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5 待ち伏せ

文章稚拙なんで、ちょいちょい改稿します。

 自宅前まで芦谷先生に送ってもらい、お礼を言って車を降りると車が去っていくまで玄関で見送った。


 それから家に入ると、家族に帰ったことを大声で知らせすぐにシャワーを浴びた。


 シャワーから出たところで夕食の準備ができていると、父親に声をかけられ食卓に呼ばれ席につく。


 席に着いた瑛子を見て、父の(まさる)が開口一番に言った。


「お父さん、明日の朝ごはん早めにお願い」


 それは家を早めに出るためだった。


 なぜ早めに出るかというと、早めに出れば緑と鉢合わせにならないと思ったからだった。


 向こうも朝が早ければ会ってしまう可能性もあったが、とても早くでれば問題ないだろうと考えた。


 すると瑛子の母である冴子さえこが言った。


「パパ、私も明日は早めにお願い。明日は早朝会議があるのよ」


「なんだ、我が家の女性陣はみんな忙しいな。そんなことはかまわないが、そうそう瑛子。明日は弁当がいるか? いるならママの分と一緒に作るから、自分の弁当箱を台所に出しておきなさい」


「は~い」


 瑛子は勝にそう返事をすると、緑が昼休みに会えると言っていたのを思いだし、通学で避けることができてもお昼に接触してこないか少し不安になった。


 翌朝、勝に弁当を渡され想定よりも一時間は早い時間に家を出た。


 早く着けば予習もできる。どうせ家では絶対勉強しないので、いい機会だと割りきりながら駅まで歩いた。


 改札をくぐり、ホームに出ると向こう側の花壇に花が咲いているのが見えた。それを見ながらもう春だというのに、まだ朝は冷える。


 そんなことをぼんやり考えながら花を見つめていた。


「おはよう、君のことだからこんなことじゃないかと思った」


 まさかと思いながらゆっくり振り返ると、そこには緑が立っていて、瑛子は驚いて緑の顔を凝視した。


 そんな瑛子に説明するように緑は言った。


「君が早く家を出るのでは? と思っていたから、待っていたんだ。まぁ、待ってて良かったよ」


 そう言って爽やかに微笑むと、申し訳なさそうにした。


「それにしても驚かせてごめん。でも君と話がしたくて。なんとなく君が避けてるのはわかったし、強引だったことも認める。だけど、もう少し俺のことを知ってから避けてくれてもいいと思うんだ」


 確かにそれもそうかもしれない。それでも強引過ぎることは否定できないが、これから先ずっと避け続けることはできないだろう。


 そう考え、妥協案をだすことにした。


「では、お願いがあるんです」


 神成緑は頷く。


「内容にもよるけど」


「一緒に通学するのはかまいません。でも学校で神成君と親しくしていると、神成君は人気者なので、私の学生生活に色々と支障がでかねません。なので、校外でだけ仲良くさせていただきたいです」


