第二十一話
というわけでエルザ・フォスター・フォン=リビタとセックスをしたのだが。
とても癪なことにマーガレットよりも明らかに気持ち良かった…
ただ1つだけ問題点を上げるならエルザもとても気持ち良かったのか、村中に鳴り響きアーガイル・コードエル軍までハッキリと聞こえるほどの嬌声を上げた事だろう…
おかげでだ…
「ねえ朝日、私は浮気はある程度はしょうがないと思っているのよ?あなたは強欲と狂気を司るヴェスペラ教の神官で、しかも大司祭だものね。
でもね!村中に聞こえる様な嬌声を上げさせる事はないでしょう!もう少しこっそりシなさいよ!」
とマーガレットが仁王立ちで喚いている…
何故、浮気したことは責めない?俺なら別れるぞ?
とエルザと共に正座をしながらも考えてると神の助言の奇跡が勝手に作動する!?
『浮気をしても怒りはするが別れようとしないのには理由がある。
その理由はプライバシーの保護の観点から、教える事はせぬがな。
どうしても知りたいのであれば本人に聞くが良い。しぶしぶではあるが教えてくれるハズだ』
この感じは、まあ今の時点では知る必要は無さそうだな。ならば無理に聞き出す必要もあるまい。ならばとマーガレットに返事を返す。
「以後気をつけます…」
そうして説教が終わり、エルザと睦み合った場所、民家から出ると…
「ヒソヒソ…」「朝日殿ってスゴいんだな…」「エロ坊主…」「さすがヴェスペラの神官だ…」
といった感じのヒソヒソ話と好奇の視線が出迎えたのであった…
気を取り直して、略奪の進捗状況を確認するべく村内をブラブラとうろついていると…
村の一角が何やら騒がしい事に気づく。
またトラブルかね?やだなぁ対処したくない…
対処したくなくとも対処せざるを得ないので騒動の元へと足を向かわせると…
「モオォー!」と鳴きながら足を突っ張り抵抗を試みている牛と、無理矢理鼻輪を引っ張り少しづつ歩ませている奴隷兵に、その周囲には牛を持っていかれないように抵抗する村人達と抵抗を押さえつけようとする奴隷兵達がいた…
さて俺はどちらの味方になるべきか…
心情的には村人達だが、実利的には兵士達であるのだ残念な事に…
そうして悩みながらも仲裁に入ろうとした矢先、兵士の1人が槍の切先を村人達に向ける!?
これはマズイ!放置していると死人が出るぞ!と判断したため、不用意にも不用意な事に割って入る事にした!
だが、割って入った直後に左の脇腹の辺りから肉を割くような、くぐもった音が聞こえて、その直後に鋭い痛みが左の脇腹に走る!?
「ごはぁ!?」と肺から空気が漏れ出て全身から力が抜け落ち地面に膝をつく…
光の奇跡を使い回復する前に傷の具合を確認するために左の脇腹に目を向けると、肋骨の一番下の骨にかするように槍が刺さっていた。
刺さった槍の柄の質感と痛みが走っている箇所から判断するに、傷は内臓に達しているな…
ああ、クソ、痛みが酷い、呼吸のたびに激痛が走りやがる…早く奇跡を使わねば。
痛みに耐えながらも強力な回復を使い傷を癒やし、槍が脇腹から排出されるまでの間に、下手人と思わしき槍の石突の先に居る人物に目を向けると、呆然自失といった表情でガタガタと手を震わせていた。
これは流石にわざとではないな。
「気にするな、迂闊な事をした拙僧も悪い」
薄汚い奴隷兵の泣きそうな顔は見れたものではなかった…
その後の仲裁はとても面倒臭く、全ての家畜を略奪したい奴隷兵達と1頭も渡したくないコロ村の住人達との本来なら成立するはずもない交渉を取りまとめねばならないのであった…
「では拙僧達が持って行く家畜は牡牛が1頭に、鶏の牝が2羽に牡が1羽で、双方よろしいな?」
「わかっただ…」「仕方ないわね…」とお互いに不満たらたらといった感じではあるが、何とか話を取りまとめる事が出来たのであった。
ちなみに鶏はともかく、牛は換金性が高く牛乳も取れる牝牛ではなく牡牛になった理由は、牝牛が妊娠しているため、渡河は無理と判断したからであった。
そうして、しばしの時が過ぎアーガイル・コードエル軍の本隊がコロ村の付近に到着して、しばしの時が経過して…
ハンス・フォン=ユーラスがやって来る。
「引き渡しの準備は整っているようであるな」
「ええ、まあ、それで細かい打ち合わせですが、先ずはカレンヴィラ・フォン=イコス殿の身柄は、そちらに引き渡すという事でよろしいか?」
「ああ、それでよろしい」
「では次に、拙僧にかんしては…」
「それも後方に配置しよう、護衛は3人までだ」
この言葉を受けて選んだ人員は…マーガレットは当然として、残りはツバキとグラグであった。
理由としてはグラグは前線に出たら死にかねないし、男尊女卑的考えかもしれんがツバキは女だ。ダンダとリオンはスマンな…
「では最後に伝えるべき事を伝えまする。
ペリノア男爵はボル砦を陥落させるための作戦として5日後までに、丸太を200本ほど切り倒しコロンボ川の川べりに並べるように命令をしていたので、高確率で明後日にコロンボ川が氾濫すると考えておられる様子ですな。
また軍議の内容から判断するに、撤退しない場合は渡河の最中に迎撃してくると思われます」
まあペリノア男爵に責任を押し付ける形の、玉虫色の忠告である。
そりゃあそうだろう?何せ俺は新参者の裏切者なのだから、下手なぞ打てん。
それにだ戦場というものは、元の世界の偉人のクラウゼヴィッツによると常に霧に満ちているらしいぞ?
もちろん気象現象の霧ではなく比喩表現であり、実際には不確定要素の事を指しているのだが、1m先すら分からないような濃霧の中で正確な情報を把握する事は不可能に近いのは言うまでもないだろう。
ゆえに、このような歯の間に物が挟まったような言い方になるのであった。
そして、その事を後悔するまで数時間…




