「さてと次の3日後の戦いの前に、今日の内に反省会の必要はあるよな?」ここで一旦は言葉を止めて全員の様子を伺うと全員が頷いていたので話しを続ける事にした。

「ええと先ずは、俺自身の指揮能力不足と判断能力の低さだな、特に判断能力はマーガレットの治療を優先するかツバキの援護を優先するかで迷った事は致命的だな…

次にツバキとグラグは特にないかな?強いて言うならツバキは少し攻撃に偏ってたな?嗅覚が鋭い犬型の獣人なんだからゴブリンの奇襲に気づいて欲しかったな。

最後にダンダとリオンとマーガレットだが…正直擁護点が見当たらないな?特にダンダとリオンは2体1でゴブリンに負けてたしな?闘技場で多少なりとも自主トレは出来るらしいし頑張るしかないな?あとマーガレットとリオンは胴体を刺されるのは止めてくれ助けられないからだ」

まあヴェスペラ様の神官になれなかったら、俺は3人未満の無能だったんだがな。

その他諸々細かい話しを終えて、今日は睡眠を取ることにした。男女共に同室で雑魚寝で…女性陣は嫌がっていたが仕方ないね…

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