 特に栞奈、彼女からの風当たりが強いだろう。昨日の様子を見ていれば、そんなことは容易に想像できることだった。


 それに、今はモブの瑛子と一緒にいたいと思っているかもしれないが、これから栞奈との接点ができ、彼女と仲良くなったら緑は瑛子と一緒にいる機会が減るだろう。


 そうなった時に、瑛子が緑にフラれたとかケンカしたのでは? などと、周囲からひそひそされるのも避けたかった。


 緑はよくも悪くも目立つのだ。


 緑はしばらく考えてから頷く。


「わかった、もしも俺と君の仲をやっかむ奴がいたら、そいつらから君を守れば問題ないよね」


 瑛子は苦笑する。


 そういうことではないと思いながら、学校内では関わりをもたないようにして欲しい、とハッキリ言おうとしたところで、電車がきてしまった。


 そこで話を中断し、電車に乗り込む。


 車内が混雑しているので、かなり緑と密着することになってしまった。


「瑛子、危ないから俺につかまっていいよ」


 緑にそう言われ、最初は遠慮していたがそうすると逆に支えがなく、電車が動く度に緑に身体が押し付けられてしまうため、諦めて緑のシャツを掴むと呟く。


「よろしくお願いします」


「うん、不本意そうだね。次の駅までの我慢、我慢」


 そう言って微笑んだ。


 緑と、距離を取ろうと思っているのにどうしてこうなるのかと思いながら、数分間身体を緑に預ける形になった。


 星春(ほしばる)駅に着くと、ホームに出て足早に改札に向かいながら瑛子は緑に謝る。


「電車の中では本当にごめんなさい、失礼しました」


「なんで? そんなことないよ」


 緑はそれだけ言うと恥ずかしそうに目を逸らした。


 瑛子の知る緑は、お世辞をさらりと言う人間だったはずだ。なので、こんな反応をされ少し戸惑ったが、口ではなんと言おうとどんな反応をしてようと本心はわからない。


 そんなことを考えながら一緒に改札を出てしばらく歩いた。


 そこで緑が突然立ち止まると言った。


「スマホ、今なら持ってるよね」


 瑛子は断りきれずに、とうとうその場で連絡先の交換をすることになった。


「今朝、君を捕まえるの大変だったけど、これで明日からは大丈夫だね」


 緑はそう言って微笑んだ。


 瑛子はなんの約束もなく待たれるよりはましだと自分に言い聞かせながら高校へ向かった。


 校門の手前で瑛子は立ち止まる。これ以上緑と一緒にいれば、他の生徒に見られてしまう。


「神成君、ここから別行動にしましょう」


 すると、緑は優しく微笑んだ。


「いや、俺、瑛子のこと守るって言ったよね。それは嫉妬とかそういうことも含めてだよ。だから、君はなにも心配しなくて大丈夫。行こう」


 そう言って、瑛子の手を取って歩き出した。きっとなにを言っても無駄なのだろう、瑛子は諦め開き直ることにした。


「わかりました。そのかわり本当にしっかり守ってください」


 そう言って微笑み緑の隣に並んで歩き始めると、緑は瑛子がそんな反応を返すと思わなかったのか、戸惑った様子を見せた。


「え? あ、うん」


 緑はそんな変な返事を返すと、照れくさそうに歩き始めた。


 案の定、登校中の女生徒たちが騒ぎだしたが瑛子は堂々としていた。下駄箱で上履きに履き替え、廊下を歩きだしたところで緑が瑛子に質問した。


「ところで瑛子はなんで敬語なの?」


 これは、敬語だと自然と距離がとれるしボロも出にくいのを利用した、前世からの瑛子の自己防衛だった。


 うまく説明できないので、適当に答える。


「前からなので、敬語の方が話しやすいんです」


「ふーん。てっきり、他人と距離をとるためなんだと思ってた」


 瑛子は緑の優男は見せかけで、結構本質を見抜いているのではないかと思い、緑には気をつけようと少し警戒した。


 それを顔に出さないように答える。


「他人行儀に聞こえますか? 気を付けますね」


 そう言って笑顔を返した。教室の前に着くとお礼をして緑と別れ、教室に入ると自分の席に着いた。


 せっかく早く着いたので予習をしておこうと、教科書を取り出す。


「おはよう」


 声をかけられ、見ると学だった。瑛子も笑顔で挨拶を返した。


 すると、怪訝な顔で学は瑛子に質問した。


「昨日は帰るのが遅かったのか?」


 瑛子は頷くと答える。


「先生に質問してたら、遅くなっちゃったんです」


「勉強することも大切かもしれないけれど、遅くなると危ないから気を付けないと」


 心配性すぎて瑛子は内心苦笑しながら、それでも心配してくれることはありがたいことだと思いながら頭を下げた。


「気にかけてくれて、ありがとうございます」


 その後、予習をしていると学は邪魔しないようにするためか、ほとんど話しかけてくることはなく、しばらく静かに予習をすることができた。


 そのうち他の生徒もちらほら登校し始め、始業のチャイムが鳴ると授業が始まった。


 授業内容は、初日だと言うこともあり、各教科の先生に自己紹介をさせられ、本格的な授業といった感じではなく、あっという間にお昼になった。


 昼休みになり、勝特製弁当を取り出し机の上に広げていると、教室の入り口が騒がしくなった。


 そちらを見ると緑が立っており、瑛子と目が合うと微笑んだ。


「瑛子、昼飯行こう」


 瑛子は一瞬どうするか悩んだあと、ここで拒絶して騒ぎになるより素直に一緒に食べた方が騒ぎにならずいいだろうと考え頷く。


 そこへ学が割って入る。


「僕も一緒にいいだろうか?」


 瑛子は別にかまわなかったが、神成緑に一応確認を取る。


「別にかまわないよ」


 二人がもめなくてよかったと、瑛子は内心胸を撫で下ろす。


 その時、視線を感じそちらを見ると栞奈がこちらをすごい形相で睨んでいた。


 瑛子は気を使って栞奈にも声をかけることにした。


「ご飯食べるなら大勢が良いよね。丹家(たんげ)さんもどお?」


 すると、栞菜は嬉しそうに答える。


「えっ? いいんですか? でも~なんか悪い気がしますぅ」


 だが、学が間髪入れずに言った。


「そうだな、君は遠慮してほしい」


 そして、瑛子の方を見て微笑む。


「さあ、行こう」


 ヒロインは緑の方を見て、助けを求めるような顔をした。だが、緑は困ったような顔をしてこう言った。


「悪いけど、そう言うことだから」


 瑛子は、二人ともなんでこんなにヒロインに冷たいんだろう? と、思いつつ教室を後にした。


「瑛子は目立つの嫌なんだよね? 静かな場所を知ってるから、そこに行こう」


 そう言うと、緑は先を歩き始めた。瑛子と学がそんな緑の後ろを追っていくと、ある教室の前で立ち止まった。


 その教室は使用していない机や物が置いてある教室で、倉庫のような場所だったが、ご飯を食べるスペースは十分にあった。


 緑はこちらを向いて説明する。


「代表者挨拶を考える時に、このスペースを提供されたんだけど、勉強する時にも使っていいって許可はあるから大丈夫」


 流石、頭が良いと先生からの信頼もあるよね。そう思いながら思いながら教室へ入ると席に座った。

誤字脱字報告ありがとうございます。


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