クラスメイト
「あのさ、やっぱりうちのクラスおもしろすぎるわ」
「その面白いクラスの話を昨日してくれなかった奴は誰かな?」
その言葉に巧は例のごとくとぼけた顔をして乗り切ろうとした。
「あっ、電車来たみたいだよ」
さらに電車が来たと話題を変え、乗り切ろうとした。
「……で、どんなクラスだったんだ?」
乗り切れなかったようだ。しかし、二人は電車に乗った。
「まずはクラスの人数だけど、多分大河のとこと同じく三十人」
巧は昨日からの大河の圧に負けて、ついに自身のクラスのことについて活き活きと話し始めた。
「そのうち男子五人、女子五人、菊池五人、佐藤五人、田中五人、その他十人、先生誤認逮捕かな」
「情報量が多すぎて全然話が入ってこないんだが……ゆっくり確認していいか?」
「もちろんいいぞ」
クラスについて話したくなさそうだった巧は話始めた途端に元気になり、逆に話を聞きたかった大河の方が頭を抱え始めるという、最初とはだんだんと立場が逆転し始めるのであった。
「まず男子が五人」
「そうだね、この五人は普通の高校生って感じかな、名前、趣味、見た目、全てがそこらへんにいそうな高校生だった。ちなみにそれぞれがラグビー、セパタクロー、ヨット、モルック、しょうぶ、をやってるらしい」
「どこが普通なんだよ、ゴリゴリの体育会系じゃねーか。というか途中からおかしかったぞ、一歩譲ってモルックまでは許そう」
「モルックは大丈夫なのね」
「しょうぶって何? あの勝ちと負けと書いて勝負という、あの勝負か?」
「その勝負だな、道行く人に勝負を挑んでいるらしい」
「迷惑すぎるし、全然普通じゃない」
「ちなみに勝率は五割五分三厘らしい」
「微妙な数字」
「続いて女子五人だけど」
大河にとって男子五人のインパクトがまだ残っている中、次の女子五人に話は移り始めた。
「全員髪がいろんな色をしていて、それぞれ、赤、青、黄色、ピンク、緑だったかな」
「派手だなぁ、それ学校から注意されないのか?」
「あぁ、そこは大丈夫、ウィッグだから」
「ウィッグはウィッグでダメだろ」
「校長がかつらなんだから、認めてくださいってお願いしたら、大丈夫になったらしい」
「校長可哀想すぎるな」
「ちなみに全員軽音部には入ってないけど、バンドやってるらしくて、今度五人でライブやるから来てくれって」
「だいたいアニメだったらバンドメンバーバラバラのクラスだけど、現実は固まっちゃったのか……」
大河が巧のクラスの情報量の多さに頭がくらくらしてきたが、それに対して巧は意気揚々と話を続ける。
「次の菊池五人は五つ子で全員女子、佐藤五人は五つ子で全員男子、田中五人は義理の兄弟で長男以外は全員女子だ」
「もうアニメの世界。しかも五つ子が同じクラスになるのは結構話が進んでからだろ。最初から同じクラスはペースが速すぎる」
「さっきから軽音といい、五つ子といい、ツッコミがアニメ関連ばっかだぞ。もっとバリエーションのあるツッコミをしてくれないかなぁ」
「いやいやいや、目の前の出来事がアニメの中の出来事杉すぎて、そう言わざるを得ないんだ」
「俺はそれほど驚かなかったけどな」
首をかしげながら、飄々と驚かなかった宣言をした巧に対して、大河は心の中で『そんなわけあるかよ』と疑念の念を持っていたが、ここで言葉を返すと話が停滞しそうな雰囲気があったため、ぐっと言葉を出すことをこらえるのであった。
「そして、その他十人がその名の通りその他、簡単に言ってしまえばまだ特徴がつかめてない感じかな。あと、先生誤認逮捕は警察官の奥さんにセクハラして手錠をかけられたらしい」
「その他は置いておいて、そんな先生で大丈夫かよ……」
「大丈夫でしょ、そのあとすぐに手錠をしたまま奥さんと仲直りしたらしいからね」
それは一種のプレイなのでは……
さすがの大河もこのことは口には出さずに心の中にとどめておくのであった。
「あっ、そうそう。もうそろそろ電車が着くからネタバラシしとくね」
この言葉を聞いて大河は少し安心する。やっぱりこの話は巧の作り話なのだと。
「この話全部ホントだから」
このネタバラシのすぐ後に電車は駅に到着し、電車の扉が開く。早々と電車から降りていく巧に対して、大河は一瞬の間固まってしまっていた。
「いや、ホントなのかい!」
この叫びと共に大河は巧を追いかけるのであった。




