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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 芦谷先生と緑が男子生徒を捕まえると、学が人を呼びに行き、要は瑛子のそばへ駆け寄った。


「瑛子、大丈夫だったか?」


 要ら瑛子を背後にまわし、男子生徒の視界から隠す。男子学生は


「お前から呼び出したくせに、センコー呼ぶなんてマジありえねぇんだけど」


 と、捕まってなお瑛子に対して悪態をついていた。芦屋先生が


「とりあえず、話は職員室で聞こう」


 と、芦谷先生は男子生徒をを職員室へ連れて行き、瑛子と神成緑と催馬楽学、栗花落先輩はその間、応接室で待たされることになった。しばらくすると芦谷先生がやってきて


「相手の言い分を話す前に、まずお前たちから事情の説明を聞きたい」


 と言った。瑛子たちは靴に入っていた手紙を渡し、朝からの一連の流れを説明した。芦谷先生は口を挟まず、最初から最後まで黙って話を聞くと


「正直、朝の時点で私に話して欲しかったが。確かに話を聞いていたらこんなことは絶対にさせなかっただろう」


 と眉間を揉みながら言った。瑛子は芦谷先生にも迷惑かけてるなぁ、と思い


「すみませんでした」


 と謝る。芦谷先生は


「今回は何事もなかったから良かったものの、もう無茶をするな」


 と瑛子に言った後、神成緑や催馬楽学、栗花落先輩の顔を見回して


「お前たちもだ、とにかく隠されると対応ができない」


 と言って、ため息をつくと男子生徒から聞いた話をし始めた。


「彼らの話をまとめると、櫤山(たもやま)から呼び出しの手紙をもらったそうだ」


 その話しに一同唖然とし、神成緑がまず口を開く


「瑛子がそんなことするわけがない。そもそもそんな暇すらないはずだ」


 と言った。確かに学校内では一人でいることはないので、そんなことをすれば誰かが気づくだろう。芦谷先生は手をあげて、神成緑の発言を制すると


「それはわかっている。だが、実際に相手は櫤山からの手紙を持っていた。と言っても印刷されたもので、直筆ではないから偽造だろう。手紙の内容も、とてもここで話せるような内容ではないものだった。あんな内容の手紙を、櫤山が書けるわけがない」


 そう言って、芦谷先生はため息をついた。栗花落先輩が


「先生、それだと、普通の女生徒が書けるような内容の手紙ではないと言うことですよね? なぜ男子生徒は、その手紙を信じたんでしょう?」


 と質問すると、芦谷先生は少し考えたあと


「櫤山、私はお前を信じている。ここにいる全員がお前を信じている。だから、他で何を言われても、お前が恥じることは何一つない。それを理解した上で聞いて欲しい」


 と瑛子に向かって言った。瑛子は不安に襲われる。芦谷先生は、なにを言おうとしているのだろう。色々考えるが思い浮かばない。逆に瑛子は、ここ一ヶ月は平和に過ごせていると思っていた。

 瑛子は意を決して芦谷先生に訊く


「彼らはなんと言っているのでしょう?」


 芦谷先生は苦い顔をして


「三年生の間で、お前が誰とでもその、そういうことをする女生徒で、昼休みは数人で空き教室でそういった行為に及んでいて、誘えば誰にでもついてくる、と言う噂が流れているそうだ」


 瑛子は愕然とした、ご飯を食べているだけなのにそんな噂をたてられるなんて、と。そこで神成緑が


「悪質ですね。でも俺たちと同学年の一年生と、栗花落先輩の同学年の二年生は、仲間内でそんなこと絶対にないってのは、周知の事実なんで、わざとなにも知らない三年生に噂を流したんじゃないでしょうか?」


 と疑問をぶつけた。確かにその通りだった。たまにプリントを撒き散らした女生徒のような嫌がらせをする生徒もいたが、それは少数でほとんどのクラスメイトととの関係は良好だ。いつも昼食を食べるこの四人とだけ仲良くしているわけではない。芦谷先生も頷き


「そうなのだろうと思う。これからその噂の発生源と、男子生徒と櫤山の双方に手紙を書いた人物を探そうと思っている。それと、櫤山」


 思わず瑛子はビクッとしてしまった。それを隠すように、オーバーに体の向きを変えて芦谷先生の方を向くと


「なんでしょうか?」


 と、冷静に返事をする。芦谷先生は少し躊躇い


「君に危害を加えようとした男子生徒が、謝りたいと言っているが、会うか?」


 と訊いてきた。瑛子はとてもではないが会う気になれず


「すみません。無理なのでお断りしてください」


 と即答した。催馬楽学が


「櫤山さん……大丈夫?」


 と、憐れみの顔を向けたので


「大丈夫です。会わなければ平気ですから」


 と笑顔で答えた。栗花落先輩が首を振り


「なにを言ってるんだ、大丈夫なわけないよ。櫤山さんが強がりなのは知ってるつもりだよ」


 次いで神成緑が


「瑛子、俺たちは瑛子に辛いときは辛いって言って欲しい」


 と瑛子を見つめる。瑛子はついに我慢できずにポロポロと泣きながら言った。


「みんな、なんでこんなに優しいんですか?」


 すると、芦谷先生が


「それはお前が『櫤山瑛子』だからだ。みんなが君自身の優しさや強さを知っているからな」


 と言って微笑み、瑛子の頭を撫でた。横に座っていた催馬楽学は背中をさすった。瑛子は余計に涙が止まらなくなり


「ありがとう」


 と、心の底からお礼を言った。瑛子が泣き止むまでみんなじっと待ってくれた。

 しばらくして芦谷先生が


「この件は、かなり陰湿なやり方だ。学校側もこのまま有耶無耶にするつもりはない。本腰を入れて調べることになった」


 と言った。瑛子は


「大事になってしまってすみません」


 と謝ったが、芦谷先生は


「お前が謝ることではないから、気にするな」


 と言ってくれた。催馬楽学が


「噂話は実態がないし、誰が最初に言い出したのかは、容易に調べられることではないかもしれませんね」


 と懸念を口にした。神成緑が


「瑛子を誘きだした手紙の方は、手紙そのものが証拠となるから、ここから犯人が見つかるかもしれないけど、それもどうかな。学校で調べると言っても限界があるんじゃないですか?」


 と、芦谷先生に言う。芦谷先生もそれは感じていたらしく


「そうだな、結局のところ櫤山自身に警戒してもらうしかないのかもしれない」


 と言った。神成緑が


「瑛子、これからは家の前まで送り迎えするよ」


 と提案した。瑛子は驚き、流石にそこまでする必要はないと思ったので


「神成君、ありがとう。気持ちだけで十分です。遅くなりそうな時は、家族に送ってもらうようにすれば大丈夫だと思うし」


 と、断った。が、催馬楽学が


「いや、今回の事は犯罪ギリギリだと思うんだ、もう少し警戒した方がいい。神成が無理な日は、僕も送り迎えすることは可能だし、なんなら交替で送迎をしてもいいと思ってる」


 と言った。そこに栗花落先輩が


「そう言うことなら、僕も手助けできそうだ。と言うか、送り迎えしたいよ。そもそも神成君が一人でやること自体がおかしいよ」


 と二人の会話に割って入った。神成緑は不満そうに


「二人は、俺が送り迎えできない時だけ手伝ってくれればいいんだけど。それに催馬楽は同じクラスで、瑛子といる時間は長いだろ? 少しは遠慮しろよ」


 と言うと、栗花落先輩が


「じゃあ、僕と神成君で交替で送り迎えすればいいんじゃないかな?」


 と微笑んだ。催馬楽学は


「クラスで一緒にいるのと、通学で二人きりで一緒にいるのを同じにしないでもらいたいんだが」


 と不満を口にした。神成緑が


「なにを言ってるんだ、同じクラスってだけで、催馬楽の方が有利なことが多いのも確かだろう?」


 と言えば、今度は栗花落先輩が


「僕は、学年もクラスも違うんだけど……」


 と口を挟んだ。すると催馬楽学が


「先輩はいいですよね、自分のジャージ着せることができたし」


 と言い、次いで神成緑が


「そのお礼に手紙もらったり……」


 と、なぜか変な言い争いに発展してしまっていた。瑛子は、誰かを守る、守りたいと言う男性の本能って凄いなぁ、と思ったが、実はみんなが瑛子を励まそうとして、こんなことを言ってくれているのでは? と、思い至り心底感謝した。


「ありがとうございます。わかりました、私はみんなが納得できる方法でいいと思います。なのでお任せします。宜しくお願いします」


 とだけ言った。そこに芦谷先生が


「学校の行事で遅くなることがあれば、私が送ろう。君たちは学生だ。あまりにも遅くなるのは問題だろう」


 と言った。瑛子が


「みんながそうやって励ましてくれるから、嫌なこと忘れられそうです」


 とお礼を言うと、その場にいた全員が苦笑いをした。


 結局、交替で送り迎えをしてもらうことになった。

 この四人のお陰で、瑛子は危険な立場に立たされていたにもかかわらず、不安を感じることなく過ごすことができた。


 その後、数週間が過ぎたが、手紙を書いた犯人はわからなかった。


 そんなある日、父の(まさる)


「いつもみんなにお世話になっているから、夕食に呼んだらどうだ?」


 と提案した。どうせ呼ぶなら瑛子の手作りの夕食をご馳走しようと言うことになり、学校でのいつもの昼食の席で


「今度みんなを我が家に招待したいんだけど。たいしたものは出せないけど」


 と瑛子が言うと、全員が二つ返事で了承した。


誤字脱字報告ありがとうございます。


